研究課題/領域番号 |
21K03649
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
千秋 博紀 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 主席研究員 (30359202)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 小惑星 / 熱貧家 / 数値計算 / 小惑星探査 / 熱赤外観測 / 熱進化 |
研究開始時の研究の概要 |
小惑星表面の形状を考慮した熱進化モデルの再検討とその結果のデータベース化を行う。この結果は「はやぶさ2」のデータ解釈はもちろん、日本や諸外国が現在検討している小惑星の探査計画やそのデータ解釈に応用可能である。また、本研究によって構築されたモデルを、サイズや太陽からの距離が異なる様々な小惑星に応用し、網羅的なデータベースを構築する。その結果、天体観測で求められた小惑星の形状・サイズの見直し、小惑星の軌道進化の見積もりなど幅広い科学的応用や、軌道進化モデルを通じたスペースガードへの応用も期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究は小惑星の熱進化を,数値シミュレーションによって求め,天体観測や惑星探査によって求められる結果と直接比較できるようにすることを目的としている。 大気を持たない小惑星は,太陽光を熱源とし,黒体輻射で宇宙空間に熱を捨てることで熱進化する。従来の研究では主に,天体の公転軌道,自転周期,自転軸の傾きを考慮して熱進化の再現を試みてきた。しかし「はやぶさ2」の観測結果は,従来のモデルでは説明がつかない.そこで本研究では,天体表面の微地形(凹凸)に着目し,表面の凹凸が熱進化と,見た目温度に与える影響を数値計算によって求めている。 昨年度は,天体表層に微地形があると,天体の表層温度分布は季節変化(太陽の周りの公転運動)の影響が長く残る事を突き止めた。この成果を受けて本年度は,温度分布の違いが天体の運動にどのような影響を与えるのかについて検討を重ねた。天体表層からの熱輻射の反力は長いタイムスケールで天体の軌道を変化させることが知られている(Yarkovsky効果)ためである。検討の結果,季節変化を考慮した場合としない場合とで軌道変化率の違いは数10%程度であった。しかしこれは「はやぶさ2」の目標天体リュウグウを想定したモデルだったためで,2025年打上予定の日本の小惑星フライバイミッション DESTINY+ の目標天体フェートンでは,軌道離心率が大きいため事情が異なる可能性が高く,さらなる検討が必要である。この結果を受けて,本年度からフェートンを想定したモデルの検討も始めている。 また,日本の火星衛星探査計画(MMX)にも本研究のモデルを応用できるような改良も行っている。MMXがターゲットとする天体はサイズが大きい分,モデルは重くなりがちであり,分割処理するなどの技術的な工夫が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年の検討でより長時間のモデル計算が必要となる事が判明した。その影響を正しく評価するために,時間を惜しまずに丁寧なモデル化を行うこととした。これによって計算に必要な時間が当初予定よりかかってしまった。構築した計算機システムの発熱が当初想定よりも大きく,夏季には一部停止せざるを得なかったのも遅れの要因となっている。計算を多く回せない間にコードを改良する,予備部材を集めて計算機を増やすなどの工夫を重ねているが,遅れのを全ては取り戻せていない。 また,世界情勢により海外学会への参加が難しくなったことで,海外研究者との連絡や協力が当初目論見よりも疎になってしまった。加えて,研究代表者が搭載機器のひとつの主責任者を務めている日本の火星衛星探査計画(MMX)が打ち上げ延期となり,それに対応するための作業に時間を取られたこと,出張の予定を立てにくくなったことも遅れの要因となった。 これらの事情から,本研究は当初予定よりも1年延長し,来年度も継続することとした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,本研究の最終年度であるのでこれまでの成果をまとめ,論文として発表する。特に,本年度から始めたフェートンの熱進化モデルについては地上観測と整合的な結果が得られていることから,早急に発表する予定である。加えて昨年度から継続している季節変化を考慮したモデルの結果についても,国内外の研究会で成果を報告するとともに論文としても発表し,今後の研究に協力してくれる研究者を募る予定である。 夏季期間中に計算機が使えない問題については,所属先研究機関の協力で,計算機群を別の部屋に移動させることで解決の見込みである。 研究代表者は日本の火星衛星探査計画(MMX,2026年打ち上げ予定)や,欧州主導で行われる二重小惑星探査計画 Hera (2024年秋打上予定)のメンバーでもある。これらのミッションにおいて得られるであろう天体表面温度分布の予測シミュレーションにも,本研究で開発した数値モデルを適応する。このためには,モデルの改良・一般化を進める必要がある。
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