研究課題/領域番号 |
21K03659
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
甲斐 憲次 名古屋大学, 環境学研究科, 名誉教授 (50214242)
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研究分担者 |
神 慶孝 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 主任研究員 (30749718)
河合 慶 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (60823268)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 黄砂ホットスポット / ひまわり8号ダストRGB / ライダー観測網 / 黄砂 / ホットスポット |
研究開始時の研究の概要 |
近年、黄砂と共に飛来するPM2.5やバイオエアロゾルの重要性が認識されている。また、黄砂は広大な砂漠域で一様に発生するのではなく、黄砂の発生しやすい場所・ホットスポットがあることが知られている。最新の静止気象衛星ひまわり8号のダストRGB は、広大な砂漠域で発生する中小規模の黄砂現象を検出することができる。一方、ゴビ砂漠に展開するライダー観測網を用いると、ゴビ砂漠における黄砂の舞上りと輸送高度を観測することができる。本申請では、ひまわり8号のダストRGBデータとライダー観測網を活用して黄砂のホットスポットを解明し、日本における大規模な黄砂の予測に資することを目的とする。
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研究実績の概要 |
ゴビ砂漠は、アジア大陸における黄砂の主要な発生源である。本研究では、ひまわり8号ダストRGBデータとモンゴルに展開するライダー観測網を活用して、黄砂のホットスポットを解明し、日本における大規模な黄砂の予測に資することを目的とする。主な結果は、次の通りである。 2019年から始まるコロナ禍で、モンゴルに展開するシーロメーターとライダーの保守が一切行われず、現地ライダー観測の維持が困難な状況となった。特に、マンダルゴビ気象台に設置したシーロメーターCHM15k(独ルフト社製)に深刻な故障が発生した。この状況を打開するため、甲斐・神・河合は、2022年9月モンゴルに出張し、独ルフト社の技術者とZOOMで連絡を取りながら、現地シーロメーターの修理を行った。また、ダランザドガド気象台のシーロメーターCL51は、内蔵バッテリーが経年劣化したので、新品に交換した。このような保守作業により、質の高い観測データを得ることができるようになった。 既観測データ解析の一環として、二つの解析を行った。第一の解析では、モンゴルのダランザドガド気象台で実施したダスト係留気球とシーロメーターの同時観測より、消散係数-質量変換係数 MECFを評価した。先行研究と比較すると、発生源地域から遠く離れるほど、MECFの値は小さくなる傾向がみられた。すなわち、MECFはダストのモード粒径に比例する。第二の解析では、自動車によるゴビ砂漠縦断観測により、ダスト濃度と植生指数の関係を調べた。黄砂ホットスポットでは、ダスト濃度が高く、かつ植生指数が低いことが明らかになった。 河合は、全球エアロゾルモデルを用いて、黄砂は発生源や輸送経路の特徴から気温の低い極域に輸送されやすく、氷晶核として作用しやすいことを明らかにした。これらの業績により、河合は日本気象学会2022年度山本賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)コロナ明けの2022年9月、モンゴルに出張し、故障していたシーロメーターの修理や保守を行うことができた。この修理作業はレーザー光学系を取り出して点検を行うもので、高度な保守技術を必要とする。この問題は、ZOOMを活用することにより解決できた。すなわち、ZOOMで独ルフト社・技術者の指示を仰ぎながら、我々のみで現地シーロメーターの修理を行うことができた。また、関連するプロジェクト(環境研究推進費)では、モンゴルに展開する国立環境研究所AD-netライダーの保守作業が行われた。これらの保守作業により、モンゴル・ゴビ砂漠をカバーする質の高いライダー観測網が整備された。 2)既観測データ(2013-2021年)の解析の一環として、 ダスト係留気球に搭載されたパーティクルカウンターとシーロメーターの同時観測から、消散係数-質量変換係数 MECFを評価し、吟味した。また、自動車によるゴビ砂漠縦断観測のデータを用いて、ダスト濃度と植生指数の関係を調べた。黄砂ホットスポットでは、ダスト濃度が高く、かつ植生指数が低いことが明らかになった。この二つのテーマに関して、論文投稿の目途が立った。 3)河合は、全球エアロゾルモデルを用いて、①黄砂の発生感度が臨界摩擦風速に大きく依存すること、②地形的に高高度に舞上りやすい黄砂は、氷晶核として有効に機能することを明らかにした。 4)2023年春季、日本では久しぶりに本格的な黄砂が観測され、黄砂と環境の問題がマスコミにも報道された。気象学会英文レーSOLAと朝日新聞デジタルに掲載されているゴビ砂漠のダストストームの動画(Kai et al., 2021)は、テレビ朝日、NHK、日本テレビなどの黄砂報道番組に取り上げら、社会貢献をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
科研費の最終年度となるので、8月中旬にモンゴル出張を計画している。シーロメーターの保守と現地気象台でのデータ収集を行うほか、モンゴル気象水文環境研究所と将来的な共同研究を議論する。研究のまとめとして、次のことを行う。 1)前年度に論文投稿の目途が立った二つのテーマ、①ゴビ砂漠における消散係数-質量変換係数 MECF、②ダスト濃度と植生指数およびダスト発生臨界風速を取りまとめて、学会誌に発表する。 2)黄砂ホットスポットで巻き上げられた黄砂がどこで沈降するかは、興味深いテーマである。衛星ライダーCALIOPとひまわり8号ダストRGBを用いて、黄砂沈降域の形成メカニズムを明らかにする。 3)前年度得られたMECFを用いて、ゴビ砂漠における黄砂質量の高度分布を推定する。その結果は、NASAのスカイラジオメーターの観測網Aeronetの観測値と比較して検証する。 以上の作業から、黄砂ホットスポットに関する報告書を作成する。
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