研究課題/領域番号 |
21K03663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2022) 神戸大学 (2021) |
研究代表者 |
山浦 剛 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 技師 (00632978)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 数値気象モデル / 演算精度 / 演算加速器 / FPGA / 数値誤差 |
研究開始時の研究の概要 |
気象モデルによる数値計算は、数値誤差を抑えるために高精度演算を用いることが一般的である。高精度演算は多大な計算コストを要するが、これまでは誤差の影響を低減するために演算コストを浪費してでも高精度演算を行うしかなかった。今後の気象モデルは、必要な演算部分に適切な精度を適用した演算を行うように工夫する必要がある。 本研究課題は演算精度低下に伴う数値誤差理論を用いて、気象モデルにおいて演算精度と演算コストを最適化する計算手法を明らかにし、同時に現在の技術水準で最も演算精度・コストに優れた気象モデルを構築、実証することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究課題の要諦は、『ユーザー側で制御可能な演算加速装置』といえるFPGAを用いて、データが肥大化しがちな数値気象モデルの演算をより効率的に行うことである。前年度では2次元浅水波モデルに実装していた演算精度エミュレータを、数値気象モデルを作成するための気象基盤ライブラリ『SCALE』に改めて実装し直し、現実的な条件下での気象現象の再現実験を行えるように調整したが、今年度はそれを用いた局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)によるデータ同化実験をSCALEで実施した。これにより、再現実験によるアンサンブル確率予測手法について、現業の気象予測と同様の評価手法を利用することが可能となる。実験の性能比較においては、気象庁研究ノート201号(2002)のR指数を計算し、条件の異なる複数の実験の性能比較を行った。 数値実験は2019年10月15日、22日、29日0UTCの気象状態を初期条件とし、10メンバーの5日積分を行って500hPa面高度におけるジオポテンシャルのばらつきをR指数で評価した。その結果、従来の初期値アンサンブル手法と演算精度エミュレータによる数値誤差アンサンブル手法とを組み合わせたものが最も良い指数を示した。すなわち本研究で実施している数値誤差アンサンブル手法はその手法単体では従来の初期値アンサンブル手法に及ばないものの、それを補完して気象予報の精度向上に寄与する可能性があることを示している。本研究成果については年度後半に開催される理化学研究所の国際シンポジウムでの発表する予定であったが、諸事情により上記の結果についての発表を取りやめ、次年度に延期することとした。 その他、コロナ禍による半導体不足により導入が遅れていたFPGAサーバについて、今年度後半に納入が完了、稼働させることができた。FPGAテストプログラムを実行し、問題なく動作することも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績の概要で示したように、今年度は数値気象モデルを作成するための気象基盤ライブラリ『SCALE』に改めて実装し直した演算精度エミュレータを用いた、局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)によるデータ同化実験をSCALEで実施した。これにより、再現実験によるアンサンブル確率予測手法について、現業の気象予測と同様の評価手法を利用することが可能となった。実験の性能比較においては、気象庁研究ノート201号(2002)のR指数を計算し、実験条件の異なる複数の実験の性能比較を行った。 数値実験は2019年10月15日、22日、29日0UTCの気象状態を初期条件とし、10メンバーの5日積分を行って500hPa面高度におけるジオポテンシャルのばらつきをR指数で評価した。その結果、従来の初期値アンサンブル手法と演算精度エミュレータによる数値誤差アンサンブル手法とを組み合わせた手法が最も良い指数を示すことが分かった。すなわち本研究で実施している数値誤差アンサンブル手法はその手法単体では従来の初期値アンサンブル手法に及ばないものの、それを補完して気象予報の精度向上に寄与する可能性があることを示している。 本研究成果については年度後半に開催される理化学研究所の国際シンポジウムでの発表する予定であったが、諸事情により延期、代わりに令和5年度に開催される国際会議2件、および国内会議1件に投稿する予定である。 また昨年度投稿を予定していた論文についても、課題代表者が所属する研究所内の内部進捗報告ミーティングで報告したところ、論文の骨子に関わる部分についてもう少し補強すべきという意見をいくつか頂戴した。そのため、昨年度内の論文投稿を延期、本年度に再度投稿を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究については、演算精度エミュレータを用いた混合精度浮動小数点演算によるアンサンブル確率予測の評価を再度まとめ直し、原著論文として国際学術誌に投稿する予定である。 続く研究計画の第二段階として、その混合精度浮動小数点演算をハードウェア上で行うことができるFPGAを用いて、実際に余計な演算コストを必要とせずに従来のアンサンブル確率予測と同等以上の演算パフォーマンスを得られるかを確認する。令和4年度の後半になって漸くFPGAサーバの納入が済んだため、テストプログラムの動作確認までしか行えていない。加えて、第一子の誕生という家庭の事情により、長時間の集中した勤務環境の整備や出張による研究発表および情報収集などが行いづらくなっていた。今年度はリモートワークを活用し、遠隔地からもFPGAサーバにアクセスできるように整備したので、予定していた研究を進められるようになっている。
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