研究課題/領域番号 |
21K03666
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
足立 透 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 主任研究官 (10632391)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 竜巻 / フェーズドアレイレーダー / 深層学習 / CNN / 気象学 / 自然災害 / 減災 / 防災 |
研究開始時の研究の概要 |
竜巻は短時間に発生して、極めて甚大な被害をもたらす現象である。本研究では、竜巻のメカニズム解明と3次元検出技術の開発を目的として、次世代観測装置であるフェーズドアレイ気象レーダーを用いた研究を推進する。高い時間・空間分解能を持つこの新しいレーダーによって観測された竜巻事例を詳細に比較解析し、最先端の深層学習技術を用いて正確かつ立体的に検出する技術を開発することにより、現象の理解と監視・予測技術への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
竜巻の機構解明及び防災技術の高度化を目的として、フェーズドアレイ気象レーダーによる観測データの解析と渦の3次元検出技術の開発に取り組んだ。本年度は特に、竜巻被害を伴う・伴わないケースに分けて、積乱雲の内部構造に係る類似点・相違点に着目した解析を実施した。 解析の対象は令和元年東日本台風に伴う事例であり、千葉県市原市に竜巻被害をもたらした積乱雲と、その周辺に位置していた被害報告を伴わない積乱雲を抽出した。いずれの積乱雲においても、その南端にフックエコーと呼ばれるかぎ針状のパターンとメソサイクロンと呼ばれる直径数km程度の渦構造が存在すること、エコー頂高度が3-4 km程度と低いことが確認され、典型的なミニ・スーパーセルの構造を有していた。 大局的な構造は極めて類似している一方で、その内部構造は竜巻被害報告の有無によって明瞭に異なることが明らかになった。概ね1km 以上の高度に存在するメソサイクロンの回転速度の最大値は竜巻被害を伴う積乱雲の方が3-4 m/sほど高い値を示す一方で、その下方に形成された直径数100m程度の径の小さな渦の回転速度に着目すると、竜巻を伴った積乱雲では35 m/s、被害報告を伴わない事例では22 m/sの値であり、両者の間には概ね13 m/sの顕著な差異が存在することが明らかになった。この差異をもたらす原因を解析したところ、小渦の成因と考えられる強い降水コアの落下位置と継続時間、小渦と上方のメソサイクロンとの近接性が大きく影響している可能性を見出した。 これらの結果は、竜巻発生の有無を決定づける要因として積乱雲内部の物理プロセスが極めて重要な役割を果たしていること、また防災応用の面においては、メソサイクロンだけでなくその下方における径の小さな渦の立体的な監視が有益であることを示唆し、本課題で開発する渦の3次元検出技術の重要性を裏付けるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は当初の計画に基づいて事例間の比較を行い、竜巻被害報告の有無に応じた類似点と相違点を明らかにするとともに、得られた知見に基づいて本課題で開発する渦の3次元検出技術に係る評価を行った。この結果、竜巻被害の有無に重要な影響を及ぼすと示唆される物理プロセスの抽出に成功するとともに、当該課題で開発する渦の3次元検出技術の有効性の裏付けが得られ、当該年度の目標達成に至った。 このことにより、研究は概ね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究推進を通して、当初の計画が妥当であることが示唆された。そこで最終年度である令和6年度は、当該研究計画に基づいて研究の総括を進め、学会発表や学術雑誌への論文投稿を通じた成果公表に努める。
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