研究課題/領域番号 |
21K03682
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
臼井 朗 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任教授 (20356570)
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研究分担者 |
山岡 香子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30610399)
柏原 輝彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), 副主任研究員 (70611515)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | マンガン酸化物 / 海底マンガン鉱床 / マンガンクラスト / マンガン団塊 / 温泉 / 微生物 / イオン交換 / 吸着 / 北西太平洋 / 陸上温泉 / 海底火山 / 沈着実験 / 現場沈着実験 / レアメタル |
研究開始時の研究の概要 |
世界の海洋に分布する海底マンガン鉱床は、資源および海洋コアの両面で、注目を浴びている。しかし、陸上に成因的類型の鉱床が存在しないことから、成長の基本的プロセスの理解は仮説の段階にとどまっている。我々は、日本南方域において15年間の現場沈着実験を成功させ、まさに超スローの速さで現在も成長し続けていることを実証した。ここでは、現世沈殿物および暴露した合成酸化物についてサブミクロンスケールの特徴付けを行い、成長と吸着のプロセスを探る。現場実験という単純な直接的アプローチに加え、高解像度・微小部分析により、その多様性解明を目指した成因モデルを構築する。
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研究実績の概要 |
本課題においては,広大な海洋における多様な金属濃集のプロセスのなかで,特に鉄・マンガン酸化物の強い吸着能に着目して,現世の海底に普遍的に分布し多様な性状を持つ海底マンガン酸化物の沈澱(クラストや団塊を形成)の生成機構を明らかにすること目的とする。特に,現場吸着実験の結果と現世海洋の沈澱物との比較をおこなって,金属を濃集したマンガン酸化鉱物の化学的,鉱物学的特徴を記載して,海洋における濃集作用の濃集機構のモデルを構築する。本年度は海洋を模した陸上温泉(雌阿寒岳オンネトー)において,前年度に引き続いてマンガン酸化物の沈着実験を行い,本年度に新たに生成したマンガン酸化物の採取に成功した。現在,沈澱物の鉱物組成,微細構造,微生物分布などの分析・解析を進めている。 一方で,深海域(北西太平洋の海山,深海底など)で現在生成中のコバルトリッチクラストやマンガン団塊の性状とその地域変動についても,現在及び過去の海洋環境の変動との因果関係を考察し,上記の現世沈澱実験との比較を行った。海洋における金属元素の濃集プロセスの解明は金属鉱床形成の時空変動の解析とも強く関連する。その性状変動の規制要因についても検討中である。 これらの研究成果は,様々な研究分野の学会や講演会等において口頭・ポスター発表を行い,学術論文としても発表した。 研究活動の成果は,地球化学,資源地質学などの学術研究にとどまらず,鉱床探査や資源評価などの分野の基盤的知見として活用可能であると評価されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題においては,主要な研究活動のひとつとして,陸上での現場沈着実験が提案された。現場沈着装置は研究開始直後に,北海道雌阿寒岳の温泉湧出地点に設定され,約1年後に回収された。沈着容器には確実に黒色のマンガン酸化物の沈澱が付着しており,その回収に成功したことは,コロナ禍で活動が制限されるなかで,大きな成功と言える。また,産業技術総合研究所,海洋研究開発機構,石油天然ガス金属鉱物資源機構などの,いくつかの組織の研究者等と実質的連携が成立し,研究の成果は相互に共有され,学術及びその応用分野において,有用な基盤的知見となっている。 研究結果の一部は,口頭やポスターのほか,英文学術誌にも掲載され,Springer Nature社の書籍にも関連論文が掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には,陸上温泉に設置・回収した沈着容器で得られたマンガン酸化物沈澱の微小部分析をすすめ,過去の分析結果と合わせて解析することにより,現世海底に沈殿中の海底マンガン鉱床・鉱物の多様性解明を目指す。その結果は,金属濃集の素過程をミクロからグローバルな視点で解析に重要であり,今後,解析結果の公表を進める。第一回目の現場沈着実験に成功したが,沈澱形成の時間変動や温泉水の組成変動との対応などの情報をモニターすることが次のステップとなるが,現状では,法律的に(天然記念物,国立公園,原生林であるため)制限が強く,大型,長期の実験は困難である。今後はこれらの現場実験に加えて,海洋における現世沈澱物との比較を一つの研究テーマとする。 また,共同研究者が所属する,JAMSTECや産総研との共同研究を継続するとともに,資源探査を続けているJOGMEC等との情報共有を試みて,現場データを蓄積することを一つの重要な方策とする。
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