研究課題/領域番号 |
21K03685
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
奥野 淳一 国立極地研究所, 先端研究推進系, 助教 (00376542)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 氷河性地殻均衡調整 / 最終間氷期 / 海水準 / 南極氷床 / マントル粘性率 / 海水準変動 / 地殻変動 / アイソスタシー / 氷床量変動 |
研究開始時の研究の概要 |
温暖化による極域氷床の融解と海水準上昇の正確な将来予測のためには,過去の温暖期における氷床変動の理解が必要である.最終間氷期(約12.5万年前)の海水準は現在より6-9 m も高く,グリーンランド・南極両氷床が大幅に縮小していた.その根拠となる地形・地質データには,固体地球の変形成分(Glacial Isostatic Adjustment: GIA)が含まれるため,氷床量変動の情報のみを正確に読み取ることは難しい.本研究では,最終間氷期を対象として,GIAの効果を高精度に求めるモデルを構築し,固体地球の変形成分を精緻に分離することで,過去の温暖期における氷床量変動を決定する.
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研究実績の概要 |
当該年度は,高海水準を示す最終間氷期の最大の淡水供給源である南極氷床の形状および氷床量を評価するための準備段階として,現在の間氷期としての過去数10年の変動および,数千年といった完新世にどのような南極氷床変動が引き起こされたかを測地学・地質学・地形学による観測データとの比較から,どの程度まで時空間変動を拘束できるかを評価した. また,南極大陸下における粘弾性構造の水平不均質がGIA変動に影響を与えうるという先行研究に対して,現在の南極重力場の変動との比較において詳細な数値計算を行った結果,南極氷床変動は,空間的波長として球面調和関数の30次以上の成分が顕著に影響することが明らかになり,より下部マントルや上部マントル最下部の粘性率の影響が強く,水平不均質が重力データの解釈を変えるほどの影響は与えないことが判明した. この結果は,最終間氷期の全球氷床量を見積もる際には,現状として,強い粘弾性構造の水平不均質を考慮したモデル計算は必要ではないことを示唆し,現状のシミュレーションコードによる見積りで十分蓋然性の高い推定が可能であることが確認された. また,最終間氷期における融解領域について南極全体/東南極のみ/西南極のみといった場合を設定し,設定した条件において南極大陸における相対的海水準変動の空間的分布やその振幅をシミュレーションを行って詳細に調べ,現在の南極沿岸露岩域観測でどのような観測値が得られるかを予測し,将来的な南極観測計画に資する基礎データセットを構築した. さらに,最終間氷期の融解領域の設定に対し,氷床より離れた地域(far-field)の相対的海水準の空間分布について,マントルの粘弾性構造の依存性について詳細な数値実験を実施し,far-fieldの海水準データより最終間氷期における南極氷床の融解領域の推定に関する基礎データセットを整備した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に実施した,GIA数値計算モデリングコードの大幅な改訂が成功したため,今年度は,観測値との比較やまたそれにむけた実質的なパラメータ依存性を検討する数値実験を行った. まずは,計算結果の比較を行うための測地学・地質学・地形学による観測値のデータセットを整備し,地球内部粘弾性構造や南極氷床の融解領域や融解タイミングを修正できる計算スキームを構築した上で,観測値と数値実験の比較検討を行った. 当該年度に進めた研究の過程で,新たに北半球の氷床分布についての最終氷期以前の氷床分布が影響する可能性が浮かび上がり,その依存性を確認しさらにその解釈を検討する必要があることが確認された.このため,次年度まで継続して検討することで,これまでの研究成果よりさらに深化した結果としてまとめる方針とした.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の数値実験で得られた結果を軸として,最終間氷期の海水準の空間分布に対する地球内部構造と最終間氷期以前の氷期の氷床分布の違い(ローレンタイド氷床とユーラシア氷床の氷床量比の違い),南極氷床の分布といったパラメータ要素の依存性を系統的にまとめる. さらに氷床分布については,重要なタイミングにおけるスナップショットとして氷床力学モデルの出力を用いることでより現実的な分布を適用することで,地質学的な海水準データとの比較を行い,各パラメータ設定の妥当性を検討する. ここまでの結果をとりまとめて,論文として国際誌に公表する. また,東南極沿岸域に関しては,全球的な海水準データより拘束したパラメータ領域を適用し,予測される海水準高度分布の最大値・最小値を各露岩毎に提示し,将来的な南極観測計画への課題提案にむけた基礎データとして整備する.
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