研究課題/領域番号 |
21K03692
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
里口 保文 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 上席総括学芸員 (20344343)
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研究分担者 |
槻木 玲美 (加玲美) 松山大学, 法学部, 教授 (20423618)
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
林 竜馬 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 専門学芸員 (60636067)
加 三千宣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (70448380)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 琵琶湖 / 南湖 / 北湖 / 表層堆積物 / ボーリング調査 / バイオマーカー / 堆積物 / 湖底ボーリング調査 / 粒度変化 / 湖沼堆積物 / 湖内植物生産量 / 歴史時代 / 人為的影響 |
研究開始時の研究の概要 |
人間活動の自然環境への影響を検討することは、今後の人間活動を考える上で重要であり、その対象時間は、その影響が少なかった時代を視野に入れた千年程度が必要である。 本研究は、水源として利用される湖沼について、人間活動の影響が少ない北湖と大きい南湖の2つの性質を持つ琵琶湖を対象として、その堆積物を採取し、約千年間の湖内植物生産量と陸域の流入量の変化を、バイオマーカー、花粉化石、光合成色素、粒度の分析によって明らかにし、自然変動と人間の影響による変化の関係性を明らかにする。このことによって、人間の生活圏にある湖沼における環境変動と人為の影響を検討するための新たな視点を提案する。
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研究実績の概要 |
琵琶湖南湖の重点地点で採取した湖底堆積物について、上部の堆積年代が100年前までと予想される層準までは、堆積物の鉛210年代測定の前処理を進めた。それより古い堆積年代が予想される層準については、複数地点で採取したコアの層相記載および粒度分析による層序対比を行い、各地点で採取された植物片による炭素同位体年代測定から、重点地点における堆積年代モデルの検討を行った。堆積年代の解析精度を高めるために、花粉化石の抽出による炭素同位体年代測定を試みたが、予想していたよりも十分な花粉化石量が得られなかったため、年代値を得る事ができなかった。この点については、周辺地域からの花粉堆積が少ない年代であった可能性と、堆積速度が速いために相対的に花粉化石含有量が少なかった可能性について検討している。本堆積物においては、バイオマーカー分析を進めており、水草の繁茂が著しい記録がある1990年代以降には予備的調査と同様の結果が得られている。それより古い時代については、全体的に水草量が少なかった傾向を示す結果が得られているが、多少の増減が認められ、AD800年からAD1000年付近やAD1300年付近にやや増加が認められた。これらの結果は、正確な堆積速度曲線との対応が必要であるが、前述のとおりその検討のために必要なデータが得られていない。 南湖の比較対象地として琵琶湖北湖の近江舞子沖の水深約78mの地点において、口径が大きいコアラーによる約25cm、口径が小さいコアラーによる約65cmのコアを採取し、層相記載を行った。本地点では、南湖堆積物では認められなかった暗色層を含んでおり、湖底で無酸素化していた時期の存在が示唆された。本地点からは、植物片の含有が認められなかったため、花粉化石による年代測定が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
琵琶湖南湖堆積物の堆積年代モデル構築を、複数地点で掘削したコアの層相、粒度組成変化による層序対比と、炭質物が得られた地点・層準の炭素同位体比年代によって行った結果、予想していたよりも層準・年代による堆積速度の変化が大きく、より多くの層準から年代測定を実施する必要があったため、グレインソーターによる花粉化石濃集による炭素同位体比年代測定を試みたが、花粉化石量が必要量を集めることができなかったために、年代データを得ることができなかった。そのため、大口径のボーリング機器によるコア採取と分析を再度行う必要がでてきた。そのため、調査は順調に進められたが、結果が想定していた手順では得られていないため、予定よりやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
琵琶湖南湖の重要地点の堆積年代モデルについては、泥質堆積物が分布する複数地点で掘削したコアの層相記載および粒度分析による層序対比と、各地点で採取された植物片から求められた炭素同位体比による年代測定値によって検討を行った結果、当初推定していた一定した堆積速度ではなく、その変化は誤差として考える以上に大きいものであると推定された。このことから、堆積物が示す過去の環境変動についての解析を詳細に行う為には、年代測定を行う層準を増やす必要がある。堆積物に含まれる花粉化石の濃集抽出による炭素同位体比年代測定を試みたが、年代測定に必要な量の花粉化石を得ることができなかった。そのため、年代測定に必要な花粉化石量を集めるために、より大口径のボーリングによるコア採取を実施し、花粉化石抽出による年代測定を実施予定である。 今年度実施した北湖のボーリングコアは、従来研究では表層部は堆積速度が速いものの、下位層では堆積速度の大きな変化はないと考えられることから、南湖の堆積物よりは堆積年代の推定は検討しやすいと予想している。今後、北湖堆積物の表層部および下部の堆積年代測定を実施し、南湖と同様にバイオマーカー分析を実施することで、両地域の比較を行う。
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