研究課題/領域番号 |
21K03694
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加納 将行 東北大学, 理学研究科, 助教 (10739056)
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研究分担者 |
大谷 真紀子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80759689)
奥脇 亮 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10860091)
伊東 優治 東京大学, 地震研究所, 助教 (40878724)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | データ同化 / 余効変動 / 余効すべり / 粘弾性緩和 / GNSS / 断層破壊過程 / 地震波解析 / 地震サイクルシミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本課題ではプレート沈み込み帯で繰り返し発生する巨大地震後に生じる地殻変動現象である余効変動に注目し、余効変動によって巨大地震の応力擾乱がどのように緩和していくのか、また次の巨大地震に向けてプレート境界においてどのように歪を蓄積していくのかの解明に向けた数理基盤の構築を行う。余効変動を捉えた観測データには複数の要因による変動が含まれていることから、これらの複数の要因を分離すると共に、プレート境界の断層すべりをより高精度に把握し、さらに定量的なすべりの将来予測を可能とする粘弾性データ同化システムを構築することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究はプレート沈み込み帯で繰り返し発生する巨大地震後に生じる地殻変動現象である余効変動に注目し、余効変動によって巨大地震が周囲に及ぼした応力擾乱がどのように緩和されていくのか、また次の巨大地震に向けてプレート境界においてどのように歪が蓄積されていくのかの解明に向けた数理基盤の構築を行う。余効変動を捉えた観測データには複数の要因による変動が含まれていることから、変動をその背景の要因に従って分離すると共に、プレート境界の断層すべりをより高精度に把握し、さらに定量的なすべりの将来予測を可能とする粘弾性データ同化システムを構築することを目指す。 2023年度は、余効変動を含む地震発生前後の変動挙動および地震時すべりシグナルを把握するべく、2024年1月1日に発生した能登半島地震の震源過程解析を行なった (Okuwaki et al., 2024, in review)。これにより、大地震に先行して発生した非地震性変動・群発地震活動と、その後の大地震の震源過程との関係を詳細に検討した。また、高サンプリングGNSSの解析と地震活動の解析を組み合わせて、2014年チリ・イキケ地震の初期余効すべりと最大余震の誘発の関係(Itoh et al. 2023)と、2017年チリ・バルパライソ地震の前震・本震・余震と非地震性すべりの関係(Moutote et al. 2023)を明らかにした。断層すべりのデータ同化手法として物理深層学習による新たなアプローチを検討し、ばねブロックモデルにおいて同手法が有効であることを示した(Fukushima et al. 2023)。またばねブロックとダッシュポットを繋いだ余効変動を模擬した簡易モデルにおいても適用可能性を検討したところ、ダッシュポットにかかる力をうまく再現することができず、今後工夫が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、地震波形解析に基づく地震時すべりの解析事例を着実に増やすと共に、GNSS高サンプリングデータ解析手法の確立と地殻変動時系列の推定、また物理深層学習を用いてデータ同化を行う新たなアプローチの有効性を検証した。これらの結果の一部は英文の学術論文として国際誌へ掲載された(Fukushima et al. 2023)。最終目的である、余効変動の把握と予測に向けた地殻変動データ解析と粘弾性データ同化システムの構築に向けて、データ解析やデータ同化手法の開発がおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施した研究により、地震時すべりと余効すべりは、時空間的に多様な振る舞いをすることがわかった。異なる時空間解像度をもつ高サンプリングGNSSデータを用いて、この比較調査をさらに進める。2024年能登半島地震の震源過程解析により、地震前に発生する非地震性変動、およびそれに駆動される群発地震活動が、大地震の核形成と大地震そのものの破壊挙動を制御することがわかってきた。こうした知見は、昨年度までに実施した2023年トルコ・シリア地震時の震源過程にみられるサブイベント間の「余効すべり」と併せて、地震時すべりと余効すべりのシグナルやそれらの変動挙動を理解する上で鍵となる現象であり、異なるイベントやデータを用いてさらなる比較研究を進める。また従来のデータ同化手法と物理深層学習による手法の比較検討を行い、2003年十勝沖地震の初期余効すべりを捉えた高サンプリングへの適用を試みる。粘弾性については、二次元粘弾性応答モデルと余効すべりモデルを組み合わせたデータ同化数値実験を行い、どのパラメタ・変数がどの程度推定できるのかを調べる。
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