研究課題/領域番号 |
21K03697
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小屋口 剛博 東京大学, 地震研究所, 教授 (80178384)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 火山噴火 / 推移予測 / データ同化 / 逆解析理論 / 数値モデル |
研究開始時の研究の概要 |
火山噴火の時間発展は,複雑多様であり,その推移予測が難しい.本研究では,データ同化の理論に基づいて,マグマ噴出率や地殻変動の野外観測量を与えた時に,将来のマグマ噴出率の予測値を確率分布として出力する数値コードを開発する.開発された数値コードは,火山防災上有用であるばかりでなく,「噴火推移予測は原理的に可能か」という学術的問いに対して,数学的に明確な解答を与えるものである.
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研究実績の概要 |
火山噴火の時間発展は複雑かつ多様であり,推移予測が難しい.火山学においては,この難題に対して,野外観測で火山現象をモニタリングすることによって予測精度の向上を図ってきた.その結果,地殻変動や火山噴煙の連続観測によって,噴火中のマグマ溜りの圧力やマグマ噴出率について時系列データを得ることができるようになってきた.一方で,火山噴火を支配する物理過程についても,近年,数値モデルの研究が進んできた.このような学術的背景の中,物理モデルと観測データに基づく「データ同化」による噴火推移予測の手法開発が必要となってきた.本研究では,データ同化による噴火推移予測の基礎理論の構築と数値コードの開発を行う. 本研究課題については,2021年度に,火道と弾性変形するマグマ溜りで構成される「マグマ供給・噴出系モデル」において,地質条件・マグマの岩石学的性質を与えるとマグマ噴出率とマグマ溜りの圧力の時間発展が出力される順問題モデルを構築した.このモデルは,実際に観測される多様な噴火推移の特徴を再現するとともに,噴火推移を支配する物理過程の影響を数理的に明確に表現するものであり,当初計画において設定した条件を満たすものである.また,同年度においては,不連続な遷移過程を含む非線形逆問題の一般理論をマグマ供給・噴出系モデルに適用することに成功し,噴火時のマグマ噴出率および火山周辺の地殻変動データからマグマ供給・噴出系モデルの主要パラメータ(粘性抵抗,マグマの含水量,火道からの脱ガス効率)を推定する逆問題の理論的枠組みが概ねできた.2022年度には,これらの成果を基礎として,データ同化の数理解析プログラムを実装する作業を進めるとともに,これまでに得られた成果を論文化する作業を進め,理論の詳細部分について検討した.また,噴出率推定のための噴煙モデルや幅広い条件下でのマグマ上昇モデルについて,論文を公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に得られた研究成果(噴火推移モデルの構築および逆問題の数理構造の解明)は,複数の論文に分けて公表する内容をもつ.2022年度においては,本研究課題から派生したいくつかのテーマについて論文を公表するとともに,研究課題前半の中核部分についても論文の構想をまとめ終え,本格的な執筆作業を開始する段階に入った.また,データ同化の数理解析プログラムについても,論文と同時に公表することを目標として,論文執筆作業と並行して実装作業を進めている.上記の研究成果は,当初計画以上の学術的内容を持つことが判明しており,その意味において,本研究課題の進捗状況は「当初計画以上に進展している」と判断される.一方,コロナ禍及び研究代表者自身の健康上の理由のため,2021年度に引き続き2022年度も予定していた国内外の学会に出席することができず,本研究の成果発表や関連研究者との情報交換を計画通りに進めることができなかった.具体的には,研究課題に直接関わる問題についてはオンラインを用いて関連研究者と支障なく学術的議論を進めているが,国内外の学会に出席できない状況下で,幅広い研究者との情報交換については,必ずしも効率良く進めることができていない.このことは,間接的に今後の論文執筆・プログラム実装の作業を遅らせる可能性がある.以上のプラス面とマイナス面を総合的に勘案し,進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
噴火推移予測の困難は,火山噴火現象の観測精度が限られることや物理モデルのパラメータ(地質条件やマグマの性質に関するパラメータ)が多いことに加えて,順問題モデルが著しい非線形性を持つことに起因している.そこで,本研究課題では,期間内の具体的な目標として,非線形力学系モデルのパラメータ推定に関する一般理論を構築するとともに,多数のパラメータを含む非線形モデルに有効なマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いて,将来のマグマ噴出率の確率分布を出力する数値コードを実装・公表することを目指している. 本研究課題においては,2021年度と2022年度の成果として,マグマ供給・噴出系モデルを定式化し,噴火時のマグマ噴出率と地殻変動の時系列データからマグマ供給・噴出系モデルのパラメータを推定する逆問題の数理構造を解明するという,当初の計画を上回る研究成果が得られ,その結果,論文化作業が倍増した.一方,研究計画そのものは順調に進んでおり,研究の推進方策において特に変更すべき事項はない.すなわち,2023年度には,本年度より着手したMCMC法を用いたモデルパラメータ推定コード開発を本格的に進める.2023年度末を目標として,モデルパラメータ推定コードを作成し,2024年度に,上記コードを用いた逆解析を実践する.最終年度である2025年度に,モデルパラメータ事後確率分布をマグマ供給・噴出系モデルに代入して将来のマグマ噴出率の推移を確率分布として表す数値コードの開発を完成させる.さらに,以上の研究成果について,順次論文として公表するとともに,オープンソースの数値コードを公開する. なお,健康上の理由で学会への出席が十分にできない問題については,必要に応じて共同研究者に代理で情報収集を依頼し,支障なく研究を推進する予定である.
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