研究課題/領域番号 |
21K03703
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
土屋 卓久 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70403863)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 核-マントル間の硫黄分配 / 地球外核の化学組成 / 地球の揮発性元素進化 / 第一原理自由エネルギー計算 / 熱力学積分法 / 第一原理計算法 |
研究開始時の研究の概要 |
硫黄は、核に含まれる軽元素の有力な候補の一つであるとともに、親鉄性と揮発性を同時に有する特色ある元素である。地球形成時における核-マントル間での硫黄の分配挙動を明らかにすることで、核の化学組成や原始地球における揮発性物質の集積プロセスについて重要な知見を得ることができる。しかしながら、実験研究により報告された分配特性は、手法によって大きな不一致がみられる。そこで本研究では、液体の自由エネルギーを高精度で決定できる独自の数値計算手法を用いて、マグマオーシャン深部条件下での溶融ケイ酸塩-液体鉄間における硫黄の分配挙動について理論予測を行い、硫黄が核の主要軽元素である可能性などについて考察する。
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研究実績の概要 |
本研究では、独自開発した第一原理熱力学積分分子動力学法(AI-TI-MD法, Taniuchi and Tsuchiya, 2018)を用いて、地球深部の高温高圧条件下での液体鉄-熔融ケイ酸塩間における硫黄の分配特性を解明する。その際、硫黄の分配係数に対する温度・圧力・酸素雰囲気の効果について系統的に調べ、統一的な理解を行う。また、熱力学積分の計算精度の向上と効率化についても取り組む。本年度は、ガウス求積法を導入することにより、十分な数値積分精度を保ちながら飛躍的に計算を効率化する手法を確立した。計算の結果、硫黄は圧力によらず強親鉄的なふるまいを示すという結果を得たが、酸化的な条件においては親鉄性が減少すること、この効果が高圧ほど顕著となることを初めて見出し、既存の実験結果にみられる不一致の原因が酸化還元条件の相違にある可能性を指摘した。また、熔融ケイ酸塩と液体鉄合金における硫黄原子周りの局所原子構造や電子状態を解析し、微視的レベルから硫黄の強親鉄性の起源に関する解析を行った。その結果、硫黄は熔融ケイ酸塩中でも鉄原子に近接して存在しており、鉄と強い結びつきを持つことが分かった。また電子状態からこれは主に鉄3d電子と硫黄3p電子の結合的相互作用によるものであることが示唆された。 計算データが蓄積されてきたので、次に、得られた硫黄の分配係数を温度・圧力・酸化還元度の関数としてモデル化した。これを用いて微惑星集積による原始地球の成長に伴う核とマントルの硫黄濃度進化の推定に着手した。次年度は、さらに計算データを追加し硫黄分配モデルの精度を向上させるとともに、核-マントルの硫黄組成進化推定を進める。その結果に基づき、微惑星のサイズや酸化還元条件とマントル及び核の硫黄量の関係を明らかにし、現在の地球の値との比較を通して、原始地球の成長及び核形成過程について考察を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第一原理熱力学積分分子動力学(AI-TI-MD, Taniuchi and Tsuchiya, 2018)プログラムの高度化及び計算条件の最適化を行い、計算時間を1/3~1/4に短縮する飛躍的な効率化に成功した。これにより本年度での実施を計画していた、地球深部の高温高圧条件下での液体鉄-熔融ケイ酸塩間における硫黄の分配特性に対する温度・圧力・酸化還元条件の効果について、本年度中頃にほぼ計算を終了することができた。そして、得られた分配係数を用いて液体鉄-熔融ケイ酸塩間での硫黄の分配特性について体系化したモデル式の構築にも成功した。さらにこれを用いて、次年度に予定していた微惑星集積による原始地球の成長に伴う核とマントルの硫黄濃度進化の推定に着手することができた。また、これらの結果について、日本地球惑星科学連合や日本高圧力学会において発表を行うことができた。今後、さらに計算データを増加し分配モデルの精度を向上させるとともに、微惑星のサイズや酸化還元条件とマントル及び核の硫黄量の関係について明らかにすることにより、原始地球の成長及び核形成プロセスについての考察を綿密に進めることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、20万気圧、60万気圧、135万気圧において、硫黄の分配係数の計算を行った。次年度はまず、これらに加え常圧及び100万気圧での分配係数の計算を追加し、高温高圧下における鉄液体ー熔融ケイ酸塩間硫黄分配モデルの精度向上を図る。その後、本年度から着手した微惑星集積による原始地球の成長に伴う核とマントルの硫黄濃度進化の推定を本格的に実施する。具体的には、微惑星のサイズや酸化還元条件を複数設定し、核の形成・成長に伴う硫黄の分配を本研究による分配モデルを用いて算出することで、それぞれの場合において原始地球の成長に伴い核及びマントル中の硫黄濃度がどのように変化するか推定する。そして現在の地球マントル中の硫黄濃度(Lorand et al., 2013)と比較し、これと合致する条件を探索する。このようにして原始地球の成長過程及び核形成過程について新たなモデルを作成する。次に、得られた核の組成進化モデルに基づき、硫黄が現在の地球核における主たる軽元素の候補となり得るかについて検討する。具体的には、現在のマントル硫黄濃度を説明できる原始地球の成長条件から推定される核中の硫黄濃度に着目し、その硫黄濃度を有する鉄-硫黄合金液体のP波速度及び密度をIchikawa and Tsuchiya (2020)を用いてを求める。これらを実際の地球核の観測データと比較することで、硫黄が核中の主要軽元素となり得るか判定を行う。これらの結果を総括し、地球集積時における揮発性元素獲得過程や核ーマントルの化学進化過程についての新たなモデルを考案するとともに、現在の地球核組成についても新たな制約を与える。
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