研究課題/領域番号 |
21K03707
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
|
研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構 |
研究代表者 |
舟越 賢一 一般財団法人総合科学研究機構, 中性子科学センター, 主任研究員 (30344394)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 含水ケイ酸メルト / マグマ / X線 / 中性子 / 高圧 / 構造解析 / 含水ケイ酸塩メルト / X線 / 含水ケイ酸塩 / メルト |
研究開始時の研究の概要 |
水はマグマに含まれる主要な揮発性成分であり、マグマの密度や粘性などの物性は含水量や圧力条件に強く依存することが知られている。これらの物性はマグマの構造変化と密接に関係していると考えられているが、物性変化の解明につながる構造の詳細はほとんど分かっていない。本研究では、マグマすなわち含水ケイ酸塩メルトに対してX線と中性子を使った高圧下のその場観察実験と計算機モデリングによる構造解析を行い、マグマの圧縮メカニズムや水との反応メカニズムを解明する。本研究によって得られた結果をもとに地下深部のマグマが上昇して脱水、噴火する過程を考察し、火山噴火現象におけるマグマの役割についての新たな知見を得る。
|
研究実績の概要 |
水はマグマに含まれる主要な揮発性成分であり、火山噴火現象を解明する上で重要となるマグマの密度や粘性は、地下深部の深さ(圧力条件)やマグマに含まれる含水量に強く依存することが知られている。これらの物性変化はマグマの構造変化と密接に関係していると考えられるが、含水量や圧力条件に対してマグマの構造がどのように変化するのかは分かっていない。本研究では、マグマすなわち含水ケイ酸メルトに対してシンプルな化学組成の含水ケイ酸塩メルトであるNa2O-SiO2-H2O系メルトについてのX線及び中性子を使った高圧実験を行い、含水メルトの圧力構造変化を明らかにする。さらに第一原理分子動力学計算を使ったモデリング解析を行うことによってメルト中の水の詳細な構造を明らかにし、マグマの物性変化につながる含水ケイ酸塩メルトの圧縮メカニズムを解明することが目的である。 2023年度では、9-12 wt%の水を含むNa2O-8/3SiO2-H2OメルトについてのX線及び中性子実験で得られた2体分布関数(PDF)による構造解析と、第一原理分子動力学計算を使った構造モデルによる圧力変化の解析を行った。その結果、水を含まないNa2O-8/3SiO2メルト中のSiO4四面体のSi-O結合距離は7 GPaまで加圧しても変化しないのに対して、含水メルトでは加圧とともにSi-O結合距離が大きくなることが分かった。さらに、第一原理分子動力学計算による構造解析の結果、含水メルト中のO-H基の数は加圧とともに減少するが、H2O分子種の数はほとんど一定であることが分かった。これらの結果から、含水メルトの構造は加圧によって、Si-O-Na+Si-O-H→Si-O-H-O-Si+Na+の反応によるネットワーク構造の重合と-O-H-O-架橋種の増加による変化が起こっていることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度では、これまで取得したNa2O-8/3SiO2-H2OメルトのX線及び中性子実験の散乱データから導出される全構造因子と2体分布関数の精密化を行った。これにより全構造因子と2体分布関数に含まれる解析誤差を低減することができ、これまで観察できなかったNa-O結合やO-O結合に関する情報を得ることができた。また、実験と同じ含水量、圧力条件で第一原理分子動力学計算を行った結果、Na2O-8/3SiO2-H2Oメルト中のNa-O結合やO-O結合における圧力変化は、これまで報告されている圧縮メカニズムとは異なるメカニズムによって変化している可能性があることが分かった。 一方、前年度に実施できなかった出発試料合成用の超高温・急冷装置の製作においては急冷装置の改良が完了し、1800℃の高温状態から約10分間の短時間で300℃まで急冷することが可能となった。これにより出発試料となるガラス試料を合成する準備が整ったが、製作業者の遅延によって装置の導入が2024年3月末になったため、出発試料の合成とX線及び中性子実験を実施することができなかった。以上の理由により、2023年度の進捗状況については、遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に導入した超高温・急冷装置を使って含水量および化学組成を変えた含水ケイ酸塩ガラス試料を合成する。これらのメルトについての高圧X線及び高圧中性子回折実験を行い、PDF解析を行うことによって含水メルト中のミクロ構造(化学種、分子種)を明らかにする。また、実験と同じ条件で第一原理分子動力学計算を行い、得られた構造モデルとPDF解析の結果を比較・検討することによって、含水メルトの構造変化の詳細を解析する。さらに実験と計算によって得られた結果から含水量と圧力変化に対する含水ケイ酸塩メルト構造の圧縮メカニズムを考察し、地下深部(高圧)のマグマの密度や粘性などの物性変化と構造変化の関係を解明する。
|