研究課題/領域番号 |
21K03717
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
隅田 育郎 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (90334747)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | P波速度 / 減衰 / 反射係数 / コーダ波 / 散乱 / パワースペクトル / 分散 / 内核 / 地震波速度 / 粉粒体 / 超音波 / P波 / 室内実験 |
研究開始時の研究の概要 |
内核は地球の中心で液体の鉄合金が結晶成長して出来た、表層に部分溶融を残す固体の球である。その表層部分の構造は東西で異なる事が地震観測から判明している。地震観測の結果は内核表層を構成する結晶粒径(d)と充填率(φ)が西半球で小さく、東半球で大きいと仮定すれば定性的に説明出来る。しかし地震波形からdとφを定量化する方法は未だ確立されていない。本研究は結晶を模した粉粒体中を透過、粉粒体表面で反射する超音波を測定し、波形のd、φ依存性を明らかにする。さらに波長λも変え、d/λ~0.01-100の広い範囲で測定する。得られた結果を用いて内核の東西2分性をd、φを使って定量的に説明する。
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研究実績の概要 |
内核を伝搬するP波速度(Vp)と減衰(1/Q)が東半球の方が西半球よりも大きいことが地震学的観測から知られている。その一つの説明として、構成する鉄の結晶サイズが東半球の方が大きいという説が散乱波の理論モデリングに基づき提案されている。本研究はこの説を実験的に検証するために、水で飽和した粉粒体層(粒径d)の表面で反射、及びその中を透過する超音波(波数k)を測定し、サイズパラメータkdの関数で波形、反射係数、コーダ波、Vp、1/Qを調べることを目的としている。2021-2022年度は実験装置を作成した上で、粒径(15通り、2桁以上の範囲)と用いる広帯域パルスの卓越周波数(1、10MHzの2通り)を可変パラメータとして測定を行った。2023年度は得られたデータの解析を行い、投稿論文を作成した。解析により得られた主要な結果は以下の通りである。反射波については、kdが増加すると反射係数が減少し、コーダ波が励起され、コーダのエネルギーが直達波のエネルギーよりも大きくなる。またkdが増加すると、エンベロープのピークが遅延する。地震学で使われているエンベロープの形状を表すモデル(パラメータ2個)にフィットすると、波の広がりを示す冪指数nの符号がkd~50で正から負へと遷移することが分かった。透過波については、kd<<1では有効媒質理論、kd>>1では波線理論から推定されるVpに漸近し、kd=1のオーダーでは、Vpと1/Qがkdと供に増大する。上記測定に基づき、内核の東西半球2分性を説明するkdの範囲に実験的制約を与えると伴に、反射波の東西半球の違いも推定することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は昨年度得られたデータの解析を行い、投稿論文の執筆と図の作成を行った。今年度の解析では、昨年度得た初期解析結果が正しいことを確認したことに加えて、以下の新たな結果を得た。 1つ目はサイズパラメータkdの関数としてパワースペクトルが以下の3つのレジームに分けられることを示した:(I)ピーク周波数とパワーの両方がkdと供に増加、(II)ピーク周波数とパワーの両方がkdと供に減少、(III)ピーク周波数とパワーの両方がkdと供に増加。これらは昨年度、波形の定性的な特徴に着目して分類した3つのレジーム(有効媒質、分散、コーダ)に概ね対応しているが、定量的な方法に基づき分類出来るので、より客観的な方法である。本研究のターゲットであったP波速度(Vp)と減衰(1/Q)の両方がkdと供に増加するレジームはIIに対応する。さらに粉粒体層を透過する前後の卓越周波数(kwとkout)が異なることに着目して、上記3つのレジームが横軸にkw、縦軸にkoutのパラメータスペース上で区別できること、II-III遷移がパラメータスペース上で不連続的であることを示した。 2つ目は減衰のkd依存性に着目して、レジームIにおける粘弾性減衰とレジームIIにおける散乱減衰を区別した。 3つ目は位相スペクトルを使って分散曲線を求め、レジームIIでは長波長の成分の方が速く伝搬することを示し、先行研究で得られた分散曲線と整合的であることが分った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は(1)データの解析を済ませ、投稿論文の執筆と図の作成を完了させ、投稿し、(2)本課題に関連して行っている粉粒体物理の基礎研究を推進する。 (1)についてはこれまで作成した解析プログラムの動作及び解析結果を再チェックする。また粉粒体を用いた超音波測定の結果を使って内核の地震学的構造を推察するために以下の評価を行う。1つ目はサイズパラメータkdと伝搬距離パラメータkL(L:伝搬距離)の2次元パラメータスペース上で実験と内核のパラメータ範囲を比較することである。2つ目は固体粒子と液体インピーダンスコントラスト値を実験と内核の場合で比較することである。以上の比較に基づき、実験結果を内核と地震波のスケールにスケールアップし、内核の地震学的構造への示唆を与える。 (2)については実験、解析が終了した圧縮空気を用いた粉粒体クレータリングの実験を論文化する作業と新たな実験(衝突クレータリング、粉体流)の立ち上げを行う。
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