研究課題/領域番号 |
21K03741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
芳賀 拓真 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (30728233)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 無脊椎動物化石 / 化石群集 / 生きた化石 / 固有生物 / 最古 / 石灰岩 |
研究開始時の研究の概要 |
熱帯・亜熱帯の海にある海底洞窟は,しばしば「ジュラシック・マリンパーク」と言い表される。中・古生代の海に繁栄した生物の末裔が細々と生き残るばかりでなく,中生代以前の原始的なタイプの生活様式を示す生物が多く棲息しているからである。 本研究では,南大東島とフィリピンのルソン島から見出した2つの海底洞窟生物の化石群を主な対象として,現地調査と地質・古生物学的検討を進め,海底洞窟に固有な生物群集は洞窟の形成から消滅までの間にどう変化するのか,現世の「生きた化石」はいつごろ洞窟環境に進出したのか,という2つの未解決の問題を解決に導く。
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研究実績の概要 |
3年次目には,南大東島北部において,洞窟洞窟由来の海底洞窟性生物化石に加えて,洞窟外の環境に生息していた大型化石を豊富に含む洞窟入口周辺の堆積物と化石群に特に着目して調査と分析を行った。これまでは海底洞窟奥の環境の指標である着色部位(=レインボーストーン)に着目しており,またこうした洞窟入口付近の堆積物は周辺の石灰岩と区別がつき難いため看過してしまっていたが,南大東島北部ではこうした堆積物の露頭が複数分布していることが明らかとなった。これらの化石の剖出及び鑑定作業を進め,貝類・魚類等の大型化石に基づき古環境を推定したところ,海底洞窟の開口部は水深10~30 mにあったと見積もられた。 予備調査に留まっていた北大東島で網羅的な現地調査を行った。北大東島では,当時の断層に沿って点々と分布する小さな空隙に海底洞窟的な微小化石を産するのみで,南大東島と比することのできる大規模な海底洞窟堆積物と化石群は皆無であることが示された。種数は少なく,また南大東島との種の共通性も僅かであり,洞窟系の小ささが制限要因と言えよう。南大東島ほど明確ではないものの,北大東島の「海底洞窟的な堆積物」においても堆積相より一連の海進・海退のサイクルが確認された。 また,南大東島の海底洞窟化石群に含まれるアマダレガイといった特徴的な貝類が近年発見された沖縄県北部・伊江島の現世海底洞窟を調査した。その結果,アマダレガイの幼殻はじめ従来知られていなかった新規試料と新知見が多数得られ,解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画より1年分の現地調査が実行できていない状況であるが,2023年度には南大東島及び北大東島での現地調査を行い,不可欠な量の試料と地質データを収集することができた。いっぽう,化石の分離の難しさのため標本・試料作成に想定以上に時間がかかり,テーマ1「海底洞窟の変遷と生物群集の消長」および テーマ4「海底洞窟生物群の起源」が当初計画のペースで進められていない。種々の物理的困難は排除し難いことから,テーマ2「新たなる現地性海底洞窟化石群の探索」は国内の現世海底洞窟を対象にするのみに縮小して研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
調査できた回数が少ないものの,これまでの現地調査により,研究遂行に必要となる最低限の資料を収集できた。新たに採取できた試料とデータをもとにして,群集解析および古環境復元に重点をおいて研究を進め,原稿作成にも着手する。2023年度に試料不良のため解析できなかった年代測定を,新たな歯化石を用いてリトライし,堆積年代の精度を高める。また,2023年度の調査期間中に荒天のため達成できなかったいくつかの露頭の柱状図作成のため南大東島を再訪する必要があり,これを夏季に実行しなくてはならない。 フィリピンにおける調査を中止する代わりに2023年度から新たに開始した現世海底洞窟調査は,本研究を深化させるものとして重要性が高い。そのため,2024年度の中頃にこれを実施するべく許可申請や関係先との調整を行っている。2024年度の調査では海底洞窟奥部を探索する計画であるため,安全かつ効果的に調査を行うため,目下特殊機材の作成中である。 Noda (2006)により腕足類として記載されたOoagariaのタイプシリーズが南大東村教育委員会で再発見されたのは,予期せぬ成果である。タイプを検討した限り,二枚貝として解釈すべきであり,標本のキュレーション含め早急な対処を行う。 このほか,2024年度に申請者の所属機関で実施する企画展で,本課題の成果の一部を展示する計画である。
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