研究課題/領域番号 |
21K03756
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
大見 敏仁 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (90586489)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 水素脆化 / 数値解析 / 疲労 / 過大荷重 / 水素濃度分布 |
研究開始時の研究の概要 |
水素脆化は,金属材料に侵入した水素の濃度がある程度以上に達した場所で発生する現象だと考えられている。しかし,水素を直接観察することが困難であるため,水素脆化メカニズムの解明には至っていない。 本研究では,疲労負荷が加わる環境下で通常の荷重以上の負荷が加わった場合に,その後の疲労条件下で水素濃度がどのように上昇するのかを明らかにする研究である。 様々な材料を想定したコンピュータシミュレーションを多数行い,それらの結果から水素濃度が上昇しやすい条件とその理由を考察する。さらに,試験片に水素を添加した状態で疲労試験を行い,コンピュータシミュレーションの検証と精度向上を行う予定である。
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研究実績の概要 |
本計画では,水素脆化の発現要因である水素凝集メカニズムに及ぼす過大荷重履歴の影響を解析及び実験により明らかにし,変動応力疲労条件下での水素拡散凝集挙動の制御手法を提案・確立するための研究を行う。 水素脆化は,材料中の水素濃度が局所的に増加することによって誘起される。従って,材料中の水素凝集メカニズムを解明することで,水素脆化が誘起されにくい条件をも知ることができる。本研究では,過大荷重履歴のある疲労条件下での応力集中部における水素凝集メカニズムを数値解析により明らかにし,実験的にも検証・考察を行う。本研究成果は,耐水素脆性が求められる構造物の設計や破壊寿命予測などを可能とする。水素エネルギーインフラの安全性と経済性に寄与する重要な研究課題である。 令和4年度は,数値解析を用いて水素凝集に及ぼす過大荷重履歴の効果が発現する条件を明らかにした。過大荷重により水素凝集が促進される場合(より危険な条件)と、逆に水素凝集量が低下する場合があることを明らかにした。さらに,その凝集位置の違いから発言する水素脆化メカニズムが変化する可能性が予測された。 実際に材料が使用される疲労条件では,実験室的な疲労荷重だけではなく突発的な荷重が負荷される可能性が排除できない。今年度の解析結果は,このような場合でも水素脆化現象の発現を予測して構造物の安全性を確保できる可能性を示唆していると考えられる。 また,実験による過大荷重のある疲労試験を行う体制を構築し,水素環境中の過大荷重を有する疲労試験を行った。この実験では,疲労き裂成長速度と過大荷重を負荷する周期を適度に決めなければ水素の影響が発現しにくいと考えられる。今年度は十分な数の水素脆化試験を行えなかったが,最終年度に実験を行える体制を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年に引き続き,過大荷重効果を明らかにするための数値解析は当初の予定通りもしくはやや早く進んでいるが,過大荷重効果の実験で検証がやや遅れている。 定性的な比較を目的とした数値解析に対して,定量的な比較を目的としている疲労試験で理論の検証を行う計画であるが,過大荷重による影響がある場合とない場合の区切りが数値解析ほど明確に発現しないため,実験結果の整理・考察に時間を要している。今後、実験データが積み重なることで,検証が可能である。 また,水素濃度分布の可視化のための硬度計測試験では対象としている鋼材では明確な硬度変化が生じないという結果が出た。今後、鋼種や水素チャージ条件を変えて可視化の可能性を検討する。総合してやや遅れ気味ではあるが,試験機器の整備や理論の再構築が必要な致命的な遅れではない。
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今後の研究の推進方策 |
過大荷重条件下での疲労試験は開始でき,結果も積み重なりつつある。実験開始時期がややずれ込んだが,順調に実験を進めることが可能と考えられる。また,マイクロビッカース硬度計を用いた水素濃度分布確認は,対象とする材料をより高強度な材料で行い可視化の可能性を検証する予定である。 その他はおおよそ計画通りであるため,今年度の計画は大きく変更せずに実験や解析の研究を行う予定である。
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