研究課題/領域番号 |
21K03794
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
後藤 昭弘 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (00711558)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 電解 / 超硬合金 / ミーリング加工 / ミーリング / コバルト |
研究開始時の研究の概要 |
金型材料や部品材料の超硬合金化が進んでいる。しかし硬質材料であるため、加工が困難であるという問題もある。本研究では、電解加工を併用したミーリング加工の開発を進めている。超硬合金の成分であるCoを電解により溶出させ、Coが溶出して脆くなった部分を絶縁性の切れ刃で削り取る方法である。これまでに本技術で加工効率を高められることを示した。一方で、加工の安定性が得られない場合が出てくることがわかり、本方法の加工原理が、これまで考えていたような単純なものではないことがわかってきた。そこで、本加工方法において、その加工原理を詳細に調べ、高効率な加工を安定して継続できる技術とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、電解加工を併用したミーリング加工(以下、電解複合ミーリングと呼ぶ)の開発を進めている。超硬合金の成分であるCoを電解により溶出させ、脆くなった部分を絶縁性の切れ刃で削り取る方法である。これまでに本技術で加工効率を飛躍的に高めることができていることがわかっている。「電解無し」での加工と比較して、「電解有り」の場合には、ばらつきがあるものの、5~10倍程度の工具送り速度で加工できるようになってきている。一方で、「電解有り」の場合でも、電解の電流値から計算した加工速度よりも小さい速度でしか加工できていないことがわかってきた。工具と工作物の対向面積を大きくする加工方法を採ることで、加工時に流れる電解電流を30A程度まで上げることができた。この電解電流がすべてCoの溶出に使われると仮定し、そのCoの溶出した部分をすべて除去できると仮定した場合の加工速度に対して、実際には、数分の1程度の加工速度でしか加工できていなかった。その理由を調査した。本研究では、これまで、絶縁性のダイヤモンド砥粒を電着した電着工具を使用してきた。「電解有り」で加工した場合、工具の送り速度を上げるにしたがい、電流値を大きくすることができたが、同時に、電解現象の証拠とでもいえる電解液中の気泡が少なくなったように観察された。そこで、送り速度を変えて加工を行った工具を観察したところ、送り速度を上げるにしたがい、工具の砥粒の隙間に加工屑が詰まっていくことがわかった。すなわち、電解電流であると考えていた電流のある部分は電解電流ではなく、抵抗体である加工屑を介して流れる短絡電流であることがわかった。一方で、短絡電流が流れていても、加工屑は抵抗体であるため、工具と工作物間の電圧は維持できており、電解が十分に起こせていることもわかった。電解を起こせる状態を維持できれば、長時間の加工も可能であることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、令和3年度にわかった本方法の加工原理の知見を基に本方法を活かすために考案した大切込み加工を行った場合の加工現象について調査を進めた。電解現象をより強く起こして本方法の効果を上げるため、超硬合金の加工においては常識的でない大切込み加工を行ったが、「電解無し」では予想通り困難な加工であり、工具送り速度を小さく設定すれば短時間の加工では加工できることもあったが、加工できる条件でも数回かのうちには過負荷で加工できないことも起きた。その点を考慮すると、本方法では、「電解無し」の場合に比べて、5~10倍程度の速度で加工できていることになる。 本方法により、高速加工を実現するためには、電解電流を大きくすることが必要であり、大切込み加工方法を採ることで、加工時に流れる電流を30A程度まで上げることができた。しかし、実際には、この電流値から期待できるような高速加工は実現できなかった。令和4年度の1つの成果として、その理由を明らかにすることができた。加工に使用した工具を観察することで、「電解有り」で加工した場合、工具の送り速度を上げるにしたがい、電流値を大きくすることができたが、実際には、電解電流を増しているだけではなく、工具の砥粒の隙間に付着し詰まった加工屑が原因で、短絡電流が流れていることがわかった。さらに、短絡電流が流れている状態であっても、加工屑が抵抗体であるため、工具と工作物間の電圧は維持できており、電解が十分に起こせていることもわかった。令和3年度は短時間(1分)の加工しか行わなかったが、電解を起こせる状態を維持できれば、長時間の加工も可能であることを示すことができた。短絡しながらの加工でも、電解の効果は大きく、電流のリミットを設けたために(電流のリミットを越えて)電圧が低下し電解が起きなくなると、その瞬間に過負荷のために加工が行えなくなるということも確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の成果として、本方法の加工現象についての知見を得ることができ、令和3年度時点の疑問であった流れた電流が何に使われたかという問題の答えを理解できたと考える。また、本方法において、電解の効果が確認できたと考えている。一方で、電解に使われない電流が流れても、本方法の効果を高めることができないことは明らかであり、令和5年度は、電解の電流を高め、高速加工につなげる技術を明らかにすることを目指す。その方法の1つが、工具への加工屑の付着、詰まりの防止である。工具の形態を見直す、あるいは、加工屑の工具への付着や詰まりを防ぐ方法を検討する。加工屑の工具への付着や詰まりがおきなければ、無駄な電流を流すことなく、電解を効率的に起こすことができると考えられる。また、加工屑が詰まっていることで、工具と工作物間に放電が発生したり、(電圧が低下してしまうほどの)短絡が発生することにつながっている。詰まりを解消できれば、電解のための電圧を上げることも可能となり、さらなる高速加工を実現できると考えている。
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