研究課題/領域番号 |
21K03806
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野村 和史 大阪大学, 大学院工学研究科, 講師 (90397729)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | アーク溶接 / その場計測 / 溶接品質 / 機械学習 / AI / 溶込み深さ / 非破壊 / 判断根拠の可視化 |
研究開始時の研究の概要 |
溶接施工において溶込み深さや内部欠陥の有無といった溶接品質は,様々な外乱のために完全な保証が出来ておらず,また施工後の外観からは判断できないため,一般的には後工程による検査が必要となる.本研究は,溶接中に溶融池およびその周辺の視覚的な情報を取得し,その画像情報から溶接品質を推定・予測するものであり,欠陥のその場計測や品質の安定化が期待できる.手法としては画像と品質の相関を取るための機械学習モデルの構築ならびにその判断根拠の可視化を基盤とし,モデルの発展と適用範囲の拡充を通して溶接品質の制御まで視野に入れた研究を行う.
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研究実績の概要 |
接合技術は産業分野において必要不可欠な基盤技術であり,そのプロセスから検査に至る製造工程全般を対象として,高能率化や高度化が常に求められている.アーク溶接は溶接の代表的な技術の一つであるが,設定できる溶接条件以外に,部材の機械加工精度や供給するワイヤの曲がりなどに由来する溶接狙い位置ずれ,溶接中の熱変形などの外乱が影響し,溶込み深さなどに代表される溶接品質が一定にはならない.本研究は,溶接施工時に問題となる溶込み深さや溶落ちの有無といった溶接品質の不安定性に対し,溶接中の溶融池画像を入力,溶接品質を出力とした深層学習モデルを構築して,インプロセスモニタリングによる溶接品質の可視化と予測を実現することを目的としている. 従来成果として,我々はレ型開先のマグ溶接において,ギャップ変動や板継部を模した試験片に対する溶込み変動を深層学習モデルにより推定可能であることを明らかにしている.結果として,溶接長のほとんどの部分に対して,誤差1 mm以下で溶込み深さの推定が可能であるという結果を得ている.また,機械学習の活用上,問題となることもあるBlack Box化に対応すべく,モデルの判断根拠の可視化について取り組み,溶融池画像のどこに着目して溶込み深さが推定され得るかについても明らかにすることが出来た. 当該年度は,更にモデルの推定精度を上げるため,複数画像入力モデルや,スカラー量入力モデル,波形入力モデルなどを試行した.その結果,取得した画像に対して,その狙い位置直下の溶込みを対応させるよりも少し後方の溶込みを対応させる方が高精度推定となることを見出した.これは溶接線方向の断面観察からも考察されうる金属の溶融凝固現象そのものに基づく対応と見られる.どのような条件の場合に,モデルの対応をどうすべきか,今後も議論が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況としては概ね順調である.当初計画していたとおり,モデルの推定精度や汎化性能の向上のためのモデル入力についての様々な組み合わせを試行し,一定の効果があるものについて明らかにすることが出来た.また,実現場への応用時には,カメラの設置角度や焦点距離による拡大縮小など,入力画像の僅かなずれの問題が生じるが,データ拡張により対応が出来ることを確認した.ただし,その拡張の範囲にはある程度条件があることもわかったため,現実の問題を取り扱う場合は,データ拡張の仕方を考える必要がある.これは継続課題としたい.
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今後の研究の推進方策 |
これまでは,溶込み深さといった量的変数が出力値となる回帰問題を主に扱ってきた.欠陥の有無といった質的変数が出力値となる分類問題への展開を今後予定している.また,従来法は,施工条件に関してフィードバック制御の入っていない溶接条件が対象であり,非破壊の品質推定法として非常に有用なツールとなりえるが,アーク溶接本来の従来の対応策として,狙い位置ずれやギャップの変動に対する制御方法が存在し,品質を完全に担保するわけではないものの一定の効果があることは知られている.そうした制御は,いずれにせよ品質を推定出来る,といった技術ではないが,本課題で提案する溶込み推定手法がそうした制御が入った溶接に対しても有効かどうか,適用させる場合は何が必要なのか,について実験的に検証する予定である.
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