研究課題/領域番号 |
21K03820
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18030:設計工学関連
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
呉 志強 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (10274333)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 鼓膜穿孔 / 鼓膜再建 / 聴覚特性 / 形状最適化 / 周波数応答解析 / 広帯域周波数加振 / 力法 / 固有振動数 / 聴覚特特性 / 数値解析 / 振動 / 耳小骨 / 中耳の病変 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、数値解析と形状最適化の手法を利用し、鼓膜再建用の軟骨板の形状最適化を行い、治療後の聴覚特性の向上を目指している。そのために、まず、マイクロスキャンデーターを利用して、鼓膜、耳小骨、各種じん帯などを含む有限要素モデルを作成する。そのモデルの解析精度を他の研究者の実験結果と照合し有効性を確認する。作成した数値モデルを利用し、異なる場所と大きさの孔を部分修復するときの最適な軟骨の板厚分布を検討する。さらに、鼓膜全体を軟骨板で置き換えるときの最適な板厚分布を検討する。板厚分布を最適化する際に、リブ形状のようなパターンの最適化と、連続的に変化する分布の最適化両方を検討する。
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研究実績の概要 |
昨年度に続き、形状最適化手法を開発し、鼓膜の形状設計への適用を試みた。前年度までは粘性ダンパーを有する数値モデルで形状最適化を行ったが、粘弾性モデルを用いることで中耳と内耳の広い周波数での応答をより正確に解析できると考えた。そのため、粘弾性ダンパーを有する数値モデルの形状最適化手法を開発し、鼓膜の形状設計への応用を試みた。 まず、粘弾性ダンパーの一種であるMaxwell型ダンパーを用いた広帯域振幅規定問題の形状最適設計問題を定式化し、形状勾配関数を導出した。次に、力法(H1勾配法)を用いた形状最適化プログラムを作成した。広い周波数帯域で応答および形状勾配関数を計算するためには膨大な計算量が必要であるが、モード解析の結果を利用する方法を提案した。 開発した形状最適化手法を中耳振動モデルに応用した、その中で、内耳の力学特性をMaxwell型ダンパーで近似した。ターゲットとする周波数帯域において、聴覚特性を示すアブミ骨底板の垂直方向の変位曲線が本来の変位曲線との最小二乗差を目的関数とし、軟骨板の形状最適化を行った。その結果、最適化後のモデルでは、初期形状のモデルに比べて周波数応答関数が広い周波数帯域で健常時の曲線に近づいていることが確認できた。ただし、これまでの粘性ダンパーモデルの解析結果に近い結果となった。 粘弾性ダンパーを用いる効率的な形状最適化手法を確立したことで、機械構造や建築構造の最適設計に応用範囲が広がったと考える。具体的な応用例として、粘弾性ダンパーを有する構造の形状とダンパー配置の同時最適化を行い、良好な結果を得て交際会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内耳の力学特性をMaxwell型ダンパーでモデル化し、広い周波数帯域において、鼓膜を軟骨板で置き換えた場合の軟骨板の形状最適化をほぼ予定通り実施することができた。付加的な成果として、粘弾性ダンパーを有する構造の広帯域周波数加振問題における効率的な形状最適化手法を提案したため、今後、機械構造や、建築構造の形状最適化に応用範囲が広がった。 ただ、現段階での研究結果の精査と学術誌への論文投稿がまだ完成できていないため、やや遅れていると考えている。研究成果を早めに投稿できるようにしたいと思っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の研究は次のように予定されている。 これまでの研究では、蝸牛の動的特性を粘性ダンパーおよび粘弾性ダンパーを用いて表現している。モデル内の各パーツの剛性や減衰特性は、さまざまな文献を参考にしているが、文献によって特性値が異なる場合がある。このような異なる情報の中で、より実測値に近いモデリングを行うために、各パラメータをどのように設定するかを精査する予定である。 また、これまでの解析では、形状最適化により鼓膜修復後の聴覚特性が改善するものの、その改善率には限界があることが判明している。原因の一つとして、軟骨板の材料定数が人間の本来の鼓膜と大きく異なることが考えられる。仮に人工鼓膜材料を設計する場合には、どのような材料特性および形状が適しているかについて、解析を通じて方向性を探る予定である。
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