研究課題/領域番号 |
21K03837
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18040:機械要素およびトライボロジー関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 正浩 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (80209014)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 表面改質 / ナノコーティング / レーザピーニング / テクスチャー / 機械要素 / トライボロジー / 摩擦 / ピーニング / レーザ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,トライボ機素表面にレーザピーニングする際の圧力を利用して,ピーニング効果と同時にナノ潤滑剤を強固にコーティングする技術を開発する.このレーザピーニング援用ナノコーティング膜創成法では,トライボ機素の表面粗さを変化させることなく潤滑性向上に有効な形状のディンプルの形成とナノコーティングとの相乗効果により高負荷・高滑り条件の下で長期にわたって優れたトライボ性能を発揮することが期待できる.
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研究実績の概要 |
本研究では,レーザピーニングを援用して,高負荷・高すべり運転条件下において,耐久性向上に加えて動力損失低減と耐焼付き性向上を実現するための新しいレーザ援用表面改質法を開発する.YAG レーザ発振器を用い,電動ステージとレーザ発振を同期制御して試験片表面にレーザピーニングによりピーニング効果の付与と同時に表面テクスチャリングを行うことに加えて,レーザピーニングのエネルギーを利用して接触表面にナノカーボンコーティングを行うものである.レーザピーニングによる表面の耐久性,すなわち疲労寿命については,すべり転がり接触下の試験でファインピーニングと同程度の効果が確認できている.レーザピーニングによるテクスチャリングの効果については,すべり転がり条件下の試験で評価し,レーザピーニングでは比較的大きなディンプルが形成されること,およびテクスチャの効果は接触領域の大きさに依存することが明らかになり,テクスチャの効果は運転条件により異なることが確認できている.レーザピーニングによるテクスチャは中長期の摩擦低減に効果があると考えられるが,運転初期には比較的摩擦が大きいなどの挙動を示すため,運転初期での低摩擦のためにトライボ表面へのレーザ援用ナノカーボンコーティングを進めており,カーボン粒子径,カーボンプリコートの厚さ,および表面保護層の影響を検討し,カーボン粒子の付着状態の詳細観察より,ナノカーボンコーティングの最適レーザピーニング条件やカーボンの付着メカニズムについて究明している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の技術的課題は,潤滑性と表面耐久性を両立し,かつ低摩擦性を長期間持続できる最適なテクスチャの形成,テクスチャ形成と同時にナノコーティング膜を創成し,形成されたナノカーボン膜のトライボ特性などを総合的に評価することで,運転初期からの低摩擦かつ中長期の運転時の動力損失低減と高耐久性を有すトライボ機素表面を創成することである.これまで,表面耐久性については,高硬度に焼入れしたSUS440CおよびSCM415製の試験片表面に各種条件でレーザピーニングを施し,耐久性向上に寄与する圧縮残留応力を付与するとともに表面にテクスチャを形成して,すべり転がり接触条件下で耐久試験を行い効果を確認した.また,表面にカーボン粒子をプリコートしたうえでレーザピーニングを施すことで,トライボ表面のディンプル状のテクスチャの淵近傍にカーボンコーティングできることを確認した.プリコートするカーボン粒子径やプリコート厚さ,さらには保護層を変えるなどして,トライボ表面に付着するカーボンの状態を検討しており,最終年度にはナノカーボンコーティングの最適レーザ発信条件やカーボンの付着メカニズムについて究明する.ナノカーボンコーティングの構造解析や低摩擦性の実験的検証,および高負荷のすべり転がり接触条件下での円筒試験の準備等も進めており,研究は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,レーザピーニングの走査法(オーバーラップ等)を変化させて,レーザピーニングで得られる表面残留圧縮応力とテクスチャが表面耐久性と低摩擦性に及ぼす影響を調べるとともに,カーボン粒子径や厚さ等を変えたプリコートを施したうえでレーザーピーニングすることでトライボ表面へのナノカーボンコーティングについて検討し,一定の効果を確認してきた.最終年度は,種々の条件で表面に創製したナノカーボンコーティングについてEPMAやラマン分光分析等を用いてさらに詳細に分析することで,ナノカーボン膜の構造や特性を明らかにするとともに,レーザ援用ナノカーボンコーティングと同時に形成されるテクスチャが摩擦特性に及ぼす影響をすべり条件下の往復摺動試験で検討し,運転初期から中長期にわたって総合的な摩擦低減効果を発揮できる最適なレーザピーニング条件を究明していく.そこで得られた知見を基に円筒試験片にナノカーボンコーティング膜とテクスチャを形成し,実際のトライボ機素と同様のすべり転がり接触条件下の高負荷円筒試験を行い,低摩擦および耐焼け付き性に及ぼすレーザピーニングによるテクスチャ形成とナノカーボンコーティング膜形成の相乗効果を明らかにしていく. 以上の試験・解析結果を総合して,トライボ機素の表面耐久性を上げつつ,適切なテクスチャを付与すると同時にナノカーボンコーティング膜形成により低摩擦と耐焼け付き性向上を実現できる新たなレーザ援用表面改質法の開発につなげる.
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