研究課題/領域番号 |
21K03848
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
船崎 健一 岩手大学, 理工学部, 嘱託教授 (00219081)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 低圧タービン翼 / 損失 / PIV計測 / LES解析 / モード解析 / 渦構想 / 航空機エンジン / タービン / 非定常流 / PIV / 圧力方程式 / 低圧タービン / 空力損失 / POD・DMD / LES / 実験 / 数値解析 / タービン翼列 / 非定常損失 / 高精度時系列PIV / HI-Fi CFD / 圧力推定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、空間・時間解像度を向上させたPIV計測法の更なる高度化を進め、それを用いて設計点及び非設計点における高負荷低圧タービン翼列内の非定常流(wake流入)詳細計測を行い、さらにHigh-Fidelityな流れ解析コードや翼間流路内wakeの挙動を分析する手法を発展的に援用しながら、タービン内非定常速度場、決定論的及び確率的統計量の定量的把握を行う。更に、PIV計測で得られた非定常速度場データを元に、圧力方程式、全圧輸送方程式の数値解析を組み合わせることで非定常全圧分布の推定を行う手法開発を行い、その結果を用いてタービン内非定常損失発生機構の定量的解明を行う。
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研究実績の概要 |
ターボファンエンジンでは,ファンブレードを駆動する低圧タービンの効率がエンジン全体の性能に大きく影響を及ぼすことから,その損失発生機構解明が重要である.低圧タービン内の流れ場は非常に複雑であるが,特に上流Wakeはタービン翼の形状損失に大きく影響するとともに,Wake自身が混合損失増加の原因となっている.低圧タービンの更なる高効率化を目的として翼Wakeの大規模化抑制の翼後縁形状の効果に関心が集まっている.翼後縁形状変更より流れ場制御を試みている例は多く,最近では特に生体模倣に基づく翼後縁形状生成が注目されている.生体模倣の例として,渦の大規模化の抑制効果が期待されるアザラシの髭類似のタービン翼後縁形状が調査されているが,実際の損失低減の効果は未確認である.
そこで本研究では,平板翼後縁にアザラシ髭を模倣したモデルを用いたPIV実験とDMDモード解析による特徴構造抽出と流れの再構築を試みた.モード解析では,大規模数値解析データに対応し得るIncremental PODとtotal-least squares DMD及び少数モード選択法のアルゴリズムを融合した複合型モード分解手法を導入し, Jovanovicらが提案したSparsity-promoting DMDに対して,LASSO回帰最適化の解法にADMM(交互乗数法)を用いる方法にも取り組んだ.これらの手法により,複雑かつ非定常な翼後流の組織的構造と後縁形状との関係性が明らかになり,損失発生のメカニズムや損失抑制の手がかりを得ることができた.
さらに,本研究では,生体模倣に関する過去の研究事例を元に数パターンの後縁モデルを考案し,それらを典型的な高負荷低圧タービン翼列翼に適用し,形状変化を加えていないオリジナル形状(Baseと称す)を含めてLES解析及び実験を通じて詳細な調査を行い,損失低減効果を確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点での大きな進捗は以下のようにまとめることができる. 平板翼試験ベースでのPIV計測及びそのモード解析から,特にTrefftz面で得たデータ及びその再構築結果から,生体模倣翼は後縁形状間の速度差が原因となる弓なりの構造が周期的に存在するモードとして現れている.この構造のスケールは後縁形状の波長と一致した.また,生体模倣翼では異なる形状間での速度差のみが存在するわけではなく同一の形状間においても渦放出のタイミングが異なる場合がある可能性が示された.また,DMDモードで抽出したこれらの流れ構造が干渉し合う複雑な流れ場であることが分かった. 翼列翼の後縁形状を変化させた場合,Base翼では典型的な横渦(カルマン渦)の放出が支配的な流れ場であり,下流に向けて徐々に拡大,乱流化しながら放出されるが,後縁形状の変更によりWakeの乱流化が促進される.スパン方向に見た場合.形状のPeak,Valleyの効果により微小な縦渦が誘発され横渦と干渉することで乱流化が促進され,放出される渦構造は小規模化し損失の低減につながる.一方で,Peak,Valleyにより形成される縦渦が大規模化してしまうと下流までその強度を保ち,逆に損失の増加につながる,ことなどを見出した.これらの調査を通じて,base翼よりも形状損失を削減可能な形状が探索することができ,損失低減をもたらすメカニズムも明らかになりつつある. 以上の成果を踏まえ,「概ね順調」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針は,大きく分けて以下の3点になる. 一つは,異なる負荷分布の翼列翼への適用に向けた調査である.翼負荷分布は翼形状や流動条件によって大きく変わり,それに伴い翼面境界層の成長状況も負荷分布毎に異なる.翼面境界層が翼後縁での流れ場と干渉することで翼Wakeの下流側への成長過程も異なると考えられることから,翼負荷分布の効果は引き続き調査する必要がある. 二つ目は,翼後縁形状の最適化である.前年度まではアザラシの髭などの特異な形状を参考に形状パラメータを恣意的に設定し,限定的なDoEに留まっていた.そのような探索手法でも好適な形状が得られていることから,最適化手法の適用によってロバストな最適後縁形状を得ることが期待できる.なお,このような複雑な流れ場における翼の最適化には,LESなどの高解像度CFDや実験などによる目的関数の推定が重要となるが,両者とも実行に多くの時間と結果の不確かさを伴うことから,ベイズ最適化が有効であること考えられることから,同手法の調査と効果的な最適化の実施を予定している. 三つ目は,研究成果の公開と他の研究者との意見交換による研究内容の深化を図ることである.秋に予定されているいくつかの学会での発表に加え,学術論文としての発表も並行して進める予定である.
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