研究課題/領域番号 |
21K03861
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
稲澤 歩 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (70404936)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 流れの制御 / 熱流体 / 表面操作 / 熱対流 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目標は,壁面の波打ちと温度分布の組み合わせによる表面パターンフォーシングによる流れ場の応答を解明するとともに,その性質を積極的に利用した新機軸の流れの制御法を実験的に実証することである.この制御法は,流路中に機械的・電気的なアクチュエータデバイスを必要としない特徴を持ち,マイクロスケールの微小流路に対しても適用できる.
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研究実績の概要 |
壁面形状の工夫による混合と熱伝達の受動的制御に向けて,下壁に微小振幅の壁面波打を有する水平スロットの内の自然対流について実験を実施した.特に,波打の波長による対流ロールの強さの変化に着目して,粒子像追跡法により調べたところ,壁面波数が滑面スロットにおける対流ロール対の臨界波数に一致する場合に最大となることが見出され(最適),その壁面波数が最適条件から離れると,対流ロールの強度は臨界波長以下では壁面波長の1乗,以上では3乗に比例して顕著に減少する.また,特定の壁面波数において,臨界レイリー数付近で対流ロールは安定して存在しなくなり不規則パターンが生じることが確認された.次に,下壁に加えて上壁にも波打ちを与えると,上下壁間の波打位相差によって大きく変化し,同位相にしたときに対流発生が開始するレイリー数は片面の場合の半分以下まで低下することおよび,位相差を増加させるとロールのサイズは回転方向で異なるようになる様子が観察された.これらの実験結果は,先行する二次元理論解析結果と良く一致するとともに,それらの成果は国内会議で発表された.
近年の理論解析では,壁面にチャネル幅と同定程度の振幅(1/4程度)を持つ縦溝を与えると,低レイノルズ数(100程度以下)でもカオス的運動による流れの混合が期待されると報告している.本研究では,そのような流れが生じるのに必要な条件について,特に助走距離と断片アスペクト比に着目して調べ,最大流路幅と最小流路幅の中間で平均流中に変曲点が確認し,レイノルズ数50以上で不規則な速度変動波形の出現を確認した.この成果は国内会議で発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スロット上下壁に温度差を与えるための加熱・冷却方法を慎重に検討し,予備計測から,測定部において極めて良好な温度一様性を確認した.本研究では自然対流を対象としており,水平度の調整は重要である.そこで,実験モデルの水平度が0.04度以下で設定可能な支持台を設計・製作した.装置の検証は,規範流れである滑面スロットにおけるレイリーベナール対流を対象に行われ,上下壁の温度差とスロット半幅に基づくレイリー数が213を超えると波数1.5のレイリーベナール対流(RB対流)が生じることを確認した.これらの値は線形安定性解析結果の値極めて良く一致し,本実験装置の妥当性を確認された.
次に,下壁面に波数1から3の範囲でスロット幅の5%の微小振幅の波打を与えたところ,臨界値の1/4以下であるレイリー数約50から壁面波数に対応した対流ロール対(二次元)安定して生じ始めた.亜臨界では,ロールのサイズは,波打ちの波長に対応しており,ロールの回転速度は波数1.5の場合に最大となった.一方,超臨界になると,流れ場は滑面におけるRB対流が支配し,壁面波数に依らないことがわかった.また,臨界レイリー数付近ではロールの規則性が失われる様子も観察された.波数1.5で上面にも波打を与えるとレイリー数20から対流ロールが生じ,波打に位相差も与えるとロール対サイズが異なることもわかった.このように,壁面の波打ち(粗さ)はスロット内の対流発生に強く影響し,より広いレイリー数においてスロット内の混合と熱輸送を促進することが見出された. 本実験成果は,国内および国際会議で発表された.
また,縦溝を有する低レイノルズ数チャネル流れにおける混合促進に関する実験も開始した.
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今後の研究の推進方策 |
水平スロット内の自然対流に対する壁面波打の影響に関しては,どの程度熱輸送量が向上するかについて,定量評価を行い,学会で発表するとともに学術誌に投稿する.追加の実験としては,規則性が失われた臨界レイリー数における流体現象の特徴について調べる予定である.また,自由表面を有する場合についても調べる. 縦溝を有するチャネルについても,現状,熱線風速計による点計測であるが,流れの可視化により,流れの可視化により流体混合がどの程度促進されるかを定量を試みる.成果は学会発表および学術論文として公表する. 得られた成果をまとめ,新しい流れの制御手法を提案するとともに,それらの実験実証を目指す.これらのテーマについては,引き続き海外研究者らと協力して取り組む.
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