研究課題/領域番号 |
21K03898
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山田 寛 岡山大学, 自然科学学域, 講師 (60758481)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 液滴蒸発 / 液滴内部対流 / 有機溶媒 / 液滴振動 / 赤外線カメラ / 対流 / 温度分布 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,近接する液滴の蒸発時に見られる液滴内部の対流発生メカニズムを探求する.液滴蒸発は熱輸送や物質堆積の基礎となる物理現象であるが,過去の研究は孤立して存在する液滴に主眼が置かれており,複数の液滴が近接する系の内部流動の理解に適用することはできない. そこで本研究では,液滴内流れの駆動力と考えられる温度を熱放射の原理を利用して取得し,粒子画像流速測定法で得られる流れ場や蒸発挙動の結果と組み合わせることで,液滴内部に生じる現象の定量的な知見を獲得する.さらに,熱伝導率の低い固体や有機溶媒を用いた実験だけでなく州域滴の存在を模擬する手法を通して,より実環境に近い蒸発の全体像を明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究は,近接液滴の蒸発時に見られる液滴内部対流を詳細に把握することを目標としている.令和4年度は,接触角90°の2つの液滴中心間の間隔を変化させた場合における水蒸気濃度や温度分布の数値解析を行うとともに,超はっ水基板上に置かれた水滴に有機溶媒の液滴を近接させた場合における水滴の挙動と水滴内部の対流を評価した. 有限体積法を用いて液滴間隔を変化させた際の液滴周りの状態を数値的に求めた.液滴間隔が狭くなることで近接側における蒸発が抑制され,蒸発流束が大きく低下することがわかった.加えて,蒸発が抑制されることで潜熱の輸送量が低下し,液滴の中で最も温度が低い位置が遠方側に移動することが示された. 水と混和する液体および水への溶解量が20g/L以下の液体を有機溶媒として用い,超はっ水面上におかれた水滴に隣接するように滴下した.有機溶媒の水への溶解度に関わらず,水滴が振動する様子が確認されたため,この振動が発生する条件を実験的に検討した.その結果,水と比較して蒸気圧の高いアセトンやジクロロメタンでは振動が確認されたものの,蒸気圧の低い液体では確認されなかった.また,液滴の中心軸が左右に揺れる振動が見られることがわかった.この振動の原因として,マランゴニ効果による力が考えられる.振動が確認された有機溶媒の表面張力はいずれも30mN/m以下であり,水の72mN/mと比較して小さい.そのため,蒸発した有機溶媒の分子が水滴内に溶解または水滴表面に付着することで局所的な表面張力の低下を引き起こすことで振動が駆動されたものと考えられる.このことは有機溶媒と水滴の距離を変化させた実験からも推察することができた.有機溶媒と水滴の間隔を3mm程度としたときの水滴内部の対流は10mm/s程度と得られ,液滴蒸発による自然対流と比較して1000倍程度早くなることがわかったが,一様な流れ場は観察されなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は,近接する2液滴周囲の水蒸気濃度や温度の分布を数値的に求めた.また,隣接する有機溶媒によって誘起される水滴の振動現象について,発生する条件を明らかにするため実験を行った. 液滴間隔を狭くすることで近接している側では蒸発が抑制される.そのため,蒸発潜熱が奪われずに温度低下が緩和されることが数値解析より明らかとなった.この結果は,昨年度行った液滴表面温度の赤外線カメラによる観察結果と同じ傾向を示していることが確認された. 有機溶媒の液滴を水滴に隣接させることで,水滴が振動する様子が確認された.水への溶解度に関わらず,水と比較して蒸気圧の高い有機溶媒で現象が観察され,有機溶媒と水滴の距離が離れることで振動が弱まることがわかった.これは有機溶媒の分子が水滴に溶けることで局所的な表面張力が低下したためと考えられるが,表面張力の勾配は1方向に働くためこの力だけで振動は誘起されないと考えられる.振動によって液滴が変形することで働くラプラス圧や接触角の変化が復元力として働くと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
超はっ水面上に有機溶媒液滴と水滴を滴下した場合における振動の物理について,引き続き検討する.振動が発生する条件や接触角の変化などの有機溶媒液滴が隣接するときのみに見られる水滴の変化を確認する.振動については高速フーリエ変換等を用いて特徴的な周波数を抽出するとともに,表面張力の勾配に代表される液滴に係る力を式として表し,現象を説明することを目指す.また,これらによって誘起される水滴内部の流れをPIV等の解析を用いて理解する.
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