研究課題/領域番号 |
21K03923
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
原村 嘉彦 神奈川大学, 工学部, 教授 (80175546)
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研究分担者 |
諸隈 崇幸 神奈川大学, 工学部, 助教 (00756059)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 沸騰伝熱 / 限界熱流束 / 温度制御 / ぬれと乾き / 熱流束分布 / 熱伝導逆問題 / 沸騰 / プール沸騰 / 熱流束変動 / マクロ液膜 / 沸騰限界熱流束 / ぬれ性 |
研究開始時の研究の概要 |
気液挙動と伝熱の関係,特にぬれ・乾きの広がり方について実験的に研究する.伝熱面は,発生する気泡塊の位置がさほどぶれないように小さめにし,周囲からの液の流入の影響をできる限り排除できるように中央部分と外周部分とで構成する.これを,遷移沸騰に少し入った点も含め,限界熱流束点近傍で動作させる.中央の円柱には多数の(30本またはさらに多い数の)応答性の高い微細熱電対を埋め込み,その信号をもとに熱伝導の逆問題を解いて,表面温度と熱流束の変化を捉える.その結果を高速カメラやボイドセンサによって把握する気液の挙動と比較して,これらの関係性を明らかにする.
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研究実績の概要 |
この研究では,限界熱流束に近い高い熱流束を伝えている伝熱面で,液のぬれや乾き,それに伴う伝熱がどのように起こっているかを実験的に明らかににしようとしている.伝熱面への液の供給は,沸騰によって発生して伝熱面近傍に一定時間滞留する合体気泡によって抑制され,主にその離脱の際に行われる.ただ,伝熱面の周辺では周囲からの液の流入があって,より複雑になる.そこで本研究では,合体気泡が規則正しく離脱する比較的小さな(直径12mm)の伝熱面を用いる一方で,より一般性を確保するために,周囲からの液の流入を抑制した系を採用することとした.すなわち,中心部と周辺部に狭い空隙を持った二重円柱伝熱面を用いている.この円柱端面で沸騰を起こす.伝熱面底部はつながっていて,そこを電気加熱する.この伝熱面では,熱流束を増加させると,中心部の方が先に限界熱流束を迎えて沸騰状態が遷移する.実験は温度制御をかけて行っているが,中心ブロックと周辺ブロックの底部がつながっていることによって,沸騰曲線のより急な負勾配まで温度制御が安定に保てるという利点もある.この利点を活かして,より頻繁にぬれと乾きが繰り返される遷移沸騰領域を含め,限界熱流束付近において高速カメラによる観察と熱流束分布・変動の測定を試みる. 2022年度から2023年度にかけて,中心部径を変化させたとき,沸騰伝熱特性に違いがあるか,また,どの程度の過熱度まで遷移沸騰に入った状況を実現できるかを調べてきた.今後,熱流束分布の変動を高速カメラによる撮影と同期させて行い,伝熱と液の挙動の関係性を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定より遅れた理由が2つある.第1は,二重の伝熱面を製作方法に起因する問題であり,狭い空隙内に接合に使用する銀が吸い上げられ,空隙を満たしてしまったことである.接合では,全体の底部の上に中心部を削り出した中心ブロックに周辺部となる円筒を接合するが,単純な初期のやり方では接合状態が不十分であることがわかった.そこで,真空で行う接合直前にブロックが250°C程度の状態で水素を注入して表面の酸化物を還元し,接合の状態を向上することとした.接合状況は良くなったが,逆に,接合に使用する銀箔が空隙に吸い上げられて空隙を満たす状況が頻発した.吸い上げを防止するために耐熱塗料を塗布する方法をとったり,空隙が確保されているかを確認するためにX 線CTをとるなどして,方法を確立するのに時間がかかった. 第2は,2023年度に実験するための人的資源に問題があったためである.例年どおりに2名の4年生の卒業研究として設定したが,2名のうち1名がほとんど言葉(日本語と英語)が通じない学生で,しかも,製図などの能力もほとんどない学生であった.その負担をもう1名の学生が負っていたようで,9月後半から不登校になり,鬱状態を理由に後期休学をした.前期に進まなかったのと併せ,全く実験ができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には,かねてから計画していた熱流束分布の変動の測定と合体気泡を通した伝熱面表面の観察を同期させて行う.高速カメラによる撮影(10 000fps以上の)は,以前はこの上方からの撮影だけで,合体気泡の動きがはっきりわからないという問題点があったが,1000fpsで側方からの観察も同期させて行えるようにシステムを構築したので,これを用いて,測定と観察を行う. 熱流束分布・変動の測定では,外径5.8mmの中心ブロック内の伝熱表面直下0.2mm程度の深さに,面中心付近に0.35mmピッチの6列×6列正方形格子点上(但し4隅は除く)の32個と,その外側領域に1.05mmピッチの正方形格子点上(円形面内にあるこの格子点のうち4つは前述の0.35mmピッチのもの)の20個の熱電対を配置し,5kHzまたは10kHzで測定を行う.熱電対信号は,それぞれ直流増幅器で増幅したあと,8チャンネルごとに8チャンネルの信号の1つをアナログスイッチで出力する回路を通して7個のデジタイザモジュールで測定する. 測定した熱電対の起電力を温度に変換し,これを境界条件として1次元または3次元の熱伝導逆問題を解いて表面熱流束の変動を計算する.この熱流束変動を用いて,これと伝熱面上の液の挙動,また,その液の挙動が合体気泡の挙動とどのように関係するかを検討する.
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