研究課題/領域番号 |
21K03961
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
相山 康道 筑波大学, システム情報系, 教授 (60272374)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 可変剛性機構 / 非ニュートン流体 / 衝突 / 接触 / ロボットマニピュレータ / 人間協働ロボット |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,軽量なロボット用可変剛性関節機構の開発,および,剛性制御系の導入による,次世代産業用ロボットの衝突・接触安全性を確立する.これは,人との衝突のみならず,テーブルにワークを置く,他のワークに組み付ける,装置の部品を取外す,等の環境接触作業時に,人間のようにある程度の速度での周辺環境との衝突を許容する,人間-機械協働のもとでの新たな作業効率改善手法となる研究である.空気圧を利用した低剛性な可変剛性関節機構に,非圧縮性流体を用いた高剛性の可変剛性機構を組み合わせ,さらにマクロ-マイクロ系の制御系を応用した関節制御手法を導入し,様々な衝突に適応可能なロボット関節システムを構築する.
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研究実績の概要 |
本年度は,(1)圧縮空気による可変剛性機構の改良,(2)非ニュートン流体を用いたダンパーによる制振性の確認,(3)脆性を有するリンク部の検討,の3つについて研究を進めた. まず(1)の圧縮空気による可変剛性機構の改良については,前年度に検討した,可動範囲を狭めることによる剛性の強化,ならびに,耐圧性に優れたホースを使うことによる使用空気圧力の上昇,の2つの改良を行い,良好な結果を得た.以前試作していたものでは,空気圧が0MPa~0.3MPaで,剛性は0.05Nm/deg~0.1Nm/deg程度であった.これに対し,本年度のものは,0MPa~0.5MPaで,剛性は0.23Nm/deg~1.3Nm/deg程度と,最大の剛性で10倍以上の結果が得られた. (2)の非ニュートン流体を用いたダンパーについては,ビンガム流体という,せん断力が小さいときには粘性が高く,せん断力が大きくなると粘性が低くなる性質を持つ流体を利用し,負荷トルクが小さいときにはほぼロック状態となり,大きな負荷トルクがかかるとダンパーとして働く性質を持つ機構の開発を行った.実際にはロック状態となる負荷トルクの範囲は狭く,完全なロックとして使用することは困難だが,粘性については内部構造の工夫で大きく取れることが判明した. (3)は,関節構造での安全性確保という観点から拡大し,リンク部に脆性を加えることで,過大な負荷が加わった際に,人間でいう「骨折」のようにリンク部が折れる構造を開発した.セラミックのような脆性材料を用いる方法も考えられるが,今回はクラッチのように,ばねで抑えられているロックが過大な負荷で外れるという機構を作成した.概ね想定通りの挙動を得ることはできたが,負荷の力で考えると当たる場所により骨折する荷重が異なる,ロックが外れるまである程度の弾性を示す,などの性質も明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は「(3)やや遅れている」状況で合ったが,本年度は3つの方向で研究を進め,かなりの進捗が得られた.特に圧縮空気を利用した可変剛性機構については,望みの性能に近いものが得られるところまで改良を進めることができた. ロック機能付きダンパーについては,ロック機能については実用には遠いが,来年度予定している制御による制振と組み合わせることで,問題は解決できると検討をしている. 「骨折」するリンクについては,当初の計画にはなく,付加的なものとして検討をしたものなので,進捗に影響はない.ただし,脆性材料を用いたリンクの作製は引き続き行う意義はあると考えており,それにより,弾性をもたない「骨折」機構を開発できる可能性はあると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
来年度が最終年度であるため,最終的なまとめへと進めることが重要である. 開発した可変剛性機構については,可動範囲を狭めたため,円周上に2組を入れることができるので,それにより弾性係数も2倍まで改良できる.ただし現在は3Dプリントで作っている構造部を金属などに変えなければ強度が問題となると思われる.これにビンガム流体を用いたダンパーを組み合わせ,実際のロボット関節のサイズでまとまるよう,モーターとも組み合わせたSeries Ealstic Actuator もしくは Series Impedance Actuator と呼べる機構を試作する.これに対して適切な制御系の構築を行い,通常時の振動をできる限り素早く収束し,衝突時には瞬時に弾性により撃力を抑え,ダンパーと制御により制振する機能を構築する. 2関節程度の簡易ロボットアームを作成し,様々な姿勢,様々な対象に対する衝突実験を行い,人の安全性確保がどの程度できるか,検証を行う. また,順調に進めば「骨折」機構も組み込み,衝突実験の中で,その効果を検証したいと考えている.
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