研究課題/領域番号 |
21K04013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
上野 崇寿 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (30508867)
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研究分担者 |
八田 岳士 北里大学, 医学部, 准教授 (00455304)
古川 隼士 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (90632729)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | インパルス高電圧 / ワクモ殺虫 / 高電圧パルス殺虫 / ワクモ / 薬剤抵抗性 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国における採卵養鶏事業は,高度に集約・システム化された生産体制によって「ワクモ」が通年繁殖することが可能となり,その経済的被害は近年増大している.その防除方法として殺ダニ剤が使用されてきたが,発育環が極めて短いことから近年,薬剤抵抗性を示すワクモが出現し対策に苦慮している現状にある. そこで本申請では,高電圧インパルス印加によるワクモの殺虫機序を解明し,走暗性という特性を活かしたワクモ誘引型リアクタを開発し,高効率ワクモ殺虫技術を構築することを目的とする.
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研究実績の概要 |
本研究では、IPMの代替的なD. gallinae防除方法として、薬剤の多用に依存しないインパルス高電圧放電の活用を提案した。本年度は、電極の放電特性や電圧・周波数の変化によるダニ防除効果について確認した。放電電圧を測定する実験では、電極の絶縁材料に関係なく、電極間距離が長くなるにつれて放電電圧が高くなった。さらに、電極の絶縁材料によって、放電電圧に若干の変化が見られた。電極を拡大すると、ポリイミド電極には突起があることが判った。この突起による電界集中が放電電圧を低下させたと推測される。また、インパルス高電圧の印加によりD. gallinaeを効果的に防除できること、防除作用に重要な各種電気的パラメータに最適値が存在することが判明した。 インパルス高電圧ダニ駆除法は、紫外線やオゾンによる方法と比較して、わずか30秒でD. gallinaeの95%以上の死亡率を達成し、卓越したダニ駆除強度と時間効率を示すことが証明された。この結果は、D.gallinaeが電気ショックに対して抵抗性を持たず、速やかに駆除できることから、この電気ショックダニ防除法は新規のダニ防除法として可能性があることを示している。今後は、染色技術によりD. gallinaeの内部組織を調べることでダニ駆除作用のメカニズムをさらに解明するとともに、インパルス高圧電源の防湿性や電極構造を改善し、高効率なダニ駆除作用の実現を目指す。さらに、本技術の他の応用についても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電極の絶縁材料としてガラスエポキシとポリイミドを利用した場合、死亡率は両基板で約90%であった。ポリイミドの放電電圧はガラスエポキシの放電電圧より若干低かったが、ダニ駆除電圧はほぼ同等と見なせる。その後、電圧によるダニ駆除効果を確認する実験を行ったところ、2.6kV以下の電圧ではダニを駆除できないことがわかった。この電圧では放電が全く起こらず、D. gallinaeが電極を通過しても、ダニの死滅に必要な放電現象が観察されなかった。電圧を上げると死亡率は急激に上昇したが、 さらに電圧を上げると死亡率の向上が鈍化した。これは、放電が電極の同じ箇所で発生し、電極全体に広がらないためであった。印加電圧が高すぎると、放電が一点にしか起こらず、電極上に散在するD. gallinaeに均一な放電を与えることができないことがわかった。 電圧と同様に周波数を変化させても死亡率は同じ傾向であった。低周波では死亡率は15%以下であったが、100Hz以上の周波数では90%以上に増加したしかし、周波数をさらに増加させると、電圧を上げたときと同じ場所で放電が形成され、死亡率は激減した。
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今後の研究の推進方策 |
電極に高電圧インパルスを印加し、ワクモを90%以上で高効率に殺虫できる手法を実現できた。今後は、実用化を踏まえた検討を以下のように実行する。 ・小型かつ携帯型電源の開発:殺虫処理を短時間で実現するためには、電源の容量の最適化と連続使用が必須である。現有の装置は、数十kVを数百kHzまで出力可能であるが、携帯性およびハンドリングを考慮すると出力容量を減少させ小型化することが必要である。また、本研究では出力するパルス電圧の立上がりと立下がり時間は求めないものの、バッテリー駆動で、kVの電圧とmAの電流を繰り返し出力可能な携帯型電源を実現する。 ・システム化および安全性評価を踏まえた実用化試験:上記で開発した携帯型電源とリアクタを用いて、養鶏場での殺虫処理試験を行う。ここで得られたここで得られた全試験期間の電圧電流データを確認し、電源及びリアクタの設計を修正・改善する。同時に通過電流の安全限界(厚労省)に基づき、ヒトおよび養鶏への感電の影響を踏まえ、その実用性を見極める。
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