研究課題/領域番号 |
21K04030
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
桐生 昭吾 東京都市大学, 理工学部, 教授 (00356908)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 裁縫技術 / 無線電力伝送 / ニードルパンチ法 / 縫込みコイルの損失 / フラクタルアンテナ / 電力発振器 / 非接触電力伝送 / 縫込みコイル / 磁場共鳴 / リッツ線の損失 / 高周波特性 |
研究開始時の研究の概要 |
裁縫技術を用いて作製したコイルを使用した磁場共鳴型電力伝送技術の確立を目的とする。想定している応用は体内植え込み型の小型機器への体外からの電力伝送である。このコイルの電気的特性を明らかにする。特に電磁界解析と実測により形状、リッツ線の太さ、線間間隔などを変化させた場合の高周波特性を明らかにする。このコイルは容易に変形できるという特徴を有するために、変形によって電気的特性がどのように変化するかについて研究する。このコイルを用いた電力伝送回路の設計を行い、回路シミュレータ、電磁界解析、実測等により電力伝送効率を求める。
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研究実績の概要 |
2023年度は、裁縫技術を用いた無線触電力伝送技術に関し、高周波化に向けた研究を行った。具体的には、現在、法律で許可されている13.56MHzと144MHzにおいて、裁縫技術を用いて作製したコイルとアンテナの設計、電気的特性について研究を行った。 まず、13.56MHz帯でのコイルについては、コイルの損失について、近接効果と浮遊容量による損失を分離して測定する方法を提案し、13.45MHz程度より低い周波数では線間を6 mm程度離すことにより、線間の近接効果を無視できることを明らかにした。また、浮遊容量による損失は50 mm程度線間を空けても無視できないことが分かった。実際にコイル作製を行った結果、リッツ線一本では、損失が大きすぎ、複数本を並列に接続することにより損失を減らせることが明らかになった。 144 MHz帯では、裁縫技術を使用して作製したアンテナの設計を行った。いくつかのループアンテナについて有限要素法によるシミュレーションおよび実際に作製した結果から、Vicsek型のフラクタルアンテナが反射損失が最も大きく、伝送効率も優れていることが分かった。次数を変えて作製したフラクタルアンテナにおける2次のフラクタルアンテナについて-40dB程度の反射損失が得られることが明らかになった。また、指向特性を測定したところ、ループアンテナとしてよく知られた八の字型の特性を持っていることが分かった。 次に、結合係数とQ値の積kQが大きい場合についての周波数調整について研究を行った。kQが大きい場合、共振周波数が変化するので駆動周波数を調整する必要がある。これに関しては電力発振器を用いることにより自動調整できることがすでに発表されており、回路がより簡単なRoyer型の発振器を改良したものを提案した。シミュレーションと試作機の実測により80%程度の効率が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である裁縫技術を用いた無線電力伝送用コイルについて、高周波化について重要なコイルの損失について実験的な検討を行った。これにより、浮遊容量による損失が非常に大きいことが明らかになった。また、リッツ線を複数並列接続してコイルを作製することにより、損失を減らすことができることを明らかにした。 より高周波での使用に関しては裁縫技術を用いて作製したアンテナについてシミュレーション、実測により電気的特性を明らかにした。いくつかのアンテナについて検討した結果、Vicsek型のフラクタルアンテナが反射損失が最も大きく、伝送効率も優れていることが分かった。これにより、衣服にアンテナを作製する基礎的な技術を確立できたと考えている。 また、kQが大きい場合に駆動周波数を調整する必要があるが、自動調整可能な方法として回路構成が簡単なRoyer型の電力発振器を改良した回路を提案し、回路シュミレーションと試作を行った。80 %程度の効率が得られることを明らかにしている。 以上の研究成果として、査読付き論文2件、国際会議7件の研究発表を行った。これらのことから、おおむね研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は最終年度であり、研究のまとめを行う。また、裁縫技術を用いて作製したコイルについて、伸縮布に縫い付けたコイルの変形に関する研究を行う。裁縫技術を用いることにより、変形が容易な形でのコイル作製が可能になり、伸縮性のある布にコイルを縫い付けることができる。現在、多角形やジグザク形のコイルを作製し、布の伸縮に伴い容易に変形できるコイルを実現できることを確認している。このコイルについて変形に伴う電気的特性の変化について研究を行う。 さらに、裁縫技術を用いて作製したコイルの応用について、電力伝送以外に変位センサーとしての利用を検討している。これは、伸縮性の布に磁性体を混合した絵具を塗布し、それに裁縫技術を用いて布に作製したコイルを重ねることでセンサーとして用いるものである。磁性体を塗布した布が伸縮することにより、コイルのインピーダンスが変化する。これにより変位を検知できる。シャツなどに作製することにより、呼吸センサーとしての使用を想定している。
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