研究課題/領域番号 |
21K04043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
都築 伸二 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (60236924)
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研究分担者 |
杉本 大志 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 助教 (40780424)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 電磁環境の認識 / 雑音の抑圧制御 / クレーンワイヤ / 電力伝送 / G3-PLC / 磁気飽和 / 高調波ノイズ / 線路推定結果の2次利用 / トラッククレーンのワイヤ / Controller Area Network |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,EMC (電磁両立性) 問題を扱う。想定を超える多数のIoT機器が,多様な電源装置と隣接すれば,既存のEMC技術では解決できない問題に直面することを,筆者らは提起し,その解法としてSmart EMCと呼ぶ新しい概念を提案してきた。 しかし,両立性を損なう電磁環境の具体的な認識技術と,その結果に基づき雑音を抑圧する制御技術を未だ開発できていなかった。本研究では,トラッククレーンのワイヤを用いた情報と電力の同時伝送システムを取り上げる。従来の個別対策型技術を,Smart EMCと呼ぶ新しい技術でシステム的に補完し,想定外の事態に至っても両立性が保証できることを実験的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
研究の目的:これまでできなかった稠密な電磁環境のモニタリングが,IoT(Internet of Things)によって可能となることに着目した研究である。従来のEMC技術は単に電気機器単体で,かつ出荷時の性能を担保するに留まっていた。しかし,IoTを利活用すれば自身の経年劣化や故障に伴う障害発生を抑えたり,EMC規格は満たしていても所要SNRを満足していない状況を改善できるはずである。 対象としている車載クレーンのワイヤーロープを用いた情報と電力の同時伝送システムでは,滑車(シーブと呼ぶ)を介してワイヤーロープが電気的にループ回路を形成することに着目し,筆者らが考案した一線式PLC(Power-Line Communication)システムを適用している。これは,通常のPLCとは異なる電流駆動型であり,かつワイヤとはトランスを利用した非接触であるため,ワイヤーロープ通信にも適しているためである。今年度は,筆者らのシナリオにおいて,最大可能受電電力を推定するためのシミュレータを作成し,実測値と一致するか検討した。またこの時に発生する伝導雑音を測定し,シミュレーションできるかを検討した。 研究実施方法と結果:送電側に理想パワーアンプを挿入し,また受電側に力率改善コンデンサを挿入したとき,ワイヤー長30m において最大78W受電できるはず(理論限界値)であることをシミュレーションで求めた。実際に使用できるパワーアンプにシミュレーン条件を合わせたときは73Wであり,実測値と一致した.また,実用時に用いる予定の矩形波による電力伝送の際に磁気飽和によって発生する伝導雑音の各高調波振幅の増大傾向を数値で近似できることを明らかにした.ただし,その高調波がPLC(G3-PLC規格準拠)装置に及ぼす影響については,トランスの磁気飽和を許容する場合でもEMC的な問題は生じなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大受電可能電力をシミュレーションで求めることはできるようになった点は、当初計画以上に進展した。しかし、以下の点が遅れている。 ワイヤーロープ長Lに追従するよう電力源の発振周波数を線形に変化(チャープと呼ばれている)する電源を使用する予定であるが、この開発が遅れている。 また、ワイヤーロープから漏れ出す雑音(高調波成分)が,最終的には伝導雑音として自動車内部のCAN bus上に重畳される過程をシミュレーションできるようにする予定であるが、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
雑音のモデル化とその抑圧技術を引き続き開発する: ルネサス社製のPLC装置(G3-PLC規格)のソフトウェアを改造して、各サブチャネル毎のSNR値 を得る予定であったが、この改造が困難であることが判明している。そこで本研究では、当該PLC装置は使用せず、独自に各サブチャネル毎のSNR値を得ることにする。工程が遅れているチャープ式の電力源の開発を行い、オシロスコープで測定した値をチャープ復調して得られるスペクトルと比較しながら雑音モデルを作成する。 本研究で観測される高調波は、使用しているトロイダルコアの磁気飽和による非線形ノイズであり、当初は機械学習によって非線形性も表現できる雑音モデルを検討するつもりであったが、非線形ではあるが上述のとおり数値近似できることが分かったため、想定していた工数は大幅に削減できる見込みである。 ワイヤロープを伝導してCAN bus側のECU(Electronic Control Unit)で観測されるノイズを、シミュレーションできるようにする作業が2022年度遅れたため、これを挽回する。その後、ECUの所望SNRを考慮しながら,ワイヤーロープ側電源周波数と振幅をフィードバック制御して抑圧する方法を検討する。
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