研究課題/領域番号 |
21K04050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
丸山 珠美 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 教授 (90735523)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ワイヤレス電力伝送 / メタサーフェス / 八木宇田アンテナ / レクテナ / ループアンテナ / エネルギーハーベスト / IoT / スマート農林水産畜産業 / リフレクトアレー / WPT / 5G |
研究開始時の研究の概要 |
電波の届きにくいところにあるIoT端末に対して、データ通信とワイヤレス給電を実現することを目的とし、(A)送受信アンテナの近傍に、多角形セルで構成したメタサーフェスを設置し、ビーム方向を変化させる新たな手法を提案する。 (B)IoT端末の省電力を図るため通信用電波を電力に変えるエネルギーハーベストの実現を目的とし、八木宇田アンテナの導波作用によって無給電素子に電流が流れる現象を、伝送距離拡張に応用する新たなワイヤレス電力伝送の方法を提案する。(C)メタサーフェスと八木宇田構造を組み合わせることにより、受電用アンテナを、導波素子としても働かせ、任意の方向に電波を導波させる新たな手法を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究では,給電素子に近接した受電素子が電力を受け取るだけでなく導波器としても働き,次の素子に電力を伝える八木宇田アンテナの原理を応用した新たなレクテナアレーを提案し,今年度は以下の成果を得た.1.素子形状を半波長に限定しないレクテナアレーを実現するため,ループ型素子を導入し,この形状が整流回路に短絡を発生させる問題を解消する新たな構造をとしてC型ループレクテナアレーを考案し,LEDを遠くまで点灯させることに成功した. 本結果はIEEE URSIGASS2023に採択された. 2.インピーダンスを装荷によって小型化した素子が,八木宇田レクテナアレーとして,電力を伝搬させることを,電磁界解析によって明らかにし, LEDの点灯実験に成功した.本結果を,査読付き国際会議IEEEAP-S2023に投稿し採択された.3.各レクテナ素子から得た電力を集約し,より高い電力を得る手法を,アレー配置を変化させて検討した.半波長レクテナを電波の進行方向に沿って縦に配列した場合の結果をIEEE APWC2022で,送電部に対して鉛直方向に配列した場合の結果を,IEEE AP-S2022で,それぞれ報告した.4.セル形状を6角形にした多角形セル応用メタサーフェスの設計法をまとめ,論文を投稿した.ユニットセル間の間隙の有無について新たな検討を加え,その結果を高専シンポジウムで報告した.多角形セル応用は2023年度重点的に力を入れる予定である.5.これまで空間伝送型ワイヤレス電力伝送方式において,導波素子の応用による伝送距離拡張を検討してきた.本研究では新たに,磁界結合WPTに対して検討を行った.その結果,磁界結合の場合も,無給電素子(コイル)を中継素子として用いることによる伝送効率向上効果が確認できた.本結果をAWPT2022で報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の当初計画は,「(A)多角形セル応用メタサーフェス,(B)八木宇田構造応用の結果に基づき(C)メタサーフェス応用による導波方向制御について解析検討を実施し有効性を明らかにする。」ことであった.(C)のメタサーフェス応用による導波方向制御については,昨年度その有効性を発表している.(A)について,6角形セルを用いて,インターディジタル構造とマルチビアについて論文を一度投稿し,現在修正中である.また,論文執筆にあたり追加検討した結果について2件学会発表を行った.(B)については,従来できなかった,半波長以外の素子で八木宇田構造応用レクテナアレーを実現し,さらに,インピーダンス装荷による小型化も実現した.提案したC型ループレクテナアレーは,普通のループ型八木宇田アンテナを応用するだけではできなかった,整流回路短絡の問題を解決する新しい構造であり,先端素子だけでなく,導波素子全てをC型とする新しいレクテナアレーである.また,インピーダンス装荷による小型化のテクニック自体は既知であるが,これを適用した素子が,八木宇田アンテナと同様に,導波素子として働くのか,また全ての素子がレクテナとして動作するレクテナアレーとできるのかは,本研究で初めて明らかにされたことである.本研究によって査読付き国際会議4件,学会発表10件それぞれ報告を実施した.論文執筆と特許,多角形セル応用メタサーフェスの検討が少し遅れており,2023年度はこれに力を入れる.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 今年度は,これまでの検討を基にして,次の検討を実施する.(A)多角形セル応用メタサーフェスの研究に重点を置き,自在な方向にビームスイッチする新たな構造を電磁界解析で明らかにし,論文投稿,特許執筆を実現する.(B)八木宇田構造応用レクテナについては,C型ループレクテナアレーをさらに発展させる新たな構造を考案しており,その特性解析を進める.これまでの結果については論文にまとめ投稿する.(C)メタサーフェスを反射器とする八木宇田レクテナのビーム制御について昨年度一定の成果を得て発表しているが,これをさらに発展させ,詳細検討を進める. (2)また, 2023年度の当初計画にそって,(D)遺伝的アルゴリズムやPSOを用いたレクテナアレーのワイヤレス電力伝送効率向上のための最適設計を実施する。(E)エネルギーハーベストによるIoTスマート農業システムプロトタイプを作成するため, LEDだけでなく,光,温度などのセンサーのワイヤレス給電実験を実施する.(F)これまで,八木宇田レクテナアレーの実験は電子レンジの漏れ波を用いて実施しているが,2023年度は無線LANの電波を用いて有効性を明らかにする. (3)導波素子応用によるワイヤレス電力伝送距離の拡張について,本研究で実施した空間伝送WPTだけでなく,磁界結合WPTについても効果が出る見込みが得られたため,今後検討を広げる.
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