研究課題/領域番号 |
21K04052
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
|
研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中平 勝也 沖縄工業高等専門学校, 情報通信システム工学科, 教授 (30500566)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 衛星通信 / マルチビーム / 電波干渉 / スループット / 無線通信 / リソース制御 |
研究開始時の研究の概要 |
100を超える多ビーム数で地上を照射する通信衛星と300を超える地上のユーザー端末から構成されるマルチビーム衛星通信においてシステム全体を統合する新方式を確立するために、実際の通信衛星を用いた大規模な実証実験を行うことなく、システムの有効性を評価できる汎用衛星シミュレーターを実現するとともに、スペクトラム分割・圧縮伝送やAIトラフィック変動予測など独創的な技術をシステムに適用する検討を行う。本研究により、各ビームへの周波数配分と電力配分、ビームの地理的配置、地上伝送装置が用いる伝送パラメーターなどを全体的に最適化し、従来よりもシステム全体のスループットを大幅に向上させる。
|
研究実績の概要 |
100を超える多ビーム数で地上を照射する衛星と、300を超える地上のユーザー端末などから構成されるマルチビーム衛星通信においてシステム全体を統合する新方式を目指した。そのため、当該年度も前年度に引き続き、通信衛星を用いた大規模な実証実験を行うことなく、システムの有効性を実証し評価できる汎用衛星シミュレーターの開発を継続した。各ビームの周波数帯域は繰り返しビーム数によって一意に決まる。そこで、繰り返しビーム数と各ビームに割り当てる電力を調整できるシミュレータとした。本シミュレータを用いることで各ユーザーのスループットを算出できる。 総電力5[W]、総周波数帯域幅35[MHz]とし、繰り返しビーム数2、総ビーム数8としてシステム全体のスループプットを求めるシミュレーションを実施した。ビーム毎に異なる中心周波数、周波数帯域幅、電力の3つのパラメータを変化させて、最適化手法Adamを用い総スループットが最大となるように1000回の試行により3つのパラメータを最適化した。 その結果、この中で、総スループットが低かった中心周波数の組み合わせは、西日本を覆う5つのビーム7で同一周波数を用いるものであった。一方、スループットが高かった周波数の組み合わせは、いずれも同一周波数を使用するビーム同士が離れているものであった。総ビーム数が8、繰り返しビーム数が2としたとき、合計127通り存在し、隣接するビームで同じ中心周波数を用いるとビーム間干渉が大きくなる。以上より、総スループットに最も大きな影響を与えたパラメータはビーム毎の中心周波数、つまりビーム間干渉であることが明らかとなった。また、総ビーム数が8の中で、最大と最小のスループットの差は1.8倍となっている。ユーザ間のスループットに差が生じるため、各ビームの中に存在する衛星通信ユーザを考慮したパラメーター最適化が必要なことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチビーム衛星通信システムのような大規模な通信システムの実証実験は莫大な費用がかかる。そこで、前年度、および本年度は、あるビーム内のユーザー端末と別のビーム内のユーザー端末または基地局が通信衛星を介して計算機上で模擬的に通信を行い、その上で本研究で提案する技術を評価できる衛星シミュレーターを新たに実現すること目指した。次に、本シミュレーターを用いて、システム全体のパラメーターの最適化を行うことでスループットを最大化する。詳細には、ユーザー端末ごとのアンテナ経、バッテリー量、最大送信電力や、要求される情報速度、エンドツーエンドのパケットエラー率を考慮した上で、伝送装置の変復調方式、誤り訂正符号化方式、送信電力、周波数帯域を制御し、さらに、システム全体のパラメータとしてビーム数、ビームごとの地理的配置・ビーム半径・ビーム送信電力、ビームの繰り返し周波数の数、アンテナの放射パターンなどの最適化を行う必要がある。 当該年度の実績としては、衛星シミュレーターの開発、およびビーム数、ビームごとの地理的配置、ビーム半径、ビーム送信電力、ビームの繰り返し周波数の数、アンテナの放射パターンなどの最適化を行うことができたため、研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点での全ビーム数は8となっているため、まずは100を超える多ビーム数で地上を照射する衛星通信システムを対象としたシミュレーションを実施する。また、各ビームの半径も変えることで、最適化対象のパラメータを増加させ、より一層のスループット向上を行う。衛星シミュレーターに、既存のインターネットプロトコルであるTCP/IPの実装や通信ー地上間の無線伝搬路特性を考慮した実装を追加して行う。そこで、既存のプロトコルシミュレーターに衛星通信技術をモジュール化して組み込む。これにより、ユーザー端末ごとのアンテナ経、バッテリー量、最大送信電力や、要求される情報速度、エンドツーエンドのパケットエラー率を考慮した上で、伝送装置の変復調方式、誤り訂正符号化方式を決定することで、ユーザ端末のパラメータを考慮した最適化を行う。 さらにユーザ端末の伝送方式に衛星通信への適用が未実施であるスペクトラム分割・圧縮伝送の適用を行う。シングルキャリア伝送を用いていたユーザー端末は、新たに、スペクトラ分割伝送で空き帯域の個数に合わせてシングルキャリアのスペクトラムを分割した後で、スペクトラ圧縮伝送で空き帯域の幅にフィットするように分割スペクトラムの周波数帯域幅を狭くする(=圧縮する)。これまで無駄となっていた空き帯域の有効利用が行えるため、周波数利用効率の向上が期待できる。さらに、ビーム間干渉が大きい周波数を避けてスペクトラムの配置を行うことにより、干渉電力の低下による信号品質の向上が期待できる。
|