研究課題/領域番号 |
21K04061
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田野 哲 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (80378835)
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研究分担者 |
上原 一浩 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (10221798)
冨里 繁 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (60362951)
侯 亜飛 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (60598457)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 無線マルチホップ / 晒され端末 / MIMO / プリコーディング / 無線中継 / 無線通信 / マルチホップ / ネットワーク符号化 / 過負荷 / 空間多重 |
研究開始時の研究の概要 |
目的を達成するため「過負荷MIMO空間多重」と「物理層ネットワークコーディング」のアイデアを導入する。過負荷MIMO空間多重とは受信アンテナ数以上の空間多重であり、我々は既に受信アンテナ数の3倍以上の空間多重を低演算量で実現する。一方、さらされ中継機がある無線2ホップネットワークを低演算量で高速化する手法として、送信側信号処理であるプリコーディングを適用した物理層ネットワークコーディングという独自の方法を考案した。本研究では我々独自の線形過負荷MIMO受信に関するアイデアを、我々の物理層ネットワークコーディングにおける中心的な存在であるプリコーディングに応用することで研究目的の達成を図る。
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研究実績の概要 |
第五世代セルラーや無線LANのIEEE 802.11ax 等の研究開発動向からも分かるように、無線ネットワークの高速化・大容量化が止まることを知らない。また、夥しい数のIoTデバイスとインターネットを繋ぐ無線ネットワークの同時接続数は、本格的なIoT時代である次世代には、一桁以上増大させる必要がある。高速化を達成するため、広い連続帯域の割り当てが可能な高周波数帯が次世代の無線通信に割り当てられると想定される。高周波数帯の無線信号は伝送路で大きく減衰する。この問題を緩和する、無線マルチホップネットワークが盛んに検討されている。加えて、IoT社会の実現のため、センサー端末が様々な場所、例えば人が足を踏み入れない場所にも配置される。そのような場所との通信を実現するためにも、無線マルチホップネットワークの適用が検討されている。但し、従来の無線マルチホップネットワークを適用した場合には、ホップ数の増大と共に通信速度が低下する問題がある。この問題を克服するため、送信端末や中継端末に複数アンテナを配置して空間多重を適用することが検討されている。但し、空間多重を適用しても、中継端末や送信端末のアンテナ数が少ないことがボトルネックとなり、通信の速度向上を阻むという問題がある。また、無線ネットワークでは晒され端末・中継端末が容易に生まれ、無線マルチホップネットワーク全体の通信速度を制限するという問題がある。 本研究では無線マルチホップネットワークにおける上記のボトルネックの解消、あるいは緩和のため、まずは中継端末アンテナが少ない場合にも高速通信を達成する方式を提案し、その特性を評価している。本年度は、晒され端末が存在するマルチホップネットワークにおける通信速度向上法を検討すると同時に、一般のマルチホップネットワークにおける空間多重による通信速度改善法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では下記に示すように、当初申請書に記載した事項に関して研究成果が得られている。一部は査読付雑誌や国際会議に発表もしている。即ち、研究の進捗が外部からも評価されている。 1)晒され端末が存在するマルチホップネットワークの通信:複数端末が一つの端末に向かって発呼するとパケット衝突が発生し、マルチホップネットワーク全体のスループットが大幅に劣化する。これが晒され端末問題である。そこで、メッセージパッシングアルゴリズムを適用した検波器を導入することでこの問題の緩和を図った。このマルチホップネットワークのための新しいスケジューリング法を提案した。この提案方式を適用することでダイバーシチ利得が得られるため、通信特性が大幅に改善できることを定量的に示した。 2) 一般のマルチホップネットワークにおける速度向上法:前年度はリング型のマルチホップネットワークを検討したが、今年度は、セルラーネットワークのような6角形型セルをベースとする無線マルチホップネットワークを取り上げ、空間多重に多入力物理層ネットワークコーディンを融合させることで双方向通信の通信速度向上法を検討した。この円チホップネットワークのための新しい多入力ネットワークコーディングを見出した。このネットワークコーディングを適用することで、過負荷MIMO通信を用いなくとも、従来方法に比較して周波数利用効率を5倍にできることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度まで順調に研究が進んでいるため、本年度までの研究成果をさらに発展させ、当初の目標である通信容量10倍の達成を目指す。特に現在までの検討の中でも、受信アンテナよりも送信アンテナが多い場合の特性改善法についてはかなりレベルの高い研究成果が得られている。この知見を利用して、次年度はこの技術のマルチホップネットワークへの導入を検討する。一方、マルチホップネットワークでは中継局アンテナの数が少ない場合でも、上記技術で中継局へは高速通信が可能になる。但し、中継局から送信する場合には、アンテナ数以上に多重された信号を送信するという過負荷通信が必要になる。そこで、中継局アンテナ数以上の空間多重を行う過負荷MIMO通信についても検討を行う。この際に、通信品質を向上させるため、非線形プリコーディングの適用を検討する。即ち、従来より通信容量を5倍にできる無線マルチホップネットワークという前年度までの研究成果に、上記の過負荷MIMO技術を適用することで当初の目標である通信容量10倍以上を狙う。 実際に、これらの技術を適用したマルチホップネットワークの特性を詳細に理論解析する。加えて、このネットワークを計算機上に実装し、シミュレーションにより詳細に評価する。
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