研究課題/領域番号 |
21K04078
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
真鍋 哲也 三重大学, 工学研究科, 教授 (60881175)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | センサ情報伝送 / 光ファイバ振動センサ / マッハツェンダ干渉計 / 光ファイバ干渉計 / 振動センシング |
研究開始時の研究の概要 |
橋梁,トンネル等の社会インフラのヘルスモニタリングの重要性が高まり,有力な候補として光ファイバセンシングによる遠隔モニタリングの取り組みが進められている. 本研究の目的はFTTH実現のために全国に敷設された総延長37万kmにおよぶ光ファイバケーブルを活用し,従来よりも安価なセンサを,従来よりも簡易な施工により設置し,各種インフラをモニタリングするためのセンサ情報伝送技術を開発することである. そのための方法として,各種センサデバイスからの上り信号を振動として光ファイバケーブル外部から与えることで,簡易に施工可能なセンサ情報伝送技術の実現を目指す.
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研究実績の概要 |
今年度は同一光ケーブル中の2本の光ファイバを用いたマッハツェンダ干渉計型の光ファイバ振動センサを用いたセンサデータ伝送方式において周波数ダイバーシティ受信による受信特性の改善についての検討を実施した.また,光ファイバケーブル内に構成されたマッハツェンダ干渉計への振動伝達特性の計測を実施した. マッハツェンダ型光ファイバ振動センサのセンシング用光ファイバと参照用光ファイバの光伝搬時間が変動した場合,受信信号には与えた振動の2倍の周波数だけではなく同じ周波数の振動も含まれる.また,同じ周波数のみ発生し,与えた振動の2倍の周波数の振動が受信信号に含まれない場合もある.この場合には与えた振動の2倍の周波数による復調では受信データを復調できないという問題がある.そこで,受信特性の改善についての検討では,まず,マッハツェンダ型光ファイバ振動センサの2本の光ファイバの光伝搬時間に差がある場合を想定し,受信信号の発生過程をモデル化した.モデルに基づき与えた振動と同じ周波数および2倍の周波数により受信データの復調を2系統で行う周波数ダイバーシティ受信方式を提案した.これにより与えた振動と同じ周波数もしくは2倍の周波数の少なくともどちらか一方の周波数の振動から受信データを復調できるので,光伝搬時間差に変化が発生する場合においても常に受信データの復調が可能なデータ伝送を実現した.これらの結果については2023年11月開催の国際会議に投稿予定である. 光ケーブル内に構成されたマッハツェンダ干渉計への振動伝達特性の検討では,マッハツェンダ干渉計より得られる干渉波形が第一種ベッセル関数で級数展開できることに着目し,光ファイバケーブル外部に与えられた振動加速度と伝搬する光の位相変化との関係を表す非線形方程式を見出した.実験により光ケーブル種別の違いにより振動伝達特性が異なることを示し,国内学会にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,以下の3項目についての検討を計画し,提案方式の基本検討およびフィージビリティ確認のための実験を進めた. Ⅰ.光ファイバケーブルを安価なセンサ情報伝送路とするための複数の光ファイバを用いた簡易な干渉計による振動検知方法: 簡易な振動検知方法として2本の光ファイバを用いたマッハツェンダ干渉計による光ファイバ振動センサを構築し光ケーブル外部からの振動が検出可能かどうか検証した.また,光ファイバケーブル外部に与えられる加速度と光ファイバケーブル内部の光ファイバ中を伝搬する光の位相変化の関係を振動伝達特性として簡易に計測する手法を提案し光ファイバケーブルの構造の違いによる振動伝達特性の違いを実験により確認した. II.効率的にセンサ情報を伝送するための,光ファイバケーブル外皮に与える振動と簡易な干渉系により観測される干渉波形の関係のモデル化による伝送信号の最適な加振波形への変換方法: 効率的にセンサ情報を伝送するための変復調方式の検討では,マッハツェンダ干渉計の2本の光ファイバに伝搬時刻差がある場合について検討した.新たに得られたモデルより周波数ダイバーシティDPSK変復調方式を提案し,受信特性の改善を実験により確認した. III.非同期で動作する複数センサの最適な同時通信方法: 多重伝送の可能性を探る初期検討として,これまでに直接拡散方式のスペクトル拡散通信を検討し,オフライン処理での2チャンネル,3ビット/秒の情報伝送を実現した.今年度はリアルタイム信号処理可能な情報伝送実験系を構築し同程度の情報伝送が可能であることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,提案方式の初期検討を実施し,その実現可能性および有用性を確認した.今後は実際のセンサデータ伝送に向けた情報伝送速度の向上および多重度の向上を目指して以下の取組を強化する. 情報伝送速度および多重度の向上のためには搬送波周波数を大きくするとともにBER特性を改善させる必要がある.搬送周波数を大きくするためにはより効率的に変調振動を光ファイバケーブル外部から内部の光ファイバに伝搬させなければいけない.しかしながら,光ファイバケーブルの振動伝搬特性が明確でないので,ファイバケーブル外部に与える振動と光ファイバが受ける振動の伝達特性の明確化に向けてさらなる特性計測実験に取り組む.その上で,センサ情報伝送に適した加振方法および周波数を実現するための超音波振動制御等の高速変調技術に取り組む予定である. BER特性を改善させる方法として今年度は2つの周波数による周波数ダイバーシティ受信による変復調方式を考案した.今後は3つ以上の周波数にも着目しさらなる受信特性改善が図られるか検証を行う.また,BER特性と加振により与えられる搬送波周波数の関係を明らかにし,スペクトル拡散方式における最適なチップレートおよび拡散符号長を明らかにし,実験によりその有効性を確認する.
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