研究課題/領域番号 |
21K04092
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高山 潤也 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (50323796)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | マイクロ波レーダ / 非破壊検査 / 逆問題 / 非線形信号処理 / 構造物内部異常 / 学習型信号処理 |
研究開始時の研究の概要 |
コンクリート構造物の劣化に関する緻密な検査技術は未確立であり,そのための技術のひとつであるマイクロ波レーダ法を基盤とする「コンクリート構造物の内部異常の検査技術」の確立が本研究の目的である. 具体的には,画像化処理を介さない「逆問題的推定手法による直接的な内部構造推定の実現」,「漸進学習による継続的推定精度の向上」を基盤として,新たな信号処理技術により観測波形中の未活用情報を抽出し,マイクロ波伝播モデルと組み合わせて「内部構造の諸性状の高精度定量推定」=「鉄筋・配管の径識別」・「空隙の位置・形状同定」および「金属・樹脂・空隙の弁別」を実現するものである.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は「マイクロ波レーダ法によるコンクリート構造物内部異常の検査技術を確立」し,「劣化を端緒としたコンクリート構造物事故の未然防止」を図る解決手段を構築することにある.マイクロ波レーダ法はコンクリート構造物検査技術のひとつとして浸透しているが,観測情報が十分に活用されず,精度が不十分である.そこで新たな信号処理技術を提案して観測波形中の未活用情報を抽出し,そこへ新しく構築するマイクロ波伝播モデルを組み合わせ,「内部構造の諸性状の高精度定量推定」=「鉄筋・配管の径識別」・「空隙の位置・形状同定」および「金属・樹脂・空隙の弁別」・「錆度評価」を実現する. 研究2年目について,既に検討を進めてきた「媒質ごとのマイクロ波の減衰・透過・散乱の挙動」,「アンテナ放射の指向特性」および「周波数特性」を考慮に入れ,「波形包含情報の活用のための技術の高精度化」を試みた. 具体的には,「マイクロ波伝播モデルの緻密化に基づく,反射波の伝播時間・位相変化同時推定法の高精度化」を推進した.マイクロ波伝播モデルについては,これまで正反射波成分のみが考慮されてきたが,実観測波形とは整合しなかった.そこで新たに散乱反射成分を積極的に考慮し,伝播モデルの緻密化を図った.ここでは有限差分時間領域(FDTD)法を用いてシミュレーション的に検討を進め,マイクロ波の減衰・透過・散乱特性として電気的特性境界面での挙動に関するモデル化し,さらにマイクロ波伝播モデルに組み込むことで緻密化を図り,実観測波形と整合するモデルが構築できた.さらに,構築したモデルに基づく反射マイクロ波形状を利用して,埋設物からの反射波の伝播時間評価精度を高めるための方法論について検討を進めた.波形形状の相関を評価する方法を提案することで,伝播時間推定精度を従来に比較して2倍程度まで高めることが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,コンクリート内部構造に関する諸性状を誰もが「容易」に「高精度定量推定」できる検査技術の実現を,1.波形包含情報の活用のための基盤技術構築 ⇒ 信号処理技術と伝播モデルの完成,2.異常部位の定量推定技術の構築 ⇒ 逆問題的手法に基づく性状推定,3.漸進学習型信号処理機能の実現 ⇒ 学習・更新による推定精度の向上をサブ課題として,基盤技術構築とその発展的応用により達成する計画としていた. 初年度について,「波形包含情報の活用のための基盤技術構築」に関する原理的な検討については概ね計画通りの進捗であった.その結果を以って論文と学会発表を行ったものの,一方でその検討結果より,マイクロ波の伝播特性のモデル化には,研究当初に想定していたよりもはるかに複雑な現象の考慮,すなわちモデル化が必要であることが明らかになった.そこで研究2年目では,サブ課題2へ進むよりもサブ課題1の精度をより高めてからサブ課題2へ進むことを決断して検討を進めた.結果として,マイクロ波伝播時間の推定精度をさらに高めることに成功し,研究の進捗にはやや遅れをともなったものの,推定の高精度化という目標に沿った結果を得るに至っている.また初年度同様に,行動制限などの影響もあって実験的検討についても当初予定通りには実施できなかった.次年度については,サブ課題2について積極的に検討を進め,進捗巻き返しを図る計画である.
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目当初には,ここまでに不足していた実験的検討をまず初めに実施する予定であり,そのうえでサブ課題2「コンクリート構造物内の異常部位の定量推定技術の構築」に着手する. 具体的には,遅れていた実験装置のアップデートがメーカにより予定されており,これによって実験評価のペースが向上できることが期待されるので,これまで以上に検証ペースの向上が図れるものと考えている.さらにここまでに得た基盤技術:「反射波の伝播時間・位相変化評価技術」と「散乱特性を考慮したマイクロ波伝播モデル」を発展的に融合し,伝播時間・位相変化評価と伝播経路推定を交互に繰り返して,相互補間的に推定精度を向上させる新たな信号処理の方法論を構築する.上記検討と並行して,推定法へ学習機能を付与することで,継続的に推定性能の向上を図るための機能も実装していく計画である.
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