研究課題/領域番号 |
21K04097
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
関 篤志 創価大学, 理工学部, 教授 (70226629)
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研究分担者 |
渡辺 一弘 創価大学, 理工学部, 教授 (40240478)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 水素センサ / 酸化タングステン微粒子 / 白金ナノ粒子 / ヘテロコア光ファイバ / 低温調製 / 酸素センサ / 酸化タングステン / ナノ粒子 / 近接場光学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では水素と結合することにより変色する酸化タングステンナノ粒子と,これと水素の結合・解離反応を触媒する白金ナノ粒子をヘテロコア光ファイバ表面に固定化することにより水素センサを作製する. 酸化タングステンナノ粒子はタングステン酸ナトリウムを陽イオン交換樹脂で処理することにより調製する.また白金ナノ粒子は塩化白金酸をクエン酸で還元することにより調製する.調製したナノ粒子をヘテロコア光ファイバ表面に固定化し,水素による酸化タングステンナノ粒子の変色をセンサ部近傍で生じるエバネッセント波を用いて検出し,これを伝搬光スペクトル変化として捉える光学的センサを開発し,その特性を検討する.
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研究実績の概要 |
表面に負電荷を帯びているタングステン酸微粒子(WO3μP)懸濁液と白金ナノ粒子(PtNP)懸濁液を混合し,ここに表面をアミノ化したヘテロコア光ファイバを浸した.静電相互作用により両微粒子が固定化された微粒子層部分をポリカチオン水溶液に浸すことにより,微粒子層表面にポリカチオン層を形成した.この操作を繰り返すことにより,ヘテロコア光ファイバ表面に微粒子層とポリカチオン層が交互に積層された膜を形成することにより水素センサを作製した. この水素センサをガラス容器中に置き,4%水素または空気を導入したときの伝搬光スペクトルを測定した.さらに4%水素から空気へ切り替えたときの応答特性についても検討した. 微粒子層-ポリカチオン層の積層数が増加するにしたがって広い波長範囲で伝搬光強度は減少した.これはヘテロコア部に発生するエバネッセント波がWO3μPに吸収されたため,反射光強度が減少し,それにともない伝搬光強度が減少したためと考えられる.積層数が増加するにつれて膜厚とWO3μPの密度が増加するため,吸収されるエバネッセント波も増えるため,伝搬光強度が減少したと考えられる.4%水素雰囲気下および空気雰囲気下における伝搬光スペクトルを測定したところ,4%水素のほうが空気雰囲気下より伝搬光強度は増加した.水素雰囲気下においてWO3は水素と結合して濃青色のタングステンブロンズ(H2WO3)となる.水素雰囲気下における伝搬光強度の増加は,タングステンブロンズによるエバネッセント波の吸収がWO3によるものより小さいため,水素雰囲気下では空気雰囲気下より反射光強度が増加するため,伝搬光強度も増加したと考えられる. また積層数が増加するにしたがって,水素雰囲気下と気雰囲気下における伝搬光強度の差異は大きくなることが示された.すなわち,積層数の増加により高感度化が達成できることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は,ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドを用いてタングステン酸微粒子(WO3μP)と白金ナノ粒子(PtNP)から成る混合粒子層をヘテロコア光ファイバ表面に3次元的にアッセンブルした積層構造を構築した水素センサを作製して特性を検討したところ,積層数が増加するにしたがって応答強度が増加することが示された.また,令和3年度に行う予定であった走査型電子顕微鏡によるWO3μP,PtNPおよびこれらが固定化されたセンサ表面の観察を行った. WO3μPとPtNPの混合比がセンサ特性に及ぼす影響についは検討できていないので,計画していた全体としてはわずかながら遅れていると言える.一方,WO3μPのみを積層した後にPtNP層を1層形成した場合も水素に対して応答することを見出したことにより,ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドは単にWO3μPを積層するだけでなくPtNPにより生じた水素原子のWO3μPへの伝搬に重要な役割を果たしていることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
前年度は水素感受性膜の積層数の増加とともに応答強度が増加することを明らかにした.このことは,水素分子がポリカチオン層を拡散してPtNPにより原子となり隣接するWO3μPと結合する,または生成した原子がポリカチオン層を伝導して他の層のWO3μPと結合することが考えられる.すなわちセンサの応答特性にポリカチオンの性質が関係することを示唆している.そこでポリカチオンとしてポリアリルアミン,ポリクオタニウムなどを用いて,WO3μP-PtNP混合層をヘテロコア光ファイバ表面に積層し,ポリカチオンが水素センサの特性に及ぼす影響について検討する. 続いて,WO3μP-PtNP混合層におけるPtNP量が水素センサ特性に及ぼす影響について検討する.すなわち,PtNP密度を変化させたWO3μP-PtNP混合懸濁液にヘテロコア光ファイバを浸漬することによりPtNP密度が異なるWO3μP-PtNP混合層を形成したセンサを作製し,特性を検討する.これにより,高感度な測定を達成できるWO3μPとPtNPの最適な比率を決定する.さらに至適な混合比において,積層数が感度および応答速度に及ぼす影響を検討する. さらにポリカチオン層を介してWO3μP層とPtNP層を交互にヘテロコア光ファイバ表面に積層し,水素センサとしての特性を評価する.水素原子がポリカチオン層を伝導する場合は,PtNPのみから成る密度が高い層で水素原子を効率的に生成させ,この水素原子が拡散してWO3μPのみから成る密度が高い層でタングステンブロンズが生成することにより高感度な水素測定が達成できると考えられる.
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