研究課題/領域番号 |
21K04103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
長田 洋 岩手大学, 理工学部, 教授 (10261463)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 制御 / 恒温植物 / ザゼンソウ / 生物模倣 |
研究開始時の研究の概要 |
ザゼンソウと呼ばれる植物は,前年の夏に蓄えた限られたエネルギー源を用いて,早春の厳しい寒暖差の中で自ら発熱し,生殖器官の温度を一定に保ち子孫を残している。 本研究は,このような限られたリソースにより効率的な制御を行うザゼンソウの発熱制御機構を工学的に解析し,その省エネルギー特性を提供する原理(メカニズム)を解明することを目的としている。 本研究では,ザゼンソウの地中器官が,その発熱制御機構に及ぼす影響の調査・解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,ザゼンソウの地中器官が,その発熱制御機構に及ぼす影響の調査とその機能の解明である。ザゼンソウの肉穂花序が動物に匹敵するエネルギー密度で発熱できるのは,球茎に蓄えたエネルギー源である糖を効率的に利用しているからであり,その様子は茎を流れる流水量を正確に計測することにより,よりよく知ることができると考えられる。 2023年度は,ザゼンソウ専用茎内流水量計測システムの完成を目指し,そのハードウェアと制御ソフトウェアの開発に取り組んだ。ハードウェアとしては,熱収支法に加えて,Heat Pulse法やHeat Ratio法の可能性を探るため,同一センサ群で全ての方式に必要なデータを計測できるセンサ設置を検討した。また,ソフトウェアとしては,前述の全ての方式でリアルタイム計測が実施できる,同時に水温制御も行えるプログラムを構築した。なお,実験効率の向上を目指し,メモリハイロガー,ウォータクーラー,アクリル水槽などを追加購入し,既存の恒温恒湿槽と組み合わせ,計測システム一式を追加構築した。 また,2024年3月から4月にかけて,ザゼンソウ群生地より開花中の生体を採取し,開発中の流水量計測システムにて,周囲温度と球茎部の温度を独立に制御した場合の応答特性等を計測した。一部の個体でわずかに発熱制御している期間が確認できた。明確な恒温制御と確認できるほどの期間で発熱制御している個体は取得できなかったが,得られたデータは今後様々な手法により評価・解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,2023年度2月までにザゼンソウ専用茎内流水量計測システムの完成を予定していた。熱収支法では現実的に測定不能なパラメータである係数kを含まない流量式とするための取り組みにはある程度成功したものの,満足できるほどの精度での特性を得ることができなかった。そのため,2023年度は,熱収支法に加えて,Heat Pulse法やHeat Ratio法の可能性に関して検討を行った。生体を採取できない期間,3Dプリンタで作製したアクリル製ザゼンソウ茎モデルに対して,これらの計測方法の可能性を実験的に検証したところ,同じ計測システムを利用しながら,流量の大きさで各手法を使い分けることにより,広いダイナミックレンジをカバーできることを確認できた。 改良した計測システムを用い,また,実験セットを2セットとし,2023年3月に採取したザゼンソウ8個体に対して茎内流量計測を実施した。なお,8個体中2個体で発熱制御期間が確認された。現在,計測データを解析中であるが,得られたデータのノイズレベルは依然として無視できるほど低くはなく,計測システムのもう一段の改善が必要であると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
現在~2025年2月まで:本年3月に得られた計測データを解析するとともに,データザゼンソウ専用茎内流水量計測システムのノイズレベルの改善方法の検討を行う。 得られたデータはノイズレベルが高いものの,発熱制御期間を含むものであった。様々なフィルタやAIなどによるノイズ除去を行い,特徴の抽出を試みる。 また,ノイズレベルの改善を目指し,熱源のハードウェアおよびソフトウェアの最適化を行う。茎に直接印加する方式のため,過度な熱量による生体への影響を考慮しつつ,最大の熱量を印加できる方法を再検討する。例えば,ハードウェア的には,現在の抵抗体による加熱方法以外に,誘電加熱法の可能性も検討したい。また,ソフトウェア的には,現在のPWM(パルス幅変調)方式に加えて,PAM(パルス振幅変調)の適用も試みる。 2025年3月:改良したゼンソウ専用茎内流水量計測システムを用いて,恒温制御期間中のザゼンソウを採取し,様々な周囲温度や湿度などの下でその茎内流水量がどのように変化するのか/しないのかを観測する。2025年4月以降:より信頼性の高い実験結果に基づき,ザゼンソウの地中器官が,その発熱制御機構に及ぼす影響の調査とその機能の解明を目指したい。 これらの研究から得られた知見は,随時国内外の学会で報告し,適切なアドバイスを頂戴する。
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