研究課題/領域番号 |
21K04118
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
陶山 貢市 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80226612)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 制御システム / メンテナンス / 安全性 / フェイルソフト |
研究開始時の研究の概要 |
多くの工業製品・生産現場の制御システムでは、通常の稼動状態とメンテナンス環境との間の移行は現場技術者の経験に頼っており、プロセス産業でメンテナンス時に事故が発生しやすい原因となっている。本研究では、維持されている一定の機能によりシステムを安全な方向に誘導するフェイルソフトの考え方に基づいて、稼働状態の移行過程の安全設計手法、及びそれを組み込んだメンテナンス支援技術を確立する。さらに、将来、国際規格に反映させることを視野に入れる。日本の工業製品・プラントにメンテナンスのしやすさという新たな価値を加え、製造物責任や国際規格上、国際競争力を向上させる一助となろう。
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研究実績の概要 |
製造物責任や国際規格上、製造者は製品の適切なメンテナンス手法を使用者に告知する義務を負っている。しかし、国際規格では部品交換などの必須作業が列挙されているだけで、それらの作業を実施するための環境と通常の稼動状態との間の移行に関しては何も記載されていない。そのような稼働状態の移行は現場技術者の経験に頼っていることが多く、特にプロセス産業ではメンテナンス時に事故が発生する原因となっている。本研究では、工業製品・生産現場の制御システムのメンテナンス開始前及び終了後の稼働状態の移行に関して、メンテナンス対象部分のアクチュエータ出力を段階的に変化させつつ、各段階で残されている機能によって終着点に徐々に近付けていく「フェイルソフト」の考え方に基づいて、移行過程の安全設計手法を確立し、さらにそれを組み込んだメンテナンス支援技術を世界に先駆けて確立して、将来、国際規格に反映させることを目的とする。 令和4年度においては、第1の雑誌論文により、移行のなめらかさをその大きさ・過酷さの評価に反映する切替L2ゲインを導入し、より現実的な安全性評価の可能性を探求した。 また、第2の雑誌論文により、移行過程の各段階における信頼性評価をより実際的かつ国際規格に準拠した形に整備した。これは安全性評価の改良の可能性として重要である。 出発点と終着点の間に複数の中間的な稼働状態が存在する多段階の移行について、その大きさ・過酷さをトータルとして評価する切替L2ゲインを導入し、LMI条件で求められるその上限値を評価指標とすることで、多段階移行のトータルとしての大きさ・過酷さを小さくするような、途中の稼働状態を実現する制御器の初期値決定法を確立した。また、それを組み込むことで、移行過程の安全設計手法を確立した。これらの研究成果は、令和5年度以降に雑誌論文で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出発点及び終着点の稼働状態を実現する制御器の設計法を確立した。また、出発点と終着点の間に複数の中間的な稼働状態が存在する場合、出発点から終着点までの多段階移行の大きさ・過酷さをトータルとして評価する切替L2ゲインを導入し、実用上重要なその上限値の性質を明らかにすることができた。さらに、それを評価指標とすることで、途中の稼働状態を実現する制御器の初期値決定法を確立した。また、その初期値決定法を組み込むことで、本研究で確立する移行過程の安全設計手法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
すでに確立した移行過程の安全設計手法をメンテナンス支援技術の形に整備する。また、それをソフトウエアの形で具現化し、さらに数値シミュレーションにより、その有効性を確認する予定である。また、第1、第2の雑誌論文により明らかにした改良の可能性については、継続して理論面から検討する。なお、得られた成果は随時発表する。
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