研究課題/領域番号 |
21K04124
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
池田 建司 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (80232180)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
キーワード | 部分空間同定法 / 閉ループ同定 / 半正定値計画問題 / 最良線形不偏推定量 / 周波数領域での不確かさ / 雑音共分散行列 / 正準相関解析 / 共分散 / 漸近バイアス |
研究開始時の研究の概要 |
計算量や数値的安定性を考慮した上で,閉ループ部分空間同定法の中で最先端と言われるPBSID 法に匹敵する,あるいは,より推定精度のよい新しい手法の開発を目指す。そのために,既存手法や提案手法の誤差解析を行い,それに基づき,重み行列などの設計パラメータの決定方法,不安定システムの同定への対応などを行っていく。最終的には,推定されたパラメータの精度保証付き同定法の提案を目指す。
|
研究実績の概要 |
初年度(2021年度)には、閉ループ環境における雑音共分散行列の推定のための半正定値計画(SDP, semi-definite programming)問題を定式化した。また、CCA重み行列を導入した提案法は、現在最先端と言われるPBSID (prodictor-based system identification) 法と同等、あるいは、それ以上の性能を持つ可能性があることを数値的に示した。2022年度前半にかけては、提案している雑音共分散行列推定問題と等価な制約付き最小二乗問題を導出し、さらに、その問題に対する最良線形不偏推定量(BLUE, best linear unbiased estimate)を導出した。導出された BLUE の標本共分散行列の大きさと提案法における推定値のそれとを数値的に比較することによって、提案法はBLUEとほぼ同等の性能を持つことがわかった。 2022年度の後半では、推定パラメータの誤差解析、および、分散解析に取り組んだ。当基盤研究(C)の研究目的である精度保証付き閉ループ部分空間同定法の開発の中核となる課題である。拡大可観測性行列の不確かさの解析では、gapに基づく誤差解析(基盤研究(C)課題番号15K06146)を応用した。推定値の不確かさは雑音の大きさに依存するため、求めた雑音共分散行列から、推定されたシステム行列の共分散行列を推定する方法を提案した。また、その結果をもとに周波数領域での不確かさを推定し、Bode線図上で提示する方法を提案した。提案したシステム行列の共分散行列や周波数領域での不確かさは、一組の入出力データから計算可能であり、多数の同定結果から求める標本共分散行列のように何組もの入出力データは必要ない。同定の際に、推定されたシステム行列と共にその不確かさを提供することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、精度保証付き閉ループ部分空間同定法の提案とその特性解析を行うことを目的としている。雑音共分散行列の推定手法の閉ループ同定への拡張は2021年度に実施済みである。 また、設計パラメータである重み行列としてCCA重み行列を導し、推定値の標本共分散を数値的に解析した。提案法により推定したシステム行列の標本共分散は、PBSID (prodictor-based system identification) 法や等価な問題のBLUE (best linear unbiased estimate)における標本共分散と数値的に比較することにより、ほぼ十分精度が良いことがわかった。しかしながら、最適性の理論的な解析はまだ十分ではない。 2022年度後半には、2021年度に実施予定であった推定パラメータの誤差解析、および、分散解析に取り組み、推定されたシステム行列の共分散行列の公式を導出した。また、その結果をもとに周波数領域での不確かさを推定し、Bode線図上で提示する方法を提案した。提案したシステム行列の共分散行列や周波数領域での不確かさは、一組の入出力データから計算可能であり、多数の同定結果から求める標本共分散行列のように何組もの入出力データは必要ない。同定の際に、推定されたシステム行列と共にその不確かさを提供することが可能となった。これにより、本研究の最終的な目的の一つである、精度保証付き部分空間同定法の実現に一歩近づいた。 これで、2022年度までに実施予定であった課題はほぼ達成できたことになる。しかしながら、提案された推定値の共分散行列には、まだ、標本共分散行列との間に差があり、この原因を明らかにする必要がある。また、提案法の最小分散性に関する理論的な解析はまだ、達成できていない。これらは、今後の課題である。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、2022年度までにやり残した、提案手法の最適性に関する理論的解析に挑戦する。本研究における派生的な結果であるBLUEは、最小分散性が保証された手法であるため、提案手法の分散はBLUEのそれより小さくすることはできない。しかしながら、提案法における推定パラメータの標本共分散行列の大きさはBLUEのそれと比べてほとんど差がわからない範囲であり、理論的な共分散行列もBLUEのそれに迫る大きさである。また、BLUEの問題のサイズは提案法のそれに比べて非常に大きく、設計パラメータの自由度も提案法に比べて非常に大きい。一方、BLUEは問題のサイズが大きくなることで数値的条件数が悪化し数値的に不安定になる恐れがある。設計パラメータの自由度を提案法のものに限定した場合の提案法の最適性について理論的・数値的に考察していく予定である。また、当初の2023年度実施予定であった、不安定システムへの拡張についても実施する。同定対象が不安定の場合、設計パラメータである future horizon を大きくしてデータ行列のサイズを大きくしていくと、特異値分解する Toeplitz 行列の要素は左下へ行くにしたがって指数的に大きくなるため、数値的に不安定になる可能性がある。現在のところ、対象のA行列の固有値が単位円に近い場合は、不安定なシステムでも問題なく次数を推定できている。2023年度は、固有値が単位円から遠い場合についての数値的な解析から始める予定である。2022年度に行った推定パラメータの共分散解析とそれに基づく周波数領域での不確かさの推定では、標本共分散行列との間にズレが生じている。この原因を調査し、ズレのない共分散や不確かさの推定値を提案する。
|