研究課題/領域番号 |
21K04127
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
児島 晃 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (80234756)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 区間むだ時間系 / H∞制御 / 線形パラメータ変動システム / ロバスト制御 / スマートグリッド |
研究開始時の研究の概要 |
むだ時間系とは,信号の伝達に遅延を伴う動的なシステムであり,化学プロセス,人間・機械系など,工学分野の広がりとともに多彩な制御問題が出現した対象である.そして近年では,操作者の応答,スマートグリッドにおける需要家の応答など,多様な特性をもつむだ時間系を適切に評価して,ロバスト(頑強)なシステム制御系を構成することが求められている.本研究では,一定区間のむだ時間変化を想定したシステム表現に基づき,制御系のロバスト性をH∞制御性能により評価する方法を新たに開発する.そして,結果を制御則の設計法に発展させ,それらの有用性を,機械システムの制御,スマートグリッドの需給制御を通じて評価する.
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研究実績の概要 |
区間むだ時間系のロバスト安定解析は,制御系の基本的な性能を評価するために有用であり,これまでの研究により,一種類の区間むだ時間を有する系に対してH∞制御性能の解析法(必要十分条件)が導かれていた.本年度の研究により,[A] 解析可能な対象の一般化,[B] スマートグリッドの制御と他分野への展開について,以下の結果を得た. [A] 解析可能な対象の一般化:初年度に得た基本的な成果を発展させ,複数の独立な区間むだ時間を有する系に対して,保証されるH∞制御性能がパラメータ依存のLMI(線形行列不等式)条件により特徴づけられることが示された(必要十分条件).当初,計算量の視点から本対象への展開が難しいと予想されたが,領域分割を用いた探索法を適切に定めることにより,真値への収束が保証される計算アルゴリズムが導かれた.また,整数比むだ時間をもつ系の解析法を示し,現時点では十分条件が同様の計算から調べられることを明らかにした. [B] スマートグリッドの制御と他分野への展開:アシスト型のLFC(負荷制御問題)に着目し,蓄電池系で補償する変化速度制約および蓄電量の回復速度と系全体の安定性の関係をH∞制御性能の視点から特徴づける方法を導いた.これらの結果から,さらにデマンドレスポンスなど多様な応答をもつエージェント群と系の安定性の関係を,提案法[A]により解析する方法が整った.また,LFCの負荷変動と制御ゲインの関係をスケジューリングする検討を行い,出力フィードバック則をLMIの逐次最適化により求める方法を導いた.これらの手法を提案法[A]に適用することにより,対象を構成するゲインと性能の調整を扱うことが可能になると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に得た理論的な知見が発展し,広範な区間むだ時間系に対して統一した解析法の導出が可能になった.これらの状況を踏まえ2024年度には対象の範囲を広げて,理論的な成果を整備する.また,応用課題においては,スマートグリッドのアシスト型負荷周波数制御において応答の多様性を考慮した制御系の設計問題を扱う基礎が整った.
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた結果に基づいて,以下の課題に取り組む. [A] 2023年度の理論的な成果により,提案法が複数むだ時間,整数比むだ時間を有する系などに広く適用できることが明らかになった.これらの知見に基づいて,整数比むだ時間を有する系における解析条件(必要十分条件)を示し,また2021年度から計画している中立型むだ時間系における理論の一般化を完了させる. [B] アシスト型のLFC(負荷周波数制御)問題に着目し,変化速度制約と蓄電池系の回復速度を考慮した制御系の性能解析を行う.そして,システム構成の類似性に着目することにより,多様な応答特性をもつ需要家群を想定した系の安定条件を,応答遅延とロバスト安定性の関係から考察する.
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