研究課題/領域番号 |
21K04135
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
塩島 謙次 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (70432151)
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研究分担者 |
橋本 明弘 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (10251985)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 電極 / 界面顕微光応答法 / 2次元評価 / ワイドバンドギャップ半導体 / 2次元評価 / 金属/半導体界面 |
研究開始時の研究の概要 |
我々が独自に開発した金属/半導体界面の2次元評価法(界面顕微光応答法)をワイドバンドギャップ半導体上に形成した電極の電流輸送機構の解明に適応できることの実証が目的である。(i)エネルギー障壁の高い整流性を示す電極だけでなく低障壁で低抵抗なオーミック電極に対して低温での測定が行えるよう装置の改造。(ii)GaN,SiC、及び酸化物半導体上の電極に熱処理でオーミック電極が形成される過程を本手法で2次元評価することにより、界面の電気的特性と半導体表面近傍の結晶性を結びつけた形で物性を明らかにする。(iii)各種表面処理や電極金属の違い、電界印加下での特性評価、グラフェン層の介在の効果も検証する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では我々が独自に開発した金属/半導体(M/S)界面の2次元評価法(界面顕微光応答法)をワイドバンドギャップ半導体上に形成した電極の電流輸送機構の解明に適応できることの実証が目的である。これまではショットキーM/S界面の2次元評価を室温で行ってきたが、低障壁で低抵抗なオーミック電極に対して低温での測定が行えるよう装置を改造し、低ノイズで高感度な光電流検出を提案している。また高電界印加での測定も試みる。 R3年度は液体窒素温度から673Kまで温度可変が可能なステージを使用する第一段階として、内部光電子放出測定(photoresponse: PR)装置との接続、光学系、機機械系、および測定ソフトの改造を行なった。高精度半導体パラメータアナライザーの導入により、温度可変ステージで100Kまで0.1nA以下の低リーク電流を実現した。ステージの低温運転では、プリベークの実施、ビューポートへの窒素ガスの吹き付けにより、100Kまでビューポートの曇りはなく、長時間運転が可能であることを確認した。試料構造に関しては、従来、厚さ100 nm以上の光を通さない厚膜電極を用いてM/S界面に半導体側から単色光を照射(バックイルミネーション)していたが、本検討では温調機能を優先するため電極側から単色光を照射する(フロントイルミネーション)ことが必要である。そこで、光が透過する薄膜Au/Ni電極を堆積し、フロントイルミネーションPR測定を行った。厚膜試料と同様なPRスペクトルを広い温度範囲で確認し、障壁高さはI-V特性の結果と一致した。本検討での最大の課題であったフロントイルミネーションでの実験成功は、大きな前進であった。 R4年度は更なる電極の薄層化を進めると共に、バックイルミネーションでの界面顕微光応答測定を行い、温度可変測定の影響がどのように2次元評価に現れるかを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電極の薄層化を進めるため、超薄膜Au(厚さ5 nm)/Ni(厚さ10 nm)ショットキー電極をn-GaNエピタキシャル層上に堆積し、 100-370Kの温度範囲でI-V、C-V、PR測定を行った。I-V特性では原理上温度可変の影響は大きく、障壁高さは0.3から0.9 eVに変化した。C-V、バックイルミネーションPR、フロントイルミネーションPR特性ではその影響は少なく、それぞれ1.1 、1.0、0.9 eV程度の障壁高さが得られた。光の透過率が高い超薄膜電極でも良好な特性が幅広い温度範囲で確認できた。 次にバックイルミネーション界面顕微光応答を行い温度可変測定が超薄膜電極試料に与える影響を検証した。未測定の場合、光電流の2次元像は均一であり、超薄膜電極が良好に作製されていることを確認した。しかし、温度可変測定後の2次元像ではプローバー先端の接触による傷跡や、結露により電極表面に発生した汚れの痕跡が観察され均一性が劣化することが判明した。このような厚膜電極では発生しなかった現象に対して、来年度は対処を行う計画である。 学会発表として、高温高圧アニールしたn-GaN表面の2次元評価、電極エッジの形状と耐圧との相関に関する結果で、国際学会オーラル発表として採択された。さらに、これまでの本手法を用いた研究成果が評価され、日本材料学会主催の研究会で招待講演の栄誉を得た。また、我々のロックイン検波技術を用いたPR・フォトコンダクティビティー測定のオリジナリティーが認められ、ADMETA2022国際学会でポスターアワードを受賞した。このように本年度の成果は本研究課題の主要な部分を実証するものであり、十分な進捗があったものだと考える。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度の計画は本研究の最終目標であるフロントイルミネーション界面顕微光応答法による2次元観察に注力する。装置の改良については、フロントイルミネーションPR測定の場合と異なりフロントイルミネーション界面顕微光応答測定の場合は温度可変ステージをひっくり返してマウントする必要があり、サンプルの安定した固定や現物のサンプルを乗せた状態でピントやレーザの位置を合わせる機構を検討する。試料の結露対策強化として、液体窒素の気化ガスを再利用するのではなく、高純度窒素ガスをボンベから直接導入する機構を検討する。 評価材料については、近年オーミック電極の形成メカニズムが注目されている高ドープp形SiCに対して均一性の評価、熱処理実験(1000度C程度まで)を行う予定である。また、オーミック電極形成が困難とされているエネルギーバンドギャップが非常に大きいAlN、高Al組成AlGaNに対しても同様な実験を行い、オーミック形成メカニズムの解明を試みる。この結果は高耐圧化を目指すAlGaN系高電子移動度電界効果トランジスタに開発に役立つものである。さらに並行して、高温高圧アニールしたn-GaN表面の2次元評価、電極に高電界印加(外部印加電圧300Vまで)を印加する測定も引き続き実施する。 これらの検討は学術的にも価値ある結果が生み出されると考えられるので、学会発表(SSDM、応用物理学会、電子情報通信学会研究会)、論文執筆(JJAP)を積極的に行う予定である。
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