研究課題/領域番号 |
21K04153
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊東 栄次 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (50303441)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 量子ドット / 発光ポリマー / ポリビニルカルバゾール: PVCz / PMMA / 全塗布型発光素子 / 酸化物ナノシート / ナノ粒子 / 逆構造型有機EL / グラフェン |
研究開始時の研究の概要 |
コロイド状の化合物半導体の量子ドット(QD)は溶液プロセスから製膜可能で有機EL材料よりも色純度に優れる。QD-LEDの実用化において、QDの高密度化の際の非発光性粒子へのエネルギー移動による発光強度低下や、QDへの正孔注入やキャリア輸送、ワイドスペクトル化、コストなど課題も多い。 本研究では、上下に極薄のn型酸化物ナノシートとグラフェン系 (p型)2次元物質の平坦なキャリア注入層と有機半導体を配置して特性を向上する。またQDと有機発光ポリマー間の相補的なキャリア注入・輸送現象や励起子の生成と移動による発光効率の増強作用(協同作用)を用いてハイブリッド発光ダイオードの創製と高性能化を目指す。
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研究実績の概要 |
2021年度までの研究成果において、量子ドットとポリマーブレンド層からなる発光層の厚さの性能の関係から発光層が薄い(20nm)以下の場合に電子バッファー層として用いたZnO界面で励起子消光が生じることが示唆された。一方で、量子ドットは少量でも高額である点と溶解性が低いことから従来のスピンコート法では30-50 nmの厚さを得ることが困難であると同時に、塗布時に9割以上を飛散しロスするため生産性にも重大な課題があった。 特に、本研究で注目する青色の量子ドットは入手が困難であったことから、材料利用率の向上と厚膜化に代わる代替技術を検討した。 本年度は新たに改良型のメニスカスコート法を開発しこれと転写法による膜厚制御と膜の均一化および材料利用率の向上を試みた。その結果、前年度までの1/4-1/6の使用量で同等な膜厚を製膜可能とした。また、ZnO/発光層界面での励起子消光を抑制するため、フェナントロリン系可溶性電子輸送材料を挿入しその上に上記手法を用いて発光層を製膜することで電子注入性の改善と発光位置の制御を行った。 さらに、前年度まで正孔輸送性のポリマーであるPVCzをブレンドしていたが敢えて電気的にも光学的にも不活性で透明なPMMAと置き換え、PVCzを中間層として薄く挿入した結果、高電圧時にPVCzの発光が生じていた課題を解決し量子ドットのみの鮮明な発光が得られた。一方で、絶縁体を用いるため膜厚の制御についても検討を行った。 その結果、電極を除くすべてを塗布プロセスで積層可能となった。そして、赤色の半導体量子ドットでは外部量子効率が0.6%程度から2.1%まで改善すると同時に動作電圧を2Vまで低減することが可能となった。青色の量子ドットを用いた素子においても4V以下で発光し、外部量子効率を0.8%から1.6%にほぼ倍増した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青色発光素子の高効率化や黄色ポリマーへのエネルギー移動による色変換はまだ得られていないが、全塗布型のデバイスの実現と高効率化、低電圧動作を進めることに成功した。
青色のCore/Shell型の量子ドットは開発段階のものが多く、市販品については製造中止となったものも多くある。代替品として当初用いて粉末品は入手ルートがなくなっており、溶液として販売しているところを見つけて製膜条件から見直して作製・評価したことで当初計画よりも進展が遅くなったのは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は、青色発光の量子ドットの高効率化と、青色発光量子ドットから黄色や赤、緑色発光ポリマー(いずれか)へのエネルギー移動による高効率な色変換の実現である。本研究課題を通じて、その兆候や現象を明らかにしながら、デバイス物理の解明の基礎を調べる予定である。
青色のCore/Shell型の量子ドットは開発段階のものが多く、市販品については製造中止となったものも多くある。代替品として当初用いて粉末品は入手ルートがなくなっており、溶液として販売しているところを見つけて製膜条件から見直して作製・評価したことで当初計画よりも進展が遅くなったのは否めない。エネルギー移動による効率向上の可能性を見出すことを本研究としているが、青から黄色への変換にこだわらず、緑から赤(オレンジ)等も含めて検討することで、目指す現象解明にはつながると考えている。 同時に、材料利用率を改善する製膜法を開発したことで、限られた試薬を有効に使って青色発光素子の性能向上も進めて次段階の研究につなげるよう研究を進めて行く予定である。
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