研究課題/領域番号 |
21K04156
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
野見山 輝明 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (60274859)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 光蓄電池 / 太陽電池 / 蓄電池 / 酸化チタン / ポリアニリン / ペロブスカイト太陽電池 / 周波数応答解析 / ゲル電解質 / ヘテロ接合太陽電池 / 導電性高分子 / チタニア多孔体 / ペロブスカイト系太陽電池 / 高速充放電 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の最終目標は「蓄電機能を持つ太陽電池:光蓄電池」の開発である.これは,一枚の薄膜やパネルで光電変換と同時に蓄電し,太陽光エネルギーの濃縮と平準化を行うものである.この「光で蓄電する機能」は,太陽電池と蓄電池の組み合わせで実現できるが,本研究で提案する光蓄電池は「1電極上の電荷移動で光電変換と蓄電を行う電極(光蓄電極)の開発」を狙ったものである.これら2つの機能を材料レベル (マイクロからナノスケール) で統合する技術を開発し,従来の組み合わせよりも本質的な小型化・高効率化を狙っている.
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研究実績の概要 |
太陽光発電層(PVL)を酸化チタン-ポリアニリンの多孔体複合体(TP)からなる蓄電層(STL)上に積層した「蓄電機能を持つ太陽電池:光蓄電池」の開発を目的とし,研究手法として周波数応答解析を用いる.この目的に対して,2021年度より継続して,酸化銅・酸化亜鉛発電層(CZ-PVL)の研究と酸化チタン-ポリアニリン蓄電層(TP-STL)の研究を並列に行っている. PVLについては,CZ-PVLでは十分な光発電を得ることができないと考え,新たにペロブスカイト太陽電池(P-PVL)を研究を進めた.2022年度当初,P-PVL自体の構造の検討を行った.その結果,一般的なペロブスカイト太陽電池で用いられる有機正孔輸送層が蓄電層の電解質溶媒の浸潤や蒸散で劣化することが懸念されるため,絶縁体多孔体層と炭素多孔体層を正孔輸送層としたPSCに取り組むこととし,その成膜の基礎的知見を得た. TP-STLについては,2021年度から継続で,蓄電層の高容量化のためにTP-STLの厚膜(ペレット)化に取り組み,ベースとなる酸化チタン多孔体ペレット表面に熱CVDによる導電FTO膜を形成することでポリアニリン電着に成功し.TP-STLの厚さを従来の100 μmから1 mm厚まで増やすことができた. さらにTP-STLについて,P-PVLとの積層のために,電解質の擬固体(ゲル)化に取り組んた.その結果,非水溶媒系のゲル電解質を浸透させたTP-STLにて充放電を確認した.しかしながら,ゲル電解質を用いたときの蓄電量は,液体電解質の7割程度に減少することが分かった.この原因は,電気化学インピーダンスの周波数応答解析により,ゲル電解質の溶媒として用いたジメチルホルムアミドの分子がポリアニリン電着膜の分子鎖に取り込まれ,緻密なポリアニリン電着膜が緩むことで,充放電時の電荷移動が阻害されるためと分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年(2021)度の酸化チタン・酸化亜鉛積層による発電層(CZ-PVL)の開発からペロブスカイト太陽電池を用いた発電層(P-PVL)への変更に伴い,発電層の研究計画に遅れが生じていた.これに伴い2022年度研究計画を「a2) 炭素系多孔体を用いたペロブスカイト系太陽電池(mpC-PSC) による1平方センチメートル当たり5 mA以上の発電層の実現」,「b2) pellet-TP蓄電層上へのmpC-PSC発電層の積層」,「c2) mpC-PSCとpellet-TP間の電荷移動 の周波数応答解析」に変更して研究を進めた. PVLの開発について,2022年度は,炭素多孔体を用いたペロブスカイト系太陽電池(mpC-PSC)の基礎研究に留まったため,a2の目標を達成できていない. これに対して,酸化チタン-ポリアニリン蓄電層(TP-PVL)の研究は順調に進んでおり,当初の想定通りに1 mm厚のTP-PVLが形成できている.現在,その蓄電特性を評価中である.しかし,PVLの開発遅延により,b2, c2で必須の積層まで至らなかった. この現状を受けて,発電層の研究進捗の遅延により生じたリソースの余裕をTP-PVLの電解質の擬固体(ゲル)化に適用した.その結果,ゲル化による蓄電に成功し,さらにゲル化電解質を用いた際の蓄電メカニズムを電気化学インピーダンスの周波数応答により解析が進んでいる. これらの状況を総合して,「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本課題の研究実施項目として,a) CZ発電層の高効率化:Z膜上へのC膜の電気化学的にエピタキシャル成長,b) pellet-TP蓄電層の高容量化と発電層の電着,c) CZ | pellet-TP積層光蓄電池の光蓄電プロセスの周波数応答解析による最適化の3つを上げていた. これに対し,2023年度の当初計画では,c3) CZ | pellet-TP積層光蓄電池,全系の光蓄電効率の評価,c4) CZ | pellet-TP積層光蓄電池,全系の周波数応答解析による光蓄電効率の向上の3項目を実施する予定であった. これを以下のように変更する.まず,発電層開発の遅れのために,昨年度の達成できなかった目標を新たに「a3) 炭素多孔体を用いたペロブスカイト系太陽電池層にて5 mA/平方cmの出力を得る」として実施する.それに並行してTP-STLとの積層テストを行い「c4) P-VPL(mpC-PSC) | TP-PVL(pellet-TP) 積層光蓄電池,全系の周波数応答解析による光蓄電効率の向上」として,研究の遅れを取り戻す予定である. また,今年(2022)度年の成果より,新たにSTLの擬固体電解質化にて成果が出つつあるため,追加の研究項目として「d1) ゲル電解質を用いた蓄電層の開発と高性能化」として研究に取り組む. このように上記のa3, c4, d1を2023年度に行う予定とする.
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