研究課題/領域番号 |
21K04192
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
玉山 泰宏 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50707312)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | メタマテリアル / 電磁波 / ブリュースター現象 / 広帯域制御 / 群遅延 / 異方性 / 旋光性 / 完全吸収体 / 偏光 |
研究開始時の研究の概要 |
色々な周波数成分を含む電磁波を制御するためには、広い周波数に亘って反射率あるいは透過率が適切に設計された素子が必要である。特に反射型の素子よりも透過型の素子の方が使用する上で便利なことが多い。そこで本研究では、電磁波の無反射現象として知られているブリュースター現象が発生するような単層のメタマテリアル(メタ薄膜)を用いると、単にメタ薄膜を複数層積層させるだけで透過率の周波数依存性が自在に制御できることを、具体的な素子の設計、作製および評価を通じて示す。
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研究実績の概要 |
本研究では、厚さが1メタ原子層のメタマテリアルであるメタ薄膜におけるブリュースター現象を利用することで、電磁波の異方性も含めた広帯域複素透過率制御が実現できることを示す。今年度は、円偏光基底での異方性も含めた広帯域複素透過率制御の実証に向けて、一方の円偏光に対してのみ応答するメタ原子で構成されるメタ薄膜の設計を行った。メタ原子の構造については当初の計画から変更し、理論の実証を重視して、作製は難しいが形状の対称性が良いらせん構造を用いることにした。らせん構造のパラメータを変化させることで、おおよそ一方の円偏光に対してのみ応答すると見なせるメタ原子の構造を見出した。これにより、理想的な状態で円偏光基底での電磁波制御が行えるようになると考えている。 上記に加えて、狭帯域完全吸収特性を示すメタ薄膜の実現にも取り組んだ。ブリュースター現象が生じるようにしつつ、メタ原子の配置方向を変化させることにより、広帯域で反射率0を保ちながら放射損失が変化させられることを見出した。この理論に基づき、メタ原子の構造を変化させず配置のみを変化させることにより、放射損失と非放射損失が等しくなる状況、すなわち、完全吸収条件を実現できるようになることを数値計算および実験により実証した。この結果は、メタ薄膜の積層と各メタ薄膜におけるメタ原子の配置方向の制御によって、複素透過率の絶対値の周波数依存性を任意に制御できるようになることを意味している。また、放射損失の可変制御性を利用することで、損失性物質の高感度センシングにもつながると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円偏光基底での異方性も含めた広帯域複素透過率制御に必要な、一方の円偏光に対してのみ応答するメタ原子の構造設計を行った。当初の計画で予定していた構造から変更したため検討事項が増えることになったが、より理想的な応答を示すメタ原子の構造を見出すことができた。そのため、円偏光基底での複素透過率制御の実証自体についてはまだ取組めていないが、新たに設計したメタ原子を基にして、複素透過率制御の実証が次年度にスムーズに行える状況にあるため、問題となる遅れではないだろうと考えている。 また、直線偏光基底での複素透過率制御に関して、狭帯域完全吸収特性を示すメタ薄膜設計の理論構築と数値計算および実験的な実証を行った。これにより、材料による非放射損失の調整を行わずに、メタ原子の共振周波数と配置を変化させるだけで複素透過率を任意の値に制御できるようになることが見出された。それに加えて、ブリュースター現象が生じる条件を敢えて破ることにより、広帯域に亘り反射率と透過率の比を自在に制御できる可能性があることを理論面での検討から見出し、単一メタ薄膜による広帯域ビームスプリッターの実現に向けて設計を進めつつある。これらは当初の計画には無く、本研究を遂行する過程で発見したものである。そのため、この部分に関しては、当初の予想を超える研究の進展があったと考えている。 以上を総合して、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
円偏光基底での広帯域複素透過率制御のためには、一方の円偏光に対してのみ応答し、かつ、共振周波数が異なる構造を複数種揃えておく必要がある。そのため、今年度に設計した一方の円偏光に対してのみ応答するメタ原子の構造を基にして、共振周波数が異なる構造を複数種設計する。それと並行して、1種のメタ原子で構成されるメタ薄膜をブリュースター現象が生じるように形成したものについて、円偏光に対する電磁応答の数値解析を行い、円偏光基底でのブリュースター現象の発生を確認する。そして、これらの結果をふまえて、広帯域吸収型円偏光子や広帯域偏光回転素子を実現することを通して、円偏光基底での広帯域複素透過率制御の基本的な考え方の実証を行う。 また、当初の計画には無かったが、直線偏光基底での複素透過率制御に関する研究の予想外の進展の中で、分散補償や反射率と透過率の比の制御に関するアイデアを得たので、これらに関する研究にも取り組む。分散補償については、メタ薄膜を積層させた媒質において、各層のメタ薄膜の共振周波数と放射損失をパラメータとして最適化計算を行うことにより、与えられた任意の分散を補償できるパラメータを見出せることを示す。反射率と透過率の比の制御については、ブリュースター現象が生じる条件を敢えて破ることにより、できるだけ広帯域で一定の反射率と透過率の比を実現できるとともに、その比がメタ原子の配置により任意に制御できるようなメタ薄膜の設計を行う。
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