研究課題/領域番号 |
21K04205
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田中 将樹 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60353231)
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研究分担者 |
伊藤 桂一 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20290702)
河村 希典 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (90312694)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ミリ波 / 液晶 / 導電性高分子膜 |
研究開始時の研究の概要 |
安全・安心な社会の実現に向けて、トンネルや橋梁のモニタリング等の社会インフラの安全確保、自動車の自動運転、洪水等の防災などミリ波による電磁波センシング技術の応用が期待されている。そのミリ波センシング装置に欠かせない制御機構は未だに機械的駆動が主流であり、低コスト・省スペース化を阻む要因となっている。本研究の目的は、ミリ波システムの課題である小型・軽量、低消費電力、低コスト、省スペースを解決するために、液晶と導電性高分子膜を組み合わせた新規のミリ波制御素子を創製することである。これまで未知であった導電性高分子膜のミリ波領域における電気的特性を測定し、ミリ波材料としての有用性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、ミリ波システムの課題である小型・軽量、加工性、低消費電力、低コスト、省スペースを解決するために、液晶と導電性高分子膜を組み合わせたミリ波制御素子の新しい製作方法と新規構造を創製することである。電極材料として導電性高分子膜をミリ波に適用するため、導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)膜のミリ波透過特性の測定を試みた。前年度の実験より導電膜の75GHz帯ミリ波透過率は30~50%程度が得られている。今年度はそれ以外の周波数における特性を得るためにKa帯(25~40GHz)およびW帯(86~94GHz)での測定を行った。導電膜の基板材料にはガラス(厚さ1mm)および樹脂(厚さ0.5mm)を使用した。25GHz付近では50~60%程度のミリ波透過率が得られたが、周波数が上がるにつれて透過率は低下し、86GHz以上では30%程度にまで低下していることがわかった。 ミリ波素子構造として提案している積層型セル構造について、液晶を添加していない状態でのミリ波透過特性の測定を試みた。PEDOT/PSSを製膜したガラスおよび樹脂基板を隙間を空けずに積み重ねることで誘電体積層セルを製作し、Ka帯とW帯のミリ波測定系により測定した。積層方向とミリ波電界方向が平行の場合、Ka帯では樹脂基板によるセルで最大80%の透過率を示した。一方、W帯では透過率が低下し、20%を下回った値でほぼ一定値を示した。積層方向とミリ波電界方向が垂直の場合、Ka帯の透過率は30%前後の透過率を示した一方で、W帯では透過率が2~3%程度とほとんど透過しないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
導電性高分子であるPEDOT/PSS膜のミリ波透過特性として数値目標とした透過率50~70%は比較的高抵抗な導電膜では実現できている。製膜条件の最適化を試み、素子への適用として適切な抵抗値を有するPEDOT/PSS膜としては40%程度のミリ波透過率が得られた。目標値よりも低いものの、液晶を駆動する導電膜としては十分と考える。試作した導電膜の分光特性、面抵抗の測定は行っているが、導電膜の膜厚については手持ちの表面粗さ計では測定が困難であったため引き続き測定方法を再検討して膜厚の測定を試みる予定である。 また、ミリ波制御液晶素子については、素子構造として積層構造を採用して導電性高分子を製膜した樹脂基板を積み重ねたセルのミリ波透過特性を測定した。今後、積層構造に液晶を適用した液晶セルを作製してミリ波透過特性の測定を行いつつ、ミリ波制御のためのセル設計も進めていく予定である。当初の計画からはやや遅れているが、ミリ波制御素子の実現に向けて確実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、導電性高分子膜の前処理方法や塗布方法に関する製膜方法の最適条件を引き続き探りながら、試作したPEDOT/PSS膜の膜厚や分光特性、30G~90GHzの広い周波数領域にわたるミリ波透過特性等の基礎特性の測定を今後も進めていく予定である。また、基板材料として、樹脂材料を採用した場合の加工方法について検討を考えている。 さらにミリ波制御素子として、積層型の液晶素子の試作・測定およびフレネル液晶レンズの設計・試作および導電性高分子膜の適用を検討していく予定である。制御素子の構造については当初の研究計画で提案したレンズ構造にこだわらず、ミリ波制御素子として、メタサーフェスのようなフィルタ素子への適用の可能性も模索していく。 これまでの結果における問題点を検証し改善を試み、ミリ波ビーム制御素子の構築の可能性を検討する。そして導電性高分子膜を適用した液晶素子のセンシング等への応用の可能性に向けての検証、総括を行う。
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