研究課題/領域番号 |
21K04224
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22010:土木材料、施工および建設マネジメント関連
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研究機関 | 木更津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
青木 優介 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (70360328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 硝酸銀溶液噴霧法 / 塩化物イオン / マッピング / 紫外線 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,硝酸銀溶液噴霧法の原理および塩化銀の感光性を活用することにより,硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度の濃淡を手早く視覚的に観察することができる「簡易版塩化物イオンマッピング法」の確立を試みる。 2021,2022年度の2年間において,これまでに検討してきた同方法に残されている技術的な課題に取り組む。2023年度には,本方法による塩化物イオンマッピングの精度を電子線マイクロアナライザでの測定結果との比較によって検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の最終目的は,硝酸銀溶液噴霧法の原理をフル活用した簡易型の塩化物イオンマッピング法を確立することである。2021年度~2023年度の研究期間では,本方法の技術的課題を解決することを目標としている。 2023年度は,メイン課題でもある,試験面上の水酸化物イオンを強制的に消失させる方法の解決に注力した。2021年度より,「試験面上の水酸化物イオンを消失させようと酢酸を噴霧すると,硝酸銀溶液中の銀イオンと酢酸イオンが化合して酢酸銀沈殿物が生じ,試験結果が見えにくくなる」という課題があった。これを解決すべく2022年度も検討を重ねたが,解決には至れていなかった。 今回,試験面上の水酸化物イオンを強制的に消失させるため,試験面を高濃度二酸化炭素環境に曝露する方法を採った。密閉容器中に二酸化炭素発生パックを置き,試験面を60分間曝露した。その結果,試験面上のpHは8~9程度まで下がり,水酸化物イオンが消失したことが確かめられた。その後,試験面に高濃度硝酸銀溶液を噴霧したところ塩化銀以外の沈殿物は生成されず,続けて紫外線を照射すると塩化銀沈殿物が黒色化し,他の沈殿物に阻害されずにマッピング結果が得られる可能性が確かめられた。 ただし,塩化銀沈殿物が黒色化する時間にはピークがあり,それを過ぎると退色して無色となることが改めて確認された。また,水酸化物イオンは試験面上において一時的に消失するものの,時間経過とともに試験面下側から試験面上へと徐々に移動し,試験面上が徐々に褐色化することが新たに分かった。すなわち,本方法で見やすい結果を得るには最適なタイミングがあり,試験面上の撮影を継続的に行う必要があると改めて確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すべての課題の解決には至らなかったため,やや遅れていると判断する。しかし,ここまでの研究を通じて,本方法ならびに通常の硝酸銀溶液噴霧法にも通じる基礎的かつ新たな知見を数多く獲得することができた。今後も研究・検討は続けていくが,ここまでの研究で得られた知見はその指針となって活用できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は残された課題の解決を目指しつつ,試験方法としての改善を重ねていきたい。これまでの検討から,「試験面上の水酸化物イオンを事前に強制的に消失させることは必要」,「それを酢酸(や他の強酸液)で実現しようとすると銀化合物が生成されて試験結果の視認を阻害するため,二酸化炭素への曝露などで代用することが有効」,「現れた塩化銀沈殿物は紫外線の照射によって黒色になるが,比較的短い時間で退色し始める。試験面下側から水酸化イオンが移動してくる問題も生じるので,試験面を照射後から分単位で撮影し続けることが必要」などが判明した。これらの課題については具体的な解決方法もイメージできており,今後も検討していきたい。 一方,これまでの実験において,測定対象となるコンクリートの乾燥が進んでいると,試験面上において理想的な化学反応が生じず,結果が現れにくいことを感じている。そういった供試体を対象とする場合もあるかと考えれば,その事前調整方法についても検討しておく必要があると考えられる。 最後に,本方法によって得られる結果の精度に限りがあることも客観的に考えておくべきと考える。そのことも踏まえて,今後の研究の位置づけを再検討・再確認しなければならないと考えている。
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