研究課題
基盤研究(C)
本研究は、ポストテンション型プレストレストコンクリート構造のシース管内のグラウト充填状況を超音波探傷に基づいて、滞水状態・非滞水状態に関わらず高精度に評価することを目的とする。データ処理後の判定について定性的な判断となることを避け、機械学習と深層学習による自動判定を達成することを最終目標とする。弾性波の一つである超音波を用いるが、弾性波で非破壊評価をする場合は、シース管内の水の存在により探傷波形の信号レベルが大幅に減じられる。この問題を寄生的離散ウェーブレット変換によって解決する。また機械学習と深層学習による重層化された判断システムを構築することで高精度に充填レベルを判断する。
2022年度は実橋で供用されていたプレストレストコンクリート(PC)桁を用い、実証実験を行った。対象となるPC桁は2体に切り分けられている。これを供試体A、Bと呼称する。供試体A、Bにはグラウト施工がされていない未充填シース管と、グラウト施工されている充填シース管が存在する。これら試験体に対し超音波フェーズドアレイのフォーカシング探傷を行い、ノイズ除去および特徴抽出を目的とした独自のフィルタリング(以下、寄生フィルタ)を施したうえで、機械学習・深層学習を用いてシース管のグラウト充填、未充填の分類を行った。機械学習に入力するデータは、フェーズドアレイ探傷で得られる時刻-電圧の1次元波形に対して寄生フィルタを施した時刻歴データである。深層学習に入力するデータは寄生フィルタを施した後に、キルヒホフ近似の線形化逆散乱解析によりシース管を画像化したデータである。供試体Aを学習用、供試体Bを妥当性検証として、機械学習、深層学習それぞれの分類器を構築した。なお、寄生フィルタは高周波側データと低周波側データを出力できることから、深層学習には両データから作成した画像を結合した1枚の画像として適用した。機械学習は時刻歴情報に、周波数情報、位相情報を加えたデータ拡張したところ、ランダムフォレストを用いた分類精度は99.6%となった。また深層学習はVGG16を用いて83.5%の精度を記録した。機械学習、深層学習ともに概ね良好な精度を記録し、非破壊評価の自動判断に道筋をつけることが出来た。
2: おおむね順調に進展している
実橋で供用された桁に対して比較的良好な精度でグラウト充填、未充填を自動判定できており、実用性に即した成果をあげつつあるため。
2022年度にシース管状態分類器を構築するために用いた供試体とは別の実橋で用いられた供試体(以下、供試体C)を用いて判定精度の評価を行う。供試体Cはシース管の状態が不明瞭であるため、X線透過試験を行い、この結果と本研究で構築した超音波フェーズドアレイによる手法と比較し、精度評価を行う。
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Bridge Safety, Maintenance, Management, Life-Cycle, Resilience and Sustainability Book Bridge Safety, Maintenance, Management, Life-Cycle, Resilience and Sustainability
巻: 1 ページ: 2247-2254
10.1201/9781003322641-279
Bridge Maintenance, Safety, Management, Life-Cycle Sustainability and Innovations
巻: -
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