研究課題/領域番号 |
21K04241
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
沖中 知雄 近畿大学, 理工学部, 教授 (90298985)
|
研究分担者 |
Maddegedar a.L. 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20426290)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | スーパーシア破壊 / 画像計測 / 超高速ビデオカメラ / PDS-FEM / PDS-FEM / 衝撃破壊試験 / 高次PDS-FEM |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は断層のスーパーシア破壊の発生に与える地盤の不均一性の影響を実験と数値解析を用いて明らかにすると共に,破壊により発生する衝撃波を数値解析により再現することである.実験では衝撃破壊試験を行い,供試体中の初期欠陥から材料中のせん断波の伝播速度を超える速度でき裂を進展させる.き裂の進展状況とき裂周りの応力場を毎秒10,000万枚撮影可能な超高速ビデオカメラで画像計測する.解析として高次基底関数を組み込んだ動的高次PDS-FEM法を適用し,スーパーシア破壊と破壊により発生する衝撃波を再現できる動的数値解析手法の確立を目指す.解析精度は画像計測結果との比較により検討される.
|
研究実績の概要 |
本研究ではスーパーシア破壊を実験と数値解析を用いて検討し,その発生メカニズムや地盤の不均一性が断層のスーパーシア破壊に与える影響を明らかにするとともに,スーパーシア破壊を再現できる数値解析手法を確立することを目的とする. 実験では衝撃破壊試験を行う.高速で飛翔する飛翔体を供試体に衝突させ,供試体内部でき裂を発生させる.超高速ビデオカメラと光弾性手法を組合せてき裂の進展状況と応力分布を1μ秒単位で画像計測する.実験の供試体の作成材料として光弾性感度をもつ透明材料であるエポキシ樹脂とポリカーボネート樹脂を採用した. 2個の供試体の長辺を突き合せて長辺側に圧縮荷重を載荷し,短辺に飛翔体を衝突させることにより,接合部でき裂を進展させた.供試体側面から平行光を照射,透過像を超高速ビデオカメラで撮影する.照射光を偏光させることにより形成された光弾性縞をき裂の進展状況と合わせて画像計測することにより,き裂の進展状況と合わせて供試体中の応力場を画像計測する.計測結果からスーパーシアき裂発生のメカニズムを実験的に検討する.また計測された干渉縞は後述する数値計算手法の精度の検証にも使用する. 数値解析として高次PDS―FEMを用いたき裂進展解析を行う.PDS-FEMは解析対象をボロノイ領域と共役なデネルイ領域に分割し,変位をボロノイ領域で,変位の微分項であるひずみをデルネイ領域で離散化する解析手法である.ボロノイ領域の境界上で変位の不連続性が許容されるため,き裂の進展解析に適している.離散化に高次関数を採用することにより解析精度を向上させた高次PDS-FEM解析に,き裂面を解析するための接触要素を導入することによりき裂進展解析を行う.実験により得られた光弾性干渉縞と解析結果により再現された干渉縞を比較することにより解析精度を検証し,スーパーシア破壊を再現できる解析手法を確立することを目標とする.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験では超高速ビデオカメラの撮影タイミングと飛翔体の衝突タイミングを同期するための同期装置の製作を行った.申請者の使用するカメラは撮影枚数が100枚に留まり,時間分解能1μ秒/枚で撮影した場合は記録可能時間は100μ秒に限定される.限られた撮影時間内でき裂の進展を画像計測するためには飛翔体の衝突タイミングと撮影タイミングを同期させる同期装置が必要である.飛翔体の飛翔経路上に予めレーザーを照射し,飛翔体によってレーザーが遮られたタイミングでカメラを起動させる同期装置を作成した.開発された同期装置を使用することにより,進展するき裂の画像計測に成功した.計測された画像から読み取ったき裂の進展速度は,供試体作成材料のせん断波の伝播速度を上回り,スーパーシア破壊を発生と破壊の画像計測に成功していることが確認された.同時に干渉縞として可視化された供試体内部の応力分布の画像計測にも成功した.記録された干渉縞の形状からせん断波の伝播速度を超えて進展するき裂先端部でマッハコーンが形成されていることが確認できた. 数値解析では,高次PDS―FEMと接触要素を組み合わせた解析プログラムを作成し,衝撃載荷下でのき裂進展の2次元数値解析を実施した.解析では矩形モデルをメッシュ分割し,モデル中央部に長辺に平行に強度の弱い領域を設けることにより供試体接合部をモデル化した.端部に境界条件として強制変位を与えて増分計算を行い,中央部の強度の弱い領域内でき裂を進展させた.解析では載荷速度,変位の大きさ,接合部の強度,載荷条件を与える領域の広さを変えて解析を行い,発生したき裂の進展速度を検討した.解析の結果,載荷読度と接合部の強度がき裂進展速度に大きな影響を与え,変位の大きさ,載荷領域は大きな影響を与えないことが分かった. 以上の結果から,本年度の研究は実験,数値解析共に順調に推移していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成5年度の研究計画を実験と数値解析に分けて記述する. 実験では平成4年度に引き続き,スーパーシア破壊の画像計測を行う.供試体に載荷する上載荷重,供試体接合面の摩擦係数と固着力,飛翔体の衝突速度等を変化させて実験を繰り返す.超高速ビデオカメラを用いたき裂の進展状況の画像計測によりき裂の進展速度を求め,上記の実験条件がき裂の進展速度に与える影響とスーパーシア破壊の発生条件について検討を行う.また光弾性縞として可視化された応力分布の画像計測を通して,き裂の進展に伴って供試体中に解放されるエネルギーについての検討を行う. 数値解析では,作成された解析プログラムの改善を行う.平成4年度の解析では高次PDS―FEMと接触要素を組み合わせてき裂の進展解析を実施したが,この解析では接触要素の摩擦面での摩擦力は考慮されなかった.これは平成4年度の解析は解析モデルの妥当性の検討を主たる目的としていたためである.しかしながらき裂進展にはき裂面の摩擦が大きな影響を与えることは明らかであり,き裂の進展を精度よく解析できるモデルの構築に摩擦力の導入が不可避である.そのため来年度の解析ではまず接触面の摩擦力の導入を目標とする.導入後,接触面の摩擦係数がき裂進展挙動に与える影響について検討を加える.さらに解析により再現された応力分布と実験により画像計測された供試体内部の応力分布の比較により数値解析手法の精度の検証を行う.検証の結果から解析精度の向上を目指す.
|