研究課題/領域番号 |
21K04246
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
|
研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
山浦 真一 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50323100)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | バルクハウゼンノイズ / 非破壊検査 / 高力ボルト / 鋼構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、橋梁等に使用する高力ボルトの締付状態を磁気バルクハウゼンノイズを用いて評価し、被災による過大な荷重・高温や経年劣化による鋼構造高力ボルト継手部の締結力低下を簡便迅速に判断する非破壊検査手法の確立を目指す。そのため、バルクハウゼンノイズ発生機構の解明により新しい測定・評価パラメータを創出し、各種材料欠陥の分布状態や応力状態を信号的に分離し、各信号成分、特に応力成分を高精度に定量評価するバルクハウゼンノイズ非破壊磁気センシング技術の確立を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では、橋梁等に使用する高力ボルトの締付状態を磁気バルクハウゼンノイズを用いて評価し、被災による過大な荷重・高温や経年劣化による鋼構造高力ボルト継手部の締結力低下を簡便迅速に判断する非破壊検査手法の確立を目指す。磁性材料が磁化する際の磁壁移動に伴って発生するバルクハウゼンノイズ信号が応力に敏感であることに着目し、ボルト部(およびその近接部)の高応力分布領域からのバルクハウゼンノイズ信号を検出し、信号中に含まれる周波数成分から応力信号成分および各種材料欠陥・材料組織由来の信号成分を分離してそれぞれの分布状況を高精度に推定することで、簡便迅速かつ非破壊・低コストな高力ボルトの緩み評価技術の確立を目的としている。 2023年度は、高力ボルトを締めた状態でのバルクハウゼンノイズの取得を行うため、まずフェライトコアを用いて磁気センサを製作した。高力ボルトの締め付け力(軸力)の測定には油圧式軸力計を用い、M16-F10T高力ボルトを油圧式軸力計で0~100 kNまで締めながら、同時にボルト頭からバルクハウゼンノイズを取得し、両者の関係性を調べた。その結果、全体的な傾向としては、ボルト軸力を増加させるとノイズ波形から計算した実効値電圧Vrmsも増加する傾向にあった。さらに得られたノイズ波形についてFFT解析を行い、軸力とFFTスペクトルの比較を行ったところ、特定の周波数領域で軸力の増加と共に高周波数側へ、あるいは低周波数側へ移動するピークが見られた。これらのピークの発生要因は、締め付け応力(軸力)による材料組織内の変化、例えば応力による転位の増殖や磁壁移動の阻害、応力と磁壁の相互作用などいくつかの要因が考えられる。これらのピークの発生と移動要因の理解が今後求められると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、高力ボルトの軸力がバルクハウゼンノイズに及ぼす影響を調べるため、まずフェライトコアを用いて磁気センサを製作した。磁気センサは小型フェライトコアに銅エナメル線を巻いたノイズ検知部と、U字型フェライトコアに銅エナメル線を巻いた励磁部から構成されており、それを高力ボルトのボルト頭に当てて励磁部でボルト材を磁化させ、磁壁の移動によって発生するバルクハウゼンノイズをノイズ検知部で取得する。 高力ボルトの軸力の測定には油圧式軸力計を用い、M16-F10T高力ボルトを油圧を用いて0~100 kNまで締めながら、同時にバルクハウゼンノイズを取得し、軸力とバルクハウゼンノイズの間の関係性を調べた。その結果、ばらつきはあるものの、全体的な傾向としてはボルト軸力(引張応力)を増加させるとノイズ波形から計算した実効値電圧Vrmsも増加する傾向が見られた。 さらに得られたバルクハウゼンノイズ波形について高速フーリエ変換(FFT)解析を行い、軸力とFFTスペクトルの比較を行ったところ、特に10 kHz~30 kHzの周波数領域で軸力の増加と共に、FFTスペクトル中に高周波数側へ移動するピークと低周波数側へ移動するピークが見られた。従って、特定の周波数ピークの移動挙動を調べることによって、高力ボルトに負荷されている応力を特定することが分かった。これは予想していた期待通りの成果であり、現在までの進捗状況はおおむね順調であると言える。 今後、さらにこれらのピークの移動要因を検討することによって、バルクハウゼンノイズに関して材料中の応力に敏感な要素を決定することができると思われる。現時点ではこの理由は恐らく、軸力による材料組織内の変化、例えば応力による転位の増殖や磁壁移動の阻害、応力と磁壁の相互作用などいくつかの要因が考えられる。これらのピークの発生と移動要因の理解が今後求められると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに高精度な実験を行い、高力ボルトの締め付け応力(軸力)とバルクハウゼンノイズ信号の間の関係をより詳細に検討する。計測したバルクハウゼンノイズ信号から得られた高速フーリエ変換(FFT)スペクトルの中で、応力負荷による特定の周波数ピークの移動から、材料からのバルクハウゼンノイズの発生要因を探る。バルクハウゼンノイズ発生サイト(析出物、材料欠陥等)の分布状況および付加される応力状態のバルクハウゼンノイズ発生に対する貢献度を考察・定式化し、微細組織とボルト締め付け力のそれぞれに由来するバルクハウゼンノイズ波形成分を特定・分離し、ボルト締め付け力の定量評価を試みる。そのため、センサ部にはさらなる工夫を要すると思われ、フェライトコアのみならずホール効果素子等の高精度磁気センサも検討する。 さらに、高力ボルト継手部模擬試験体(高力ボルト+H形鋼+スプライスプレート)を製作し、高力ボルトに対して火災を想定した加熱を行うことで、熱処理によるボルト材自体の微細組織変化と、同じく加熱による軸力の低下を、バルクハウゼンノイズ波形およびFFTスペクトル上で分離する手法を検討する。最終的にはバルクハウゼンノイズ信号を用いた鋼構造ボルト継手部のボルト締付力の低下を高精度で測定・評価できる磁気バルクハウゼンノイズ高力ボルト非破壊検査システムの構築を目指す。
|