研究課題/領域番号 |
21K04253
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
森河 由紀弘 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20710239)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 液状化対策 / 格子状地盤改良 / 浮き型格子状地盤改良 / 地中連続壁 / 過剰間隙水圧消散工法 / 排水ドレーン / 既設構造物 / 戸建て住宅 / 排水工法 / 複合型改良体 / ハイブリット |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は,液状化に伴う既設住宅の沈下被害および傾斜被害の両方を経済的に抑制可能な液状化対策方法の開発として,一般的な地盤改良工法を想定した不透水性改良体(安価)の一部に排水性改良体を組み合わせた複合型改良体,およびそれを浮き型格子状地盤改良に適用した機能性ハイブリッド型液状化対策を考案した.本研究では,機能性ハイブリッド型液状化対策について,砂や透明土を用いた振動台実験や水~土骨格連成有限変形解析を行い,複合型改良体の排水効果や有効範囲,排水効果が地盤内変位に与える影響などを可視化し,現象を正しく理解した上で設計手法を開発する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,住宅などの既設小規模構造物にも適用可能な液状化対策の開発である.令和4年度においては,過剰間隙水圧の消散効果以外に期待できる排水ドレーンの効果,および排水性改良体を用いた浮き型格子状地盤改良による液状化対策効果について,以下の検討を行った. 【検討①】排水ドレーンの効果(液状化強度などに及ぼす影響):土層の片端に排水ドレーンを設置し,平面ひずみ条件を満足した二次元の振動台実験を行い,新たに制作した小型ベーン試験機を用いて液状化中,および液状化後における地盤のせん断強さに関する検討を行った.検討の結果,排水性ドレーンからの距離が深度に対して半分程度以内の位置では液状化中においても地盤のせん断強さがある程度は保持されていることや(低流動化),排水性ドレーンからの距離が深度に対して同程度以内の位置では液状化後に再堆積した地盤のせん断強さが未改良地盤に比べて極めて高くなることが明らかとなった(液状化強度の増加).以上を踏まえて,排水ドレーンを設置した模型地盤で複数回の加振を行った結果,加振回数に応じて排水ドレーンからの距離が近いほど相対密度の効果以上に地盤の液状化強度が高くなる傾向が得られた. 【検討②】排水性浮き型格子状地盤改良の液状化対策効果:排水性改良体を用いた浮き型格子状地盤改良を土層内に設置し,複数回の前震を与えた後に偏心した模型構造物を用いて平面ひずみ条件を満足した二次元の振動台実験を行った.検討の結果,排水性浮き型格子状地盤改良は,複数回の前震を経験することにより模型地盤の相対密度による効果以上に構造物の液状化被害を大きく抑制できることが明らかとなった.本検討により,排水性浮き型格子状地盤改良は加振経験の度に地盤の液状化強度が大きく増大するため,不透水性浮き型格子状地盤改良に比べて本震のみならず,再液状化に対しても期待できることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は本研究が提案してきた排水ドレーンによる低流動化領域の形成効果について,ドレーンからの距離と地盤のせん断強さとの関係,そして再液状化に対する効果などを明らかにすることを目標に掲げ,模型試験用の小型ベーン試験機を新たに制作して液状化中,および液状化後における地盤のせん断強さを直接計測することを試みた. 検討の結果,排水性ドレーンからの距離が深度に対して半分程度以内の位置においては,液状化中でもある程度の地盤強度が保持されていることが明らかとなり,本研究が提案してきた排水ドレーンによる低流動化領域の形成効果について初めて地盤のせん断強さから直接示すことに成功した.さらに,排水性ドレーンからの距離が深度に対して同程度の距離以内の位置においては,液状化後(再堆積地盤)のせん断強さは極めて高くなることも本検討によって初めて明らかとなった.そして,本検討結果を基に模型地盤に対して複数回の加振を行った結果,地盤の液状化強度は加振回数に応じて排水ドレーンからの距離が近いほど相対密度の効果以上に高くなることも本検討によって初めて明らかとなった.本研究成果は今日までに明らかとなっている排水ドレーンの過剰間隙水圧の抑制効果や消散効果以外の見落としていた効果として重要な結果であり,再液状化対策に関しても期待できる結果となった. また,以上の結果を踏まえ,排水性浮き型格子状地盤改良を設置した地盤に複数回の前震を与えた後,模型構造物を設置して液状化被害に関する検討を行ったところ,前震の経験回数に応じて液状化被害が大きく減少することも明らかとなった.本研究結果は,排水ドレーンを用いた液状化対策は複数回の地震動に対しても非常に効果的であることを示し,社会的にも非常に重要で有意義な結果であると言える.以上より,複数の新たな事実が明らかとなった令和4年度における進捗状況は概ね順調だったと言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究はこれまでに,古くから期待されてきた過剰間隙水圧の消散効果以外の排水ドレーンに期待できる液状化対策としての効果について,液状化中の地盤変位が抑制される低流動化領域の形成効果や,排水ドレーンが設置されている地盤が複数回の地震動を経験することで液状化強度が大幅に向上する効果などを明らかにした.また,構造物の沈下被害,および傾斜被害の両方を抑制するためには,従来からある不透水性改良体を用いた浮き型格子状地盤改良のみでは不十分であり,浮き型格子状地盤改良に過剰間隙水圧消散工法を併用することが効果的であることも明らかにした.そのため,本研究では不透水性改良体に排水性改良体を組み合わせた複合型改良体を新たに考案することで,排水性能を持つ浮き型格子状地盤改良は経済的に構造物の液状化被害を抑制することが期待できる上に,その効果は排水性改良体の比率に伴い向上することも明らかにした.しかし,排水ドレーンが設置されている地盤は複数回の加振により地盤の液状化強度は増加するものの,複合型改良体による浮き型格子状地盤改良が設置された地盤が複数回の加振を受けた場合における液状化対策効果については検討が行われておらず,複数回の加振を想定した場合の最適な改良仕様(改良間隔,改良深度,不透水性改良体と排水性改良体の比率)についても検討を行う必要がある.そのため,今年度はまず地盤変位の可視化に加え,異なる深度や位置における地盤のせん断強さを計測し,地盤変異と地盤強度の2方向から複数回の加振も想定した排水ドレーンの有効範囲を明らかにする.さらに,複合型改良体を用いた浮き型格子状地盤改良についても,複数回の加振による二次元模型実験や非線形有限要素解析による再現解析を行うことで,最適な改良仕様と液状化被害の抑制効果,そのメカニズムの解明について詳細な検討を行い,実用レベルの設計手法についても開発を試みる.
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