研究課題
基盤研究(C)
活発化している活火山の噴煙は,広域的に輸送され国内の大気環境へ大きく影響していることが懸念されるが,これまで火山由来の影響は過小評価されてきた。火山ガスに多量に含まれる二酸化硫黄は中部日本の高所にまで輸送され,硫酸塩生成に大きく影響する。また,広域的に水銀を輸送することにもなるが,火山由来の寄与については不明である。本研究では,火山活動による二酸化硫黄排出状況を把握しながら,二酸化硫黄の酸化能力を評価し,噴煙の鉛直・空間的分布を理解すると共に,微量気体成分,エアロゾル粒子,雲水の成分測定行い,硫酸エアロゾル生成量や水銀の動態を解明し,火山由来成分の広域輸送と大気環境への影響を評価する。
活発化している日本国内の火山活動による中部日本の大気環境への影響を評価するため、立山、乗鞍岳や小矢部市の山間部において大気観測を行った。山岳での観測と並行し、ヘリコプターを利用した上空大気の観測を行った。霧水中の化学成分は以前と比べ低濃度となる傾向がみられたが、暖候期に桜島由来と考えられる高濃度の二酸化硫黄やエアロゾル粒子が観測された。上空の過酸化水素は暖候期では二酸化硫黄より高濃度であった。融雪期の立山における表層雪の化学成分を分析した結果、未ろ過で冷蔵保存中に硫酸が多量に生成され、火山由来の硫黄が硫酸へと酸化されたためと考えられた。また、粒子状水銀も濃縮されていることが明らかとなった。
本研究から、中国の大気汚染が大幅に改善されている現在では、国内の硫酸エアロゾルの重要な起源として火山ガスによる影響が無視できない可能性が示唆された。また、ヘリコプターが上空大気観測に非常に有効利用できることが明らかとなった。ヘリコプター観測から暖候期の中部日本上空では過酸化水素が十分に存在し、二酸化硫黄を酸化させる能力が高いことが示された。ただし、火山ガスが直接輸送される際には酸化剤が不足する可能性がある。また、融雪期の立山では表層雪中に火山由来の非水溶性の硫黄や粒子状水銀が濃縮していることが明らかとなった。
すべて 2024 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Aerosol and Air Quality Research
巻: 24 号: 2 ページ: 230232-230232
10.4209/aaqr.230232
SOLA
巻: 20 号: 0 ページ: 39-46
10.2151/sola.2024-006
巻: 18 号: 0 ページ: 104-109
10.2151/sola.2022-017
Water, Air, & Soil Pollution
巻: 233 号: 8 ページ: 1-5
10.1007/s11270-022-05778-4
巻: 17 号: 0 ページ: 109-112
10.2151/sola.2021-017
130008041903