研究課題/領域番号 |
21K04329
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
笈木 宏和 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (00290825)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ゴム分解微生物 / アミノ酸配列解析 / リアクター / 変異体作製 / ゴム分解菌 / 遺伝子解析 / 変異体作成 |
研究開始時の研究の概要 |
自動車用タイヤには大量の硫黄が含まれており、燃焼処理により深刻な大気汚染を引き起こすケースも多い。 我々の研究室が有する、タイヤの主原料であるスチレン-ブタジエンゴムを分解する微生物は、分解に関与する遺伝子が特定できていない。本研究は、変異体作成法などの手法を用いることによりゴム分解に関する遺伝子の特定を行い、必要に応じて組換体を作成し、高効率でゴムを分解できるリアクターシステムを作成する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ゴム分解微生物(Enterobacter MOE-1株、以下MOE-1株と記す)のゴム分解酵素をコードする遺伝子部位の特定と改良、およびそれを基にした低温でかつ安全に利用することのできる合成ゴム分解バイオリアクターの作製を行うための検討を行う。 今年度も昨年度に引き続き、紫外線照射によるゴム分解能力喪失変異体の作製および変異能の欠損についての検索を継続していたが、前年同様、ゴム分解能欠損株を発見するには至っていない。通常、紫外線処理菌体は1万個当たり1個の変異体が得られることを考えると、すでに1万個超の紫外線処理により変異体が得られない同菌体は、紫外線に対する耐性が強いか、変異の起こりにくい菌体であることが考えられる。そのため、以後同法により遺伝子解析を行うことは難しいと考える。 一方、昨年度より並行して実施していた、ゴムを分解する酵素のアミノ酸配列による遺伝子部位同定については、硫安沈殿とイオン交換クロマトグラフィーの操作により目的酵素の精製を行うことに成功した。現時点においては酵素の回収率が低く、構造解析を行うには量が足りなかったため、菌体の培養量をさらに増やし、酵素の回収率を上げる必要がある。以上の理由より、今後は後述の酵素のアミノ酸同定試験を中心に実施していく。酵素精製後、アミノ酸配列解析により目的の塩基配列を導き出していく予定である。 リアクター作製に関しては、市販のステンレス容器を加工し、ゴムの分解をバッチ式で行う大型リアクターを構築し、酸素濃度や培地組成、攪拌翼の形状などの条件を変化させるなどしたところ、同装置で昨年度と同様の高い分解率を得ることができた。これより、最適な分解条件を導き出すことができたと考える。また、前年度同様各種培養条件でデータをもとに、SVMによるSBR分解率予測モデルの構築を行ったところ、前年度同様0.7程度の値が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度までのコロナウイルス蔓延による非常事態宣言に合わせた研究活動制限は解消したが、それ以前の実験遅延の影響があり、実験開始時の計画から大きく遅れている。 加えて、研究実績の概要に記した通り、UV照射による変異体の作製では、総計で1万個超の菌体に対して紫外線処理を行ったものの変異体が得られず、このことから同菌は紫外線に対する耐性が強いか、変異の起こりにくい菌体であることが考えられる。以上の理由から、実験の軌道修正を行い、昨年度より並行して実施していた、ゴムを分解する酵素の精製に実験を切り替え、この酵素のアミノ酸解析結果をもとにゴム分解酵素の遺伝子配列を決定することとした。そのため、上記試験は本来の実験スケジュールより軌道修正して行うこととなる。 ゴム分解をバッチ式で行うリアクターの作製に関しては、前年度より本来の計画より前倒しで実施しており、こちらは(実施できる範囲内では)計画通りの進行となった。市販のステンレス容器を加工し、ゴムの分解をバッチ式で行う大型リアクターの構築を行い、各種条件の検討を行ったところ、同装置で昨年度と同様の高い分解率を得ることができた。今後は、変異体をもとに作製された組み換え大腸菌が完成次第、すぐに実験に取り掛かることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記した通り、硫安沈殿とイオン交換クロマトグラフィーの操作によりゴムを分解する酵素の精製を行うことに成功した。ただし、アミノ酸配列による遺伝子部位同定については、現時点においては目的酵素の精製酵素の回収率が低く、構造解析を行うことができなかった。そのため、今後は菌体の培養量をさらに増やして、酵素の回収率の向上を試みる。前年度は1Lの培養液より酵素の精製を試みていたが、より大容量の培養を行い、精製を行う。さらに、イオン交換カラムなどの大型化を行い、回収率の向上を目指す。 酵素のアミノ酸配列解析は島津製作所が実施しているアミノ酸配列解析サービスを利用することにより実験の迅速化を図りたい。 アミノ酸配列が解析できた場合、同配列をもとにPCR用のプライマーを作成し、酵素配列のコードされた遺伝子部位の増幅を行い、その塩基配列の特定を目標とする。余裕があれば、同遺伝子部位を制限酵素で切断し、大腸菌の組み替え体を作成する。
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