研究課題/領域番号 |
21K04344
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
寺西 浩司 名城大学, 理工学部, 教授 (30340293)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 3Dプリンター / モルタル / セメント系材料 / 繊維 / レオロジー / チクソトロピー / 静的降伏応力 / 回転粘度計 / 短繊維 / デジタルファブリケーション / 情報化施工 |
研究開始時の研究の概要 |
押出し方式の3Dプリンティングを建築工事に適用しようとする場合、プリンティング材料には、輸送管内をノズルまで圧送する段階で「押出し性」が要求される一方で、ノズルから吐出されて積層される段階で「自立性」が要求される。これら2つの要求性能はトレードオフの関係にあり、両方の性能を十分に両立できるような方法は現時点では見出されていない。そこで、本研究では、押出し性と自立性を両立可能なセメント系材料の開発やプリンティング方法の確立に取り組む。また、3Dプリンティングにおける生産上の各種要因が押出し性および自立性に及ぼす影響を調べるとともに、これらの性能を評価する簡易試験方法を提案するための検討も行う。
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研究実績の概要 |
(1)モルタルのチクソトロピー性を向上させる方法の検討: 建設3Dプリンティングに用いるチクソトロピー性を高めたモルタルの開発を目的として、変性させたダイユータンガムをモルタルに添加する方法について検討した。その結果、仕込み比の低い変性ダイユータンガムを添加すると、通常のダイユータンガムに比べてモルタルのチクソトロピー性がやや向上するとの結果を得た。また、このほかに、ダイユータンガムとポリオレフィン繊維を組み合わせて混入すると、モルタルにチクソトロピー性をより効果的に付与できることを明らかにした。 (2)3Dプリンティング用モルタルの押出し試験および自立性評価試験: 実際の3Dプリンティングに供するためのモルタルを試作し、押出し試験および自立性評価試験を行った。その結果、モルタルにポリオレフィン繊維を混入してチクソトロピー性を付与することで、3Dプリンティングに要求される押出し性および自立性を確保できるという見通しを得た。 (3)3Dプリントされたモルタル積層体の層間付着強度および耐久性に対する積層条件の影響の検討: 建設用3Dプリンターを用いて積層試験体を作製し、積層幅および「1層当たりの積層高さ」が層間の付着強度および耐久性に及ぼす影響を検討した。その結果、①層間付着強度は、積層幅がノズル内径より小さい場合に、一体打ちの場合の引張強度と同等以上となる、②積層幅が大きい場合に層間の物質移動抵抗性が低くなる、などの知見を得た。 (4)3Dプリントされたモルタル積層体の層間付着強度向上に関する検討: 層間付着強度を向上させる方法について検討し、層間に溝を形成すると、その形成条件によっては層間付着強度が向上する可能性があることを明らかにした。また、EVA接着剤を層間に塗布することにより層間付着強度の向上が期待できるなどの知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「[課題②]モルタルのチクソトロピー性を高める材料・調合の検討」における、本年度に実施予定であった課題の検討を終えた。すなわち、昨年度の研究で高いチクソトロピー性をモルタルに付与できることを確認したダイユータンガムに関して、本年度は、高分子材料メーカーの協力を得て高分子の組成を変性させたダイユータンガムを試用し、より効果的にチクソトロピー性を付与できないかを検討した。そして、このことに関して基礎的な知見を得た。また、このほかに、ダイユータンガムとポリオレフィン繊維を同時に混入する方法についても検討し、良好な結果を得た。 さらに、「[課題④]押出し性および自立性に対する生産上の各種要因の影響の検討」につなげるための検討として、ポリオレフィン繊維を混入してチクソトロピー性を高めたモルタルを試料とし、実機ポンプによる圧送試験および押出し性評価試験を実施した。そして、この種のモルタルにより、3Dプリンティングに要求される押出し性および自立性を確保可能という見通しを得ることができた。ただし、ポンプの種類によってはモルタルが圧送中に分離して閉塞する可能性があることがわかったため、この点に関する詳細な検討を次年度に実施することとする。 なお、当初の計画では、本年度中に、モルタル配送・積層試験装置(建設用3Dプリンターの実験機)を入手し、「[課題③]押出し性と自立性を両立できるプリンティング方法の検討」および[課題④]の検討にも着手する予定であったが、装置の製作が遅れて本年度中に入手できなかったため、これらについても次年度の検討課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(本研究の最終年度)は、まず、「[課題②]モルタルのチクソトロピー性を高める材料・調合の検討」の延長として、次の2つの課題に取り組む。そして、建設用3Dプリンターの実験機を入手し、開発したモルタルの実際の3Dプリンティングにおける押出し性および自立性を検証する。 ①圧送性(低い管内圧力損失で圧送できるという性能)、閉塞抵抗性(材料分離抵抗性)および自立性の3つの性能を兼ね備えた3Dプリンティングのためのモルタルの調合・材料設計法の検討、およびこれらのことを踏まえたより高性能なプリンティング用モルタルの開発 ②プリントの極初期にはチクソトロピー性により自立性を確保し、その後は水和促進により自立性を確保するようなプリンティング用モルタルの開発 また、本研究課題の申請時に掲げた「[課題④]押出し性および自立性に対する生産上の各種要因の影響の検討」に関して、プリンティング用モルタルのオープンタイム、ギャップタイム、輸送管径などの生産上の様々な要因が押出し性および自立性に及ぼす影響について検討する。 さらに、「[課題③]押出し性と自立性を両立できるプリンティング方法の検討」に関して、加振配送方式(積層段階でモルタル層が自立できるようなコンシステンシーの高いプリンティング用モルタルを、輸送管(すなわち、圧送中のプリンティング用モルタル)を加振し、配送段階で一時的に流動化させて圧送する方式)などの実現可能性についても必要に応じて検討を試みる。 そして、最終的に、本研究の成果を取りまとめて、3Dプリンティング用モルタルおよび3Dプリンティング方法に関する資料を作成する。
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