研究課題/領域番号 |
21K04350
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
中島 史郎 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (00344010)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 直交集成板 / 温湿度変動 / 養生 / 変形挙動 / 損傷 / 力学的性状 / 構造性能 / 定量評価 / 変形・損傷 / 有限要素解析 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国と気候風土が異なるヨーロッパを起源とする直交集成板を、高温多湿な夏と低温乾燥する冬を有する我が国の気候風土下において用いたときに生じる変形や損傷が、建物の構造性能に対してどの程度の影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的として、①国内に既に建っているCLTパネル工法による建物について建物を構成する直交集成板の状態を調査するとともに直交集成板に作用する温湿度を計測し、②温湿度が変動する環境下に置かれた直交集成板の変形や強度変化を実験と解析によって明らかにし、③温湿度変動によって直交集成板に生じる変形や強度変化が建物各部の構造性能に及ぼす影響を構造解析によって明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、(1)直交集成板パネル工法による実建物について直交集成板に作用する温湿度変動を実測して類型化すること、(2)類型化した温湿度変動を実験室で再現し、温湿度変動によって生じる直交集成板の変形や損傷に関する定量的な知見を得ること、(3)直交集成板に生じる変形や損傷が直交集成板の力学的な性状に及ぼす影響に関する知見を実験により得ること、(4)木材の膨潤収縮理論を用いて温湿度変動下における直交集成板の変形挙動を解明すること、(5)変形や損傷の程度が直交集成板の力学的な性状に及ぼす影響と建物の構造性能に及ぼす影響について解析を行って明らかにすることの5項目より構成される。 (1)については、標準地域の温湿度変動を実測値に基づき類型化した。また、温暖地域と寒冷地域については既往の測定データに基づいて類型化を行った。(2)については、(1)において類型化した温湿度環境下にて直交集成板を一定期間養生し、養生後の変形(材の割れと反り、接着剥離など)を測定・記録し、分類した。さらに、(3)について、養生をした試験体と養生をしていない試験体について、面外曲げ試験と面内せん断試験を実施し、養生による変形(材の割れと反り、接着剥離など)が直交集成板の強度と剛性に及ぼす影響に関する知見を得た。 一連の研究により、建物の屋内外側の環境を再現した乾湿繰り返し養生により、直交集成板材面に所定量の割れが生じ、材の反りや反りに伴う接着剥離が生じるという知見を得ている。また、直交集成板を屋外で使用した場合を再現した養生を行った場合、その程度が大きくなるという知見を得ている。さらに、上記の変形等により直交集成板の面外曲げと面内のせん断に掛かる強度と剛性が最大で約80%に低減するという知見を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はコロナの影響により当初予定していた実験(調査)のうち遠方での実測を要する温暖地域と寒冷地域の温湿度履歴の測定が行えなかった。また、研究の全体的なスケジュールを考慮し、温暖地域と寒冷地域の温湿度履歴については既往の測定データの分析をもとに類型化を行うこととした。実測データと既往の測定データをもとに、標準、温暖、寒冷の3地域について、温湿度履歴の類型化を行っている。 また、類型化した温湿度履歴を用いて、直交集成板の試験体を養生し、各温湿度履歴が直交集成板に対してどの程度の変形を与えるかについての知見を得つつある。さらに、温湿度履歴を受けることによって直交集成板に生じた変形がその強度や剛性に与える影響に関する知見についても得つつある。 研究全体としては、2021年度に実施できなかった温湿度履歴の測定に関する部分を2022年度に補い、当初2022年度に実施を予定していた研究を進めている。研究項目のうち、「(2)類型化した温湿度変動を実験室で再現し、温湿度変動によって生じる直交集成板の変形や損傷に関する定量的な知見を得ること」と「(3)直交集成板に生じる変形や損傷が直交集成板の力学的な性状に及ぼす影響に関する知見を実験により得ること」は、やや当初計画よりも遅れているが、当初の計画通り2023年度にも継続して行い、完了させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き、直交集成板試験体を所定の温湿度変動下にて養生し、養生後の試験体の変形状態を記録することと、養生によって生じる変形等が直交集成板の力学的な性状に及ぼす影響に関する知見を実験により得る。 また、上記の実験と平行して、木材の膨潤収縮理論を用いて温湿度変動下における直交集成板の変形挙動を求める方法について検討(研究項目(4))し、さらに、直交集成板に生じる変形や損傷の程度が直交集成板の力学的な性状に及ぼす影響を解析モデルを用いて推定する方法、並びに、直交集成板の力学的な性状の変化が建物の構造性能に及ぼす影響を構造解析により求める方法について検討(研究項目(5))する。 さらに、実験と解析を主体とする3年間の研究成果を取りまとめる。
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